土木作業所における4週8休の実現にむけて ~誰もが働きたいと思える建設産業をめざして~
日建協では、作業所全般の労働環境改善にむけて、作業所で働く組合員の長時間労働を中心とした諸課題の解決をめざして提言活動を実施しています。
今号は土木提言、次号では建築提言についてお伝えします。
2015年3月の国土交通省本省、5月から6月にかけての全国の地方整備局・北海道開発局への提言活動について、内容と主な回答を報告します。
設計期間が少ない状態で納品されることが多いため、現場条件の相違や設計図書の不具合が減らない。こうした上流工程の不備による遅れが下流工程を圧迫している。管理工程表の活用による四者(発注者、設計者、監理者、施工者)の情報共有化、余裕工期での発注、発注時期・納期・施工時期の平準化が必要である。
回答 1
北海道開発局 プロジェクト全体期間の適正化については、土木作業所アンケート結果でも「工期が積み上げられていない」とあったが、これについては反省すべき点があると思っている。全道を廻り、「運用指針を出した」という危機感を全職員に伝えていく。
九州地方整備局 「いきいき現場向上会議」を設置し、クリティカルパスを受発注者で共有していく。会議は毎月1回定例開催していく。
モデル工事の取り組み主旨や効果を広く地域社会に広報するとともに、地方整備局が率先して実施し範を示し、地域発注者協議会等を通じ、官民問わず他発注者へもモデル工事を実施するよう働きかけることが必要である。
回答 2
国土交通省本省 東京五輪関連等は国土交通省以外の発注だが、国土交通省として調整していく。
中部地方整備局 床版工事で、「週休2日・工程調整綿密対応工事」を試行している。色々な業種、分野、ランクがあるが、今年度においてもさらにモデル工事を拡大実施出来るよう、取り組みを推進していく。
※ 他の4週8休モデル工事については、四国地方整備局、九州地方整備局からも、「試行している」との回答を得ました。また、東北地方整備局からは「今後発注する予定である」との回答を得ました。
週休2日制にむけて建設産業活性化会議にて工程表が示されました。
取り組み強化は感じられるものの、いまだ担当者によってバラツキがあり、十分に運用されているとは言いがたいため、各種ガイドラインの周知徹底と運用強化、好事例の水平展開、積極的対話推進による片務性解消が必要である。
回答 3
北海道開発局 いかに末端の監督員が生産性向上の取り組みを実行できるか。受発注者のコミュニケーションが最も大切である。我々はものづくりを行う同志である。
北陸地方整備局 工事施工対策部会で業界団体と共同でガイドラインを作り、円滑化の促進に努めていく。また、生産性向上説明会で受発注者の両方が聴講できる講習会を開催していく。
九州地方整備局 監督員に受注者と発注者が対等であることを周知している。不適切な指示があれば遠慮なく発注者に申し立てて欲しい。土木作業所アンケート結果は、受注者の意見として「いきいき現場づくり検討会」で紹介し、情報共有していく。
後工程にしわ寄せがいく現行の生産システムに対し、四者が協力体制を築き、上流工程で諸課題を解決していけるような建設生産システムの構築と、その普及促進が必要である。
回答 4
国土交通省本省 運用指針で各発注者は、施工者が設計段階から関与する方式を含む多様な入札契約方式から適切に選択できるよう規定された。BIM、CIM等を含め取り組みを進めていきたい。
九州地方整備局 フロントローディング型の設計やCIMを実施する場合、最初の段階で設計等に重みを置いて行えば、下流工程に負荷がかからないと認識している。
次世代の担い手たちに建設産業の社会的役割を伝える機会の創出や広報機会の拡大、注目度の高いプロジェクトでの建設産業のイメージアップ、地域社会へのPR協力などが必要である。
回答 5
九州地方整備局 社会資本等、地域の環境資源を軸にした観光ルートを開発し、「観光交流推進による地域活性化」を目指したインフラツアーを、鶴田ダムや唐津伊万里ロードで実施している。引き続き取り組みを進めて行く。
※ 国土交通省本省および各地方整備局より説明があった主なPR活動は以下のとおりです。
・国土交通省本省「総合ポータルサイト」
・東北地方整備局「現場体験型学習会・ガイド東北」
・北陸地方整備局「北陸地整がススめる!現場見学ガイド」
・中部地方整備局「旬な現場・建設若者塾」
・中国地方整備局「現場のイチオシ」
・九州地方整備局「建設現場レポート・今見て欲しい九州の土木」 など。
地域発注者協議会において、NEXCOなどの民間工事にも改正担い手三法の理念を浸透させることが必要である。また、発注者インセンティブや第三者機関による工期算定についても、監督官庁として主導的に協議を進めることが必要である。
回答 6
近畿地方整備局
直轄工事が他の工事の手本にならなければならないと思っているので、意識して取り組んでいく。
地域発注者協議会
上の写真は関東ブロックの幹事会の様子です。国土交通省を中心に地方自治体や民間工事発注者などが集まり、運用指針の啓蒙や情報交換を行っています。
担い手確保育成のためには、作業所における4週8休の実現にむけ、建設産業に関わる関係者が協力して、技能労働者の処遇改善を推進することが必要である。
回答 7
関東地方整備局 人口減少、担い手の高齢化等により、近い将来担い手の確保が困難になることは明白であり、担い手確保のためには処遇改善は喫緊の課題であると認識している。また、技能経験に応じた効率的な人材配置が出来れば、生産性の向上や処遇改善に資すると認識している。
各団体の施策
各団体も技能労働者の処遇改善にむけて施策を打ち出しています。
【適切な賃金水準について】
・日建連(日本建設業連合会)
技能労働者の年間賃金水準を、20代で約450万円、40代で約600万円を目指す。
・全建(全国建設業協会)
処遇の改善を図るため適正な賃金水準の確保に努めるとともに、下請企業にも適正な水準の賃金を支払うよう要請・指導する。
・建専連(建設産業専門団体連合会)
適正価格での受発注、適正利潤の確保、技能労働者への適切な賃金の支払い等、健全な企業体質の構築が必要である。
【週休2日制について】
・日建連
全日曜日の閉所、土曜日の月2回閉所を推進する。加えて、国交省と連携し、完全週休2日を目指して、実情を踏まえた段階的な環境整備を検討する。
・全建
適切な労務単価の確保、適正工期の設定、現場での工程管理の徹底により、週休2日制の実現を目指す。
【社会保険の加入促進について】
・日建連社会保険の完備は若者の入職促進には必須であり、現場で働く技能労働者を適正な社会保険に加入させることは企業としての義務である。「社会保険加入促進要領」により、日建連会員企業は、業界のリーディングカンパニーとして足並みを揃えて積極的に推進する。
・全建
下請企業への社会保険加入の指導状況について会員企業にアンケート調査を実施する。
・建専連
標準見積書の作成、加入状況調査を継続実施する。国、政府関係機関、民間団体等に協力要請する。
2015年度の政策提言活動方針
建設産業の抱える課題解決にむけた活動では、作業所全般における労働環境改善にむけた提言活動に重点をおいて取り組みます。提言の策定にあたっては、作業所アンケートやヒアリングを行い、組合員の労働環境の実態把握につとめます。そして、提言活動をより充実させていくために、政策提言アドバイザーから意見をいただきます。活動の推進にあたっては、行政や発注者、その他関係者との相互理解を深めることを重要視します。
具体的には、次のとおりです。
・建設産業活性化会議で示された週休2日制の実現にむけた各種施策について、国土交通省直轄工事での確実な実施を働きかけます。
・事業の種類、規模を問わず、4週8休モデル作業所の推進拡大にむけ働きかけを行います。
・国土交通省が手本となり、公共のみならず民間発注者も含めて、建設産業全体へ改正品確法の理念を浸透させていくよう働きかけます。
・施工円滑化にむけた各種施策の関係者への周知徹底と、より一層の運用強化にむけ働きかけを行います。
おわりに
国土交通省本省や各地方整備局などの回答からは、国土交通省が当事者として発注者責任を明確にし、作業所の労働環境改善にむけて積極的に取り組んでいる印象を受けました。直轄工事の発注者である各地方整備局が手本となり、好事例を水平展開していくことにより、地方自治体や民間工事へ品確法の理念が浸透していくことを目指し、日建協では引き続き提言活動を行っていきます。