みんなの声で明日をつくろう! 2016年 賃金交渉
賃金に対して日頃どう感じていますか?
会社から支払われる賃金は、みなさんにとって日々の暮らしを支える大切なものです。この生活を支える大切な賃金について、深く考えたことはありますか?
日建協2015年時短アンケート兼生活実態・意識調査の建設産業に魅力を感じない理由 (図1) をみてみると、「労働時間が長い」 に次いで 「賃金水準が低い 」があげられています。
賃金水準を他産業と比べると!
それでは私たちの賃金水準を見てみましょう。
産業別賃金カーブ (図2) をみてみると、日建協平均と全産業との比較において、若年層ではそれほど差は大きくありませんが、年齢を重ねるごとに年収の差は拡大していきます。さらに生涯年収を計算すると、日建協生涯年収計2.58億円に対し全産業生涯年収計は2.87億円となり、大きな差になることがわかります。みなさんが 「賃金水準が低い」 と感じるのも無理はありません。
ではなぜこんなに差がついてしまったのでしょうか。その理由としてベースアップ (ベア) が関係しています。他産業では長年にわたり繰り返しベアに取り組んでいたのに対し、建設産業は厳しい時代が長く続きベアに取り組めず、その結果として他産業との差がひろがってしまったと考えられます。
ベア? それとも一時金?
入社3年目で初めて組合支部委員になった波手名 (はてな) さん。他産業との生涯年収の差を知り、今年の賃金交渉について先輩の物知 (ものしり) さんに相談しています。
≪ 賃金用語の基礎知識 ≫
● 月例賃金
毎月決まって支払われる賃金。
基本賃金など所定内労働に対する所定内 (基準内) 賃金と、所定外労働に対する所定外 (基準外) 賃金に大別されます。● 定昇 (定期昇給)
年齢の上昇や経験の積上げにより、能力、労働の質が向上することを前提として、毎年定期的に実施することを約束 (あるいは毎年労使で確認) したものを定期昇給といいます。● ベア (ベースアップ)
基本となる賃金水準を引き上げることです。賃金表の書き換えともいいます。● 一時金・賞与
一時金は生活給かつ給与の後払い的なものであり、支給されるべきものとも考えられます。主に労働組合側がつかっています。賞与は一般的にその期の利益の分配であり、利益が出ていないと支給されないこともあり、主に会社側がつかいます。● 名目賃金
消費者物価指数の変化を考慮せず、賃金の金額そのものを表したものです。● 実質賃金
消費者物価指数の変動を加味した賃金であり、名目賃金を消費者物価指数で割ったものです。
昨年のベアの実施状況は?
2015年にベアを実施した企業の過去の実施状況 (図3) をみてみると、ベアを実施した企業 (444社) のうち、実に7割強の企業 (318社) が2014年から継続してベアを実施しています。
建設産業では長年ベアを行っておらず、2015年にようやく多くの企業がベアに踏み切った状況です。やはり、他産業に比べて出遅れ感が否めないのではないでしょうか。
日本の労働人口が減少するなか、担い手確保・育成のためにも他産業と比べ見劣りしない賃金水準が必要です。他産業では長年取り組んできていることからも、継続してベアを実施することが今の建設産業には必要だと思います。
組合員の声
建設産業に魅力を感じない理由 (図1) として 「賃金水準が低い」 との回答が多くありましたが、組合員は具体的にどのように感じているのかみてみましょう。
● 一般的に思われているよりも他産業に比べ賃金水準が低いので、賃金のことは考えず使命感のみで働いている。賃金水準が上がらなければ良い人材も入ってこないのでは。 (48歳)
● 「高収入」はステータス (魅力) であり、魅力が増せば優秀な人材が集まってくると思う。(30歳)
● 同業他社の賃金を比べる機会があったが、当社は水準が低すぎる。例え同水準であったとしても、他社は手当が充実しているため月収の面で差がついてしまう。 (35歳)
● 共働きではないので貯蓄が出来ず将来が不安だ。 (27歳)
● 物価は上がり消費税の増税問題も控えている。現在はなんとかトントンで生活できているが、教育費を抑えているのが現状で、子供の成長を考えると将来が不安である。 (36歳)
● 自分の子供に 「経済的に厳しいから将来 (進学など) をあきらめて欲しい」 と言わざるを得ない。そんな会社で働いていることが苦痛。まさか自分が子供の将来を諦めさせるとは思わなかった。 (48歳)
● 中堅社員の生活が苦しい様に見える。 (58歳)
● 賃金を上げていかないと会社に魅力を感じられず、人材流出が収まらない。そうなると、残った人に負担がかかる。 (42歳)生活実態・意識調査意見欄より
これまでのアンケートから も「仕事にやりがいがある」 と感じている人が多くいる一方、生活の糧である賃金が低いことで将来を不安視する声も多くみられます。将来の生活設計ができ、「希望」 が持てる賃金水準にしていくことが、産業の魅力化の第一歩だと思います。
日建協の取り組み
日建協では、中期的な方針として 「日建協賃金政策」 を策定し、私たちの賃金が公正で魅力あるものとなるよう、建設産業に働く私たちのあるべき賃金水準をめざしています。
「賃金体系の確立」 「賃金水準の向上」 「賃金交渉の充実」 を3つの柱として、加盟組合と日建協が一体となって目標を共有しながら取り組んでいます。
◆ あるべき賃金水準をめざして
賃金政策では、建設産業で働く私たちが安心して働き続けられる賃金水準の指標として 「日建協個別賃金」 を定め、「働きがい」 と 「誇り」 を持って仕事に取り組めるよう、日建協個別賃金の水準達成をめざします。
個別賃金水準は、ライフステージイメージ図 (図4) のように車の購入や結婚、子供の出産、教育、住宅の購入、子供の結婚といった人生において大きな出費を伴うライフイベントを想定し、その支出をベースに必要な収入を算出したものです。具体的なライフステージとして、「先行ライン」 「標準ライン」 「必要ライン」の3つのモデルを設定しています。産業別賃金カーブ (図2) にて、3つのモデルと他産業を見比べ他産業に見劣りしない賃金水準をめざしていきましょう。
◆ 2016年賃金交渉にむけて
毎年、社会・経済情勢をふまえ、日建協賃金政策にもとづいて 「賃金交渉基本構想」 を策定し、これを基本として加盟組合ごとに賃金交渉に取り組んでいます。
< 2016年賃金交渉基本構想 >
魅力ある建設産業をみんなでつくっていくためにも、以下の基本姿勢、要求基準のもと賃金交渉に取り組んでいきます。
すべては私たちの声から!
賃金交渉は、私たちの思いを伝えることが大切です。
ひとりの声は小さく弱いかも知れませんが、みんなが声をあげていくことで大きく強い思いとなります。一人ひとりが 「賃金」 の持つ意味を考え、あなたの声、そしてみんなの声を結集し、さらには加盟組合全体で連帯して賃金交渉に取り組んでいくことが重要です。
みんなの声で安心して生活することのできる 「あるべき賃金水準」 を実現することで、誰もが働きたいと思える建設産業の未来をつくっていきましょう!