角議長メッセージ第8回 2023年賃金交渉を迎えるにあたって
世界経済は、欧米中心にインフレが深刻化しており、インフレ・金利上昇により景気後退に向かうと予測されています。アジア圏は今後コロナ禍からの回復に向かうものの、欧米経済の低迷を補うには至っていない状況です。
●日本経済は、足元のコロナ拡大の影響が一服する2022年末頃から消費が持ち直し、インバウンド需要も回復へ向かい堅調に推移すると予測されています。一方で、交易条件の悪化や海外経済減速が企業収益を下押しし、賃金の回復ペースは緩やかな状況にあります。先行きについては、個人消費は全国旅行支援の影響もあり増加し、インバウンド需要も水際対策緩和により増加すると見込まれています。経済活動の再開により感染拡大が懸念されますが、政府による行動制限がなく、感染症対策も進展しており、景気下押し効果は限定的になると思われます。
◆このような社会情勢の中、連合は2023春季生活闘争の方針を掲げています。
- 国・地方・産業・企業の各レベルで、日本の経済・社会が直面する問題に対する意識の共有化に努め、ステージを変える転換点とする。
- 物価上昇によって生活は苦しくなっており、賃上げへの期待は大きい。とりわけ、生活がより厳しい層への手当が不可欠であり、様々な格差是正を強力に進める必要がある。
- サプライチェーン全体で、生み出した付加価値とともにコスト負担も適正に分かち合うことを通じ、企業を超えて労働条件の改善に結びつけていく。
- 各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点とすべての働く人の生活を持続的に維持・向上させる転換点とするマクロの観点から、賃上げ分を3%程度、定昇相当分を含む賃上げを5%程度とする。
以上の4点です。
建設産業に目をむけると、2022年度上期では売上は前年同時期と比較すると増収が目立ちました。その一方で、資材価格上昇の影響から減益する企業が多くみられました。通期見通しにおいては、資材価格上昇分を価格転嫁できるかが不透明なこともあり、上方修正した企業は少なく下方修正した企業が多い状況です。当面は厳しい状況が続くと思われます。
◆日建協加盟組合の2022年賃金交渉においては、月例賃金で24の加盟組合がベースアップを獲得し、一時金については14組合で水準の向上がみられ、6組合は前年同水準、14組合が前年比減額と業績に応じて明暗の分かれる結果となりました。初任給については、大手ゼネコンの初任給引き上げを皮切りに多くの加盟組合で引上げが行われました。
2023年の賃金交渉は、厳しい交渉になることが予想されますが、「あるべき賃金水準」にむけて賃金水準の維持または向上をめざすだけでなく、働き方改革の実現にむけ、組合員一人ひとりが高い意識で取り組んでいく必要があります。産業の魅力化や担い手不足などの課題の解決へむけた取り組みの前提となる賃金制度は「安心して働き続けられる産業」への重要な足がかりでもあります。ともに力を合わせて2023年賃金交渉に取り組んでいきましょう。
日本建設産業職員労働組合協議会
議 長 角 真 也