女性技術者は求めています! いち早い解決策の実行を!!・・・女性技術者会議

日建協では、誰もが働きやすい建設産業を実現するためには、女性の視点を取り入れていくことが重要と考え、2009年度より毎年女性技術者会議を開催しています。
2021年度は「女性技術者が作業所で働き続けるためには何が必要か」をテーマに開催し、出産・育児を経て復職した方や、作業所で働き続けている方をパネラーとしてむかえ、経験紹介や参加者と意見交換を行いました。また、作業所で働き続けるための課題はなにか、どうしたら改善できるのかについて議論しました。


パネラーの経験を聞いてみたい


社員や職人とのコミュニケーションに悩みながらも、現場に没頭していたが、結婚を機にワーク・ライフ・バランスについて考えるようになった。第一子の育休復帰後は、時短勤務とワンオペ育児の壁にぶつかった。第二子の育休復帰後は、毎日忙しいが楽しいと思えるようになった。現在は、第三子も生まれ、自分ひとりでは考えず、家族というチーム、現場というチームで取り組むことを考えるようになった


工事主任として現場全体をまとめる職務を担当した。女性2名の部下もでき、年齢の離れた後輩育成の難しさを感じた。施主との協議等の職務も経験した。現在は、作業所長として、職員や協力会社作業員の働き方について考える機会が多くなった。子育て世代の勤務時間や育児について相談されることも多く、業界全体で改革が必要だと考えている。


女性だからと思われず、一人の現場職員として接してもらえるようになんでもした。過酷な現場環境と仕事量にくじけそうになりながらもやり遂げた。その後、現場職員と結婚。現在は、主任として、現場調整と上司・部下の調整に苦戦している。何度も辞めようと考えたが、仕事で得られる達成感は大きい


2つの現場を経験した後、出向した。自社以外を見られた点で良い刺激だった。社外の人脈も得られた。第一子出産後2か月で現場復帰したが、仕事に焦り過ぎて体調を崩し入院した。そこで、無茶をしないようにという考えに変わった。第二子出産後に復帰した後は、複数現場の検査対応要員として自分で日程調整していた。その時、所長に「その日は無理です」とNoの意見をする経験を積んだ


最初に配属された現場で経験した仕事の楽しさ、やりがいが今も現場勤務を続ける原点となっている。第一子の育休中はキャリアや人生設計について真剣に考えた。第三子のときは、復職後の配属先が決まっていたので、育休中も復職後の生活のイメージができた。子供との時間の取り方で他人と比較し、つらく感じることもあるが、現場勤務は続けたい


パネラーの経験を聞いて

  • 出産しても仕事を続けている方も、若手のころは今の自分と同じような悩みを抱えていたんだと身近に感じることができた。
  • 時短勤務やフレックス、リモートワーク等の働き方を利用していると知り、現場に出ながらもそのような働き方ができる環境作りができる会社の体制が必要なのだと感じた。
  • 社内にはロールモデルとなる方がまだいないので、パネラーの話を聞いて勇気づけられた。
  • 実際に結婚や出産を経て、現場復帰をされている方の話を聞いて、自分の会社ならどのようにしたらできるかなど考えるきっかけとなった。

私たちはこんな課題や悩みを抱えながら働いています

・仮設資材やフルハーネスが重くて体への負担が大きいのでつらい。
・女性のライフイベントと仕事の両立がしづらい。
・女性トイレ・更衣室を整備してほしい。
・週休2日ができていない。
・年齢差による上司との考え方のギャップが大きい。
・女性特有の悩みを相談できる相手が作業所にいない。
・生理休暇を取得した時の周囲の雰囲気を改善してほしい。
・作業着の色が薄い(生理の時不安、下着が透ける)。
・ハラスメントを被害者・加害者、個人の問題にしないでほしい。

解決にむけた4つの視点


① 自分ができること、すべきこと

・スキルアップ、資格取得
・周囲の意見を集めて、会社に伝える
・段取りの良い仕事の計画をする
・信頼してもらえる働き方をする
・交流会に積極的に参加する

② 社会に求めるもの

・男性の育休取得推進
・男性も育児するのが当たり前の社会にする
・休むことで、会社の評価が上がる仕組みにする
・建設業界で働く女性のリアルを知ってほしい
・託児所など子供を預けられる環境の整備

③ 会社に求めるもの

・無理な工期設定をしない(営業段階で週休2日工事を獲得)
・男女が互いについて理解するための研修
・一人一人の意見を伝える場をつくる
・気軽に相談できる人(部署)を置く
・外部講師によるハラスメント教育
・時短勤務や在宅ワークができる体制づくり
・作業着の色を濃くしてほしい
・マネジメント研修の充実

④ 現場に求めるもの

・現場資材やトイレなど最新のものを取り入れていく
・フォロー体制(現場近くの託児所、ベビーシッター)
・業務内容の共有
・現場にいる時間をシフト制にする
・仮設計画にお金をかける
・女性トイレ+目隠しを標準仕様にする
・作業所職員の増員

会議を終えてどう感じた?

  • 多くの女性技術者に会えたことが励みになった。つらいことは同じなのでその中で頑張っている姿がかっこよく、自分のやる気へとつながった。
  • 女性だけでなく男性とも今回出たような意見を共有する場がもっとほしい。
  • 出産や復職などの話や情報が聞けて、将来の不安が払拭できた。どこかで、建設業で働いているうちは出産できないと諦めていたので、その考えは改めようと思う。
  • 現場で働き続けることは可能かもしれないという希望が持てた。
  • 自分にできることは会議の内容を展開することなので、早速組合に報告した。
  • グループ討議では普段話せない他社の方の意見を聞くことができ、視野が広がった。

おわりに

作業所に配属される女性技術者は、年々増加傾向にはありますが、まだまだ少ない状況です。以前に比べて、女性が働きやすい環境は整備されつつありますが、今後、建設産業の更なる魅力化を図るには「女性目線」での施策が必要になってくると考えます。また、今回の会議では「男性とも意見交換がしたい」「男性にもっと理解してもらいたい」という声も聞かれました。これを機に男性も女性特有の悩みを理解し、みんなで問題解決していきましょう。
日建協は、今後も誰もがいつまでも働ける、誰からも誇りに思われる建設産業の実現をめざして活動していきます。