もうすぐそこに! 上限規制・・・時間外労働の上限規制
政府の進める働き方改革の一環として労働基準法が改正され、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は「原則として月45時間、年360時間」と定められました。他産業では適用済みですが、5年間猶予されていた建設産業にも2024年4月の適用が迫ってきました。改めて、上限規制のルールと、想定されるケースをご紹介します。(PDF版はこちら)
※ 注意!! 残業時間を毎月60時間にすれば解決ということではありません!!
ルール①は年間720時間以内となっています。これを月平均にすると60時間になります。これで違反にはならないと考えがちですが、ルール④で45時間を超えるのは年6回までとされているので、毎月60時間では法律違反になってしまいます。
上限規制に関する過去の記事はこちら→ 「今さら聞けない? 上限規制」
法定労働時間や法定休日についてわかりやすく説明しています!!
2024年から時間外労働の罰則付き上限規制が適用されると、36協定違反で罰則を受けるのは会社でしょうか? それとも現場所長でしょうか? また、どのような罰則が適用されるのでしょうか?
36協定は会社側代表として支店長、現場所長等と労働者で締結することが多いと思います。これにより会社側の協定締結者(現場所長等)が、労務管理する「使用者」として解釈され、違反をした場合は会社と締結者が罰せられる可能性があります。例えば、現場所長名で締結していた場合は、現場所長個人が罰せられる可能性があります。ただし、いきなり罰せられるのではなく、まずは労働基準監督署より是正勧告がありますので、それに基づいて是正をすればいきなり刑事罰になる可能性は低いと思われます。また、刑事罰に課せられるかは、法違反(悪質性)の程度とそれにその支店長等がどの程度深く関与しているかにもよるでしょう。
上限規制の4つのルールを1つでも違反すると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。
上限規制が適用されると、会社や所長が休日出勤分の代休を取るように強制的に指示をしてくることが予想されます。しかし、私は代休よりも残業代を希望しており、休むとしても有給休暇を取得したいと考えています。
36協定の上限を超えないように時間外を減らす目的で、会社や所長が強制的に代休を取得させるのは問題ないのでしょうか?
上限規制の目的は上限を超えないように時間外労働時間を減らすことです。上記のような代休取得の指示は、時短という時代の要請と法の主旨などに照らすと、問題ありとは言えないと思われます。なお、有給休暇は本人の意思で取ることとなっていますので、会社は有給休暇の取得をダメとは言えません。
既に上限規制が適用となっている他産業で
罰則を受けた企業はありますか?
2021年7月、労働者10人に時間外労働の上限規制を超えて最長月184時間残業させたとして、労働基準法第36条(時間外および休日労働の上限規制)違反の疑いで冷凍食品会社とその親会社、工場長が書類送検されています。上限規制の4つのルール③の違反とみなされました。
まとめ
時間外労働の上限規制は誰もが頭を悩ませている大きな課題です。残り時間は2年と少ないですが、会社と労働組合が知恵を出し合って、具体的な対応策を考えることが課題解決の手段だと思われます。気が付いたら「対策していなかった、できなかった」とならないように、一人ひとりが自分の課題として取り組んでいきましょう。