BWI アジア・太平洋地域セミナー会議 2012 in デリー


日建協が加盟するBWI(※1)のAPセミナー(※2)(以下、APセミナー。場所:インド・デリー)の開催にともない、日建協から山田議長と澁川事務局長が、BWI-JAC(※3)加盟メンバーの一員として参加しました。その活動の一端を報告します。


※1 BWI:国際建設林業労働組合連盟(英語名Building and Wood Workers Internationalの略)。建設、森林、製材関連産業で組織する国際産業別組織。130か国、328組織、約1,200万人の規模。
※2 APセミナー:アジア・太平洋地域セミナー会議の略。アジア・太平洋地域では18か国、72組織、100万人が加盟。
※3 BWI-JAC:BWIの日本加盟組合協議会の略:林野労組、建設連合、日建協、UAゼンセンの4組織で構成。

APセミナーとは

会議開会前の会場の雰囲気

APセミナーは、BWIに加盟するアジア・太平洋各地域からの活動報告と、加盟組織間の連帯意識を高める目的で開催されています。

今回のセミナーには開催国であるインドをはじめ、パキスタン、香港、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、ネパールの計9つの地域代表組織が集まりました。セミナーでは、地域毎の活動や課題の報告と、参加者同士の意見交換を行いました。

全体会議の様子

セミナーのまとめでは、BWIアジア圏で課題となっている非正規就労及び公共インフラプロジェクト、国際金融公社、多国籍企業に従事する労働者の労働条件の向上をめざすうえで、組合未加入の労働者の組織化を最優先に取り組むことが確認されました。

 

各国代表の発表

ワールドカフェ方式での会議の様子

日建協は、BWI-JACのメンバーとしてAPセミナーに参加しています。今回のセミナーでは、日建協が行っている労働環境の改善にむけた取り組みを伝えると同時に、海外の労働事情などの情報を収集しています。

各国の代表者から建設や林業部門における様々な活動の発表がワールドカフェ方式(※4)で行われましたので、同席した各国代表の主な発表内容の概要について報告します。


※4 ワールドカフェ方式:リラックスした雰囲気の中、少人数に分けたテーブルで自由な対話を行い、ときどき他のテーブルのメンバーとシャッフルして対話を続けながら、参加する全員の意見や知識を集めることのできる会議方式の一つ。この方式での会議では、参加者全員が発言しやすい環境となり、意見が集まりやすいため、共感が生まれるなどのメリットがある。

インド
鉄道インフラ関係など、今後も大型プロジェクトが続くことから、安全衛生意識の高揚や施工技術者の育成のためにも、組合未加入の労働者の組織化が必要だ。そのためにもBWIと連携しながら、建設労働者の労働条件と地位の向上を図りたい。


パキスタン
多国籍企業が進める国家プロジェクトにおいて、現地採用の組織化されている労働者の一部が解雇された。賃金の未払いもある。このような状況を変えるためにも、BWIと連携しながら多国籍企業への働きかけを行い、団体交渉が行える環境をつくり、労働環境の改善を図りたい。


韓 国
建設産業で働く技能労働者の長時間労働の問題や、不安定な雇用環境の改善を求めるストライキ運動への迫害が続いている。経営者との交渉から建設労働者が抱える問題の解消を進めたいが、困難な状況にある。この状況を変えるためにも労働者の組織化は必要だ。


マレーシア
民間企業を中心に乱開発を進めた結果、広大な熱帯雨林も今や再植林が必要な状況にある。森林事業は地元地域の雇用と経済に密接な関係にあり、持続可能な森林の利用と保護を図ろうとする森林認証制度が必要である。


  

インド政府代表者による基調講演       BWI書記長からの挨拶

議長発表と質疑応答

「日本の建設産業で働く組合員の雇用不安について」
日建協議長 山田 栄治

発表中の山田議長

日本国内における建設投資額は減少傾向にあり、建設産業の市場規模も年々縮小している。2010年の建設投資額は、ピーク時(1992年)の49%まで減少している。

こうした状況を背景に、一部建設会社では、企業経営の悪化から雇用調整や賃金改定を実施し、私たち労働組合にとって雇用不安など労働条件の悪化は大きな課題となっている。景気動向に左右されやすい建設産業とはいえ、そこで働く組合員が雇用不安などを抱えたままでは、仕事に集中し安定した生活を送ることは難しい。私たちの仕事は広く国民の生命、財産を守る社会的使命を担っている以上、どんなに厳しい労働環境にあっても、次世代を担う人材を確保し、技能と技術を後世に伝承していかねばならない。

日建協では、労働条件の向上にむけた取り組みを活動方針に掲げ、産業内外にむけた提言活動や働きやすい環境の醸成を図りながら、建設産業で働く魅力の向上と産業の成長と発展に貢献している。


◆発表後、インドの代表者からは「労働問題を解決する方法として日本ではどのように対応しているのか」という質問に対し、「日本では、個々の労働者と事業主との間に生じた紛争であれば、裁判に拠らず労働審判制度を活用し迅速な調停を行う制度がある」と回答し、現在アジア各国が抱える労働問題の情報を共有することで、支援できることもある旨を述べた。

APセミナーへの参加を終えて

参加したBWI-JACのメンバー

今回の会議で、アジア・太平洋地区における建設事情を知ることができたことは、日本の産業別組合として意義深いものとなりました。数十年前に日本が参加各国と同様に厳しい労働環境を経験したこと、現在も経済情勢の煽りを受け、組合員が雇用不安を抱えている現状を伝えました。アジア・太平洋地域の先進国として、参加各国の方々に、日本が経験した多くのノウハウが提供できることを知って頂くことができたと思います。

年々縮小する国内建設市場に対し、アジアをはじめとする海外市場に新たな経営基盤を求める動きから、日本国内と異なる労働環境で働く組合員が増えることも予想されます。

日建協としてはBWIとの交流をつうじて海外の労働事情などの情報を収集し、組合員の皆さんに対し有益な情報を提供していきたいと思います。

近年成長著しいインド

インディラガンジー空港近くの建設現場

今回訪問したインドは、BRICSの一ヶ国で、経済成長著しい国です。人口は約12.4億人であり、世界の人口の18%を占めます。今回訪問した首都デリーは人口2,163万人でインド最大の都市です。空港周辺は建設ラッシュで多くの建設現場があり、インド

の発展ぶりを感じました。現在、インドで仕事をしている加盟組合企業もありますが、訪問できなかったことは心残りです。

駅前の様子

本場のカリーはスパイスが強烈でした