NikkenkyoNews Vol.14 BWIで日建協議長が日本協議会代表としてスピーチ!
国際産別組織BWIのアジア太平洋地域セミナー会議に参加し、
日本協議会を代表して日建協議長がスピーチしました!
於:ネパール カドマンズ
日 時:2014年9月25日(木)、26日(金)
参加者:植村 吉田
9月25日(木)から2日間、ネパールのカドマンズで行われたBWIアジア太平洋地域セミナー会議に、日建協から植村議長、吉田事務局長の2名が参加しました。本会議では、BWIに加盟するアジア太平洋地域各国からの活動報告がなされ、課題の共有とその解決に向けての情報交換を行いました。
BWIは正式名称をBuilding and Wood Workers International(国際建設林業労働組合連盟)といい、94ヶ国199組織で構成される、建設及び林業に関する労働組合の世界的な組合組織です。アジア太平洋地域では、22カ国86組織が加盟しています。主に、一国では解決できない国家間にわたる労働問題を解決するため、また組合組織が未発達の国に対して、法整備等の支援を行うために様々な活動を続けています。
日本から参加したのは、BWI日本協議会のメンバーである日建協、森林労連、UAゼンセン、全建総連から派遣された代表団総勢11名です。
会議では日本協議会に対し「2020年東京オリンピック」をテーマに発言するように求められました。そこで日本協議会を代表して日建協の植村議長が、東京オリンピックを契機に議論がスタートした外国人技能労働者の活用に関してスピーチを行いましたので、その内容を報告します。
◇ 2020東京オリンピックについて
BWI日本協議会 植村副議長(日建協議長)
まず、東日本大震災が発生した際、BWIの仲間から多くのサポートをいただいたことに対し日本を代表して感謝申し上げます。皆様の支援により日本は復興に向けて歩みを進みだすことができました。
1.オリンピックの開催
日本では2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しました。若者に夢と希望を与えるオリンピック開催の決定は、日本の建設会社にとって明るいニュースの一つとして受け止められています。東京オリンピックの直接的な設備投資額は約1兆円と言われており、建設投資額年間約50兆円という規模からすると、それだけで建設会社の業績に対し大きな影響を与えるものではありません。しかし、オリンピックの開催により東日本大震災の復興事業が加速すること、開催地となる東京湾岸地域の開発が進むこと、羽田・成田空港周辺をはじめとする首都圏のインフラ整備が必要となること、パラリンピックの開催によりバリアフリーをはじめとした都市機能の充実が求められること、などにより関連する設備投資が増えることが考えられるからです。
2.外国人技能労働者受け入れの背景
オリンピックの開催の決定と時を同じくして、日本では外国人技能労働者の受け入れについての議論が始まりました。この理由には、単純に日本建設市場における技能労働者の不足があげられます。その背景をお話しすると、日本経済はバブル崩壊以降長く低迷を続け、建設産業もその影響を受け続けてきましたが、これまで、建設投資の減少に歩調をあわせて建設産業もその業態を縮小してきました。私たち組合の必死の努力にもかかわらず、建設業者数は47万とピーク時の約8割、建設業就業者数は約500万人とピーク時の約7割となりました。しかし、東日本大震災の復興工事に関する工事需要が高まったことや、震災を機にインフラ整備の必要性の理解が進んだことにあわせ、東京オリンピックの開催が決定しました。これまでの状況と一転し建設投資が増え始めた結果、建設産業は増える事業量に対して、人材の数が全く追いつくことができない状況となってしまいました。建設産業で働く労働者に対する負荷は増える一方で、その労働環境は他産業と比較し、お世辞にも良いとは言えないものとなっています。このような建設産業に、未来をみて入職する若者がいるでしょうか。労働環境に魅力をなくした建設産業は、さらに人材不足を招くといった負のスパイラルに入っていきました。
このような建設産業に危機感を感じた国は、当面の人材不足に対応するため外国人の労働者の活用を考えたのです。
3.外国人技能労働者受け入れの制度の内容と問題
外国人技能労働者の受け入れは、具体的には、技能実習制度の活用で対処しようとされています。これまでの外国人技能実習制度の内容を大きく緩和し、3年間の技能実習を終了した実習生(「技能実習」による在留資格)は、さらに2~3年間日本国内の業務に従事することができるようにしました(「特定活動」による在留資格)。期限は2020年度まで。つまり東京オリンピックが終わるまでの時限措置です。
このような外国人労働者を活用としようとする動き、特に外国人技能実習制度を活用することには以下の3点の問題があります。
① 外国人技能実習制度は、開発途上国等の経済社会の発展を支援するために人材育成を目的としています。実習生は日本国内で技能習得を行い、実習終了後は母国に帰り、その国の発展に貢献する、ことが狙いです。今回、不足する人材に対して技能実習者を日本の労働力として活用しようとする措置は、まずもってこの制度の趣旨に反しています。
② 外国人技能実習制度で学んだ外国人は、言葉や慣習の違いにより一人前になるには少なくても5年以上、10年程度はかかる、と言われています。これらの違いは労働安全衛生面においても大きな不安となります。従って、5年程度の実習生を活用しても産業の担い手としてなり得ないと、日本の各地域の建設会社の団体は実習制度の緩和による外国人労働者の活用には反対の姿勢を示しており、国が外国人活用を叫んでもその実効性は薄いのが現状です。
③ 日本で働く外国人には「日本人と同等の処遇」が前提となりますが、誰もが働くことを希望しないような労働環境は、賃金面においても労働時間面においても低下・悪化していく悪循環にはいります。結果的に、悪循環の中で外国人労働者を低賃金労働者として活用することにならざるを得ません。
4.外国人技能実習制度による外国人労働者の活用に関して私たちの立場
日本の建設労働者の処遇の厳しさ(低賃金、長時間労働)をみれば、建設産業で働く私たちがまず主張すべきは、この産業で働く労働者の処遇改善を行うなど根本的な人材確保策を行うのが先決であるということです。日本人が働きたくないと思っている産業に外国人の労働者にきてもらうことが中長期的に人材不足の問題の解決につながるとは考えられません。誤解の無いようにして頂きたいのは、私たちは決して外国人労働者の流入そのものに反対しているものではありません。ただし、「人の移動」に関する判断は、受け入れ国、送り出し国双方の社会が持続的発展可能となるように中長期的視点から検討されるべきであり、受け入れ国の一時的な労働需給状況によって判断されるべきものではありません。私たちはまずは誰もが働きたくなる産業を目指し、その環境を目指して外国人の労働者が入国してくるという好循環を目指すべきであり、単なる人材不足の穴埋めに外国人労働者を活用することは日本の、そして日本を含む諸外国にとってもその社会の明るい未来にはつながらないと考えます。
(以上、スピーチ全文)
植村議長のスピーチに対し、下記の質疑が行われました。
(質 問) 震災復興の現状を教えてください。
(回 答) 被災からおよそ3年が経ち、確実に復興に向かって前進していますが、現場で働く労働者が大きく不足している状況です。外国人技能実習制度の期間を延ばすなど、外国人労働者を受け入れる方策を政府は打ち出しました。しかしながら、まず考えなければならないのは、国内の労働環境を整えることであり、日本の学生が入職したくなるような産業にしていくこと。その上で外国人労働者の受け入れが検討されるべきだと思います。
スピーチと質疑の後、司会者からは「東京オリンピック開催にあたり、建設産業の労働者の現状を伝えていただきました。また、外国人労働者を受け入れることについては、様々な問題があることを認識しながらも、その問題を評価し検討する可能性について明確に話していただきました。英語でのスピーチも素晴らしかったと思います。」との総評がありました。
スピーチを熱心に聞き入る参加者の様子からは、2020東京オリンピックにむけた日本における外国人労働者の受け入れについて、アジア諸国の関心の高さが窺えました。すべては紹介しきれませんが、「日本が外国人技能労働者の受け入れ拡大を検討しているならば、我々BWIはその準備をしなければならない」「日本の労働環境がカタールのように外国人労働者を搾取することで成り立つような環境にしてはいけない。注視していく必要がある」「技能のある労働者だけではなく、技能のない労働者の受け入れについても検討が必要だ」などの発言もあり、世界は日本の労働環境に深い興味を抱いていることが伺えます。そのような中で、日建協が外国人労働者の活用について、「まずはこの産業で働く労働者の処遇改善など根本的な人材確保策を行うことが先決である」との認識について、アジア諸国に明確に伝えたことは大きな意味があったと考えます。
NikkenkyoNewsでは、日建協議長からの発表内容を報告しましたが、その他の会議の内容については、日建協機関誌Compass Vol.804(2015年1月発刊)で詳しく報告しますので、楽しみにしていてください。