木浪議長メッセージ第3回 2024年賃金交渉を迎えるにあたって
世界経済は、国際情勢が一段と不安定化しており、不確実性が高まっています。高金利・高インフレの下で停滞感が強まり、減速する見通しとなっています。欧米は金融引き締めの影響で景気後退が懸念されています。中国も投資意欲低迷や不動産市場の調整長期化が景気の重石となり低成長率となる見込みです。アジア圏は今後コロナ禍からの回復に向かうものの、欧米経済の低迷を補うほどの成長は見込めない状況です。
日本経済は、物価高や海外経済減速などの下押しにより回復に一服感がみられます。先行きは、内需主導の成長経路に復すると予測されており、個人消費は、24年春闘で高めの賃上げが続くなか、労働者の賃金予想も上向くことで、緩やかに持ち直すと期待されています。
このような社会情勢の中、連合は2024春季生活闘争の方針を掲げています。
① 経済も賃金も安定的に上昇する経済社会へとステージ転換をはかる正念場であり、社会全体で持続的な賃上げを実現する。
② 各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組み強化を促す観点から、賃上げ分3%程度、定昇相当分を含む賃上げを5%程度とする。
③ 賃上げ、働き方の改善、政策・制度の取り組みを柱とする枠組みのもと、中期的視点を持って「人への投資」と月例賃金の改善に全力を尽くす。
以上の3点です。
建設産業に目をむけると、2023年度上期では売上は前年同時期と比較すると増収が目立ちました。資材価格や労務費の高止まりで利益確保は難しい状況が続くものの、工事採算の改善などで営業利益が増益となる企業もでてきています。先行きについては引き続き旺盛な都市部の再開発や高速道路リニューアルの需要増に加え、工場や物流施設など民間設備投資の回復が受注を押し上げてくと予想されています。一方で北海道や九州での半導体産業への投資活発化を背景に、労務が逼迫しており、この状況はしばらく続くとみられています
日建協加盟組合の2023年賃金交渉においては、月例賃金で30の加盟組合がベースアップを獲得し、一時金については22組合で水準の向上がみられ、5組合は前年同水準、6組合が前年比減額と業績に応じて明暗の分かれる結果となりました。初任給については、26組合が24万円以上となりました。
2024年の賃金交渉は、厳しい交渉になることが予想されますが、「あるべき賃金水準」にむけて賃金水準の維持または向上をめざすだけでなく、働き方改革の実現にむけ、組合員一人ひとりが高い意識で取り組んでいく必要があります。産業の魅力化や担い手不足などの課題の解決へむけた取り組みの前提となる賃金制度は「安心して働き続けられる産業」への重要な足がかりでもあります。ともに力を合わせて2024年賃金交渉に取り組んでいきましょう。