2021年度 加盟組合会社訪問
~企業経営者に聞きました~
日建協では、毎年9月から11月にかけて加盟組合企業を訪問し、産業政策活動への理解や時短推進活動への協力を求めるとともに、建設産業が抱えるさまざまな課題について企業経営者と意見交換を実施しています。今年度は「働き方改革の推進」「女性活躍推進」「担い手確保」の3つのテーマについて意見交換を行いました。その中から、主な取り組み内容や企業経営者の意見について紹介します。
1 働き方改革の推進について
①‐1 4週8閉所実現にむけて
・全ての作業所で年度当初に1年間の閉所および個人の休日について予定表を作成し、ITツールを利用して本支店で情報共有をはかり、実績管理を行っている。
・毎月「働き方改革実行委員会」を開催して勤務時間の実績と業務内容を把握し、労働時間の長い作業所は個別に支援を実施している。
・「職場環境改善パトロール」を年2回実施し、作業所の抱える問題点や要望事項のヒアリングを行い、改善にむけた取り組みを支援している。
・「アクション85」と称して、4週8閉所、有給休暇5日取得、所定内労働時間(8時~17時)に仕事を終える働き方の実現にむけて、業務分担の見直しや効率化と、社員の意識改革を進めている。
①‐2 2024年に適用される時間外労働の上限規制に対する取り組み
・時間外労働の上限規制適用を見据えたロードマップを作成して段階的な目標を定め、法律適用よりも前倒しでの達成をめざして取り組んでいる。
・2カ月連続時間外労働80時間以上という状況を防ぐために、時間外労働を80時間以上行った社員については、翌月に勤務間インターバルを11時間以上置くことを義務づけている。
・今年度から「業務改革推進プロジェクト」を立ち上げ、作業所の社員がコアな業務に集中できるよう、業務体制の見直しをはかっている。
・作業所支援部署を設置し、図面作成・チェック、官公庁提出書類作成等の支援を行っている。
・時短推進活動をチーム単位で行い、大きな成果をあげたチームに対しては賞与支給時にインセンティブ(表彰+金一封)を与える取り組みを続けている。
・年に1度「働き方改革ウィーク」というイベントを開催し、各部門の働き方改革への取り組み紹介や表彰をしている。
・コロナ禍における働き方改革の一環として、上司や同僚に感謝の気持ちを伝える「ありがとう運動」を実施し、コミュニケーション向上をはかった。
①‐3 適正工期での受発注に関する会社の方針、発注者や協力会社に対する取り組み
・営業取り組み案件の選別時に、適正な人員配置が可能かどうかを確認している。
・適正工期が確保できない案件は取り組まない。
・発注者に対して、週休2日を前提とした工期による見積提示を徹底し、日建連「週休2日実現行動計画」のパンフレットを用いて説明をしている。
・協力会社に対して、見積徴収時・契約時に週休2日が前提である旨を説明している。
2 女性活躍推進について
②‐1 女性活躍推進にむけて
・「両立支援のひろば」という社内ホームページを作り、出産・子育てに関する制度や相談先を掲載している。また、女性の社外取締役が経験談を紹介したり、女性社員からの個別相談に応じている。
・出産・育児に関する制度をQ&A形式でまとめた「パパママサポートブック(上司向け・本人向け)」を作成している。
・出産・育児に関する諸制度を社内報で紹介している。
・女性管理職のロールモデルを作れるよう、育成のための研修制度を整備している。
②‐2 女性技術者が働き続けるために
・女性技術者研修を実施している。今年は「働き続けるために」をテーマとして行っており、参加者が会社への提言を取りまとめる予定である。
・入社4・5年目の女性技術者を対象とした研修を実施し、将来の希望等について意見を聞く機会を設けている。
・女性技術者が年に一回「小町会」という集まりを自主的に開催し、仕事上の悩みや働き方などについて意見交換を行っている。
・女性主体で女性技術者が使いやすい作業着を製作した。
・他社の技術者と交流をはかることを目的として、当社の女性技術者を日建協の女性技術者会議に積極的に参加させたい。
②‐3 男性の育休取得促進にむけて
・前年度120名ほどの男性社員が育休を取得(平均取得日数5日程度)し、取得率100%を達成した。今年度も取得率100%の継続をめざしている。
・全社員向けに男性の育児休業推進のオンライン研修動画を公開している。また、配偶者に子供が産まれた社員には、メッセージ付きのスプーンや社長直筆の手紙を送り、育休取得を促している。
3 担い手確保について
建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及・活用にむけて
・建設業振興基金との協働により、技能者がカードリーダーにタッチすると、登録のインセンティブとして電子マネーに換金できるポイントが得られるシステムの実証実験をしている。
・専門のサポートチームを作って登録の指導やシステムの環境整備を支援したり、協力会社に対する登録代行サービスの無償提供を行っている。
・日建連のCCUS導入を牽引するTOP15社の目標値より、さらに一段上の目標を定めて取り組んでいる。また支社・作業所単位でタッチ数を集計し、全職員が確認できるようにしている。
・全作業所への顔認証システム導入とともに、CCUSへの登録を顔認証で自動的にできるよう準備を進めている。
・見積条件書に「業者選定にはCCUSの導入状況を考慮する」旨を記載している。
・技能労働者に賃金が行き渡るよう、下請け次数を減らしていく取り組みをしていかなければならない。
今後の動向に注目!
★国土交通省直轄全工事 原則週休2日へ
国土交通省は、2024年度からの時間外労働の上限規制適用を見据え、原則全ての直轄工事で発注者指定型により週休2日に取り組む。現場閉所が難しい維持工事等で適用している週休2日交替制モデル工事も発注者指定型を導入する。2021年度から段階的に対象を拡大している。
★官民全ての工事で建設キャリアアップシステム(CCUS)原則活用へ
2023年度からの国の直轄・自治体・民間の全工事でのCCUS原則活用にむけ、建設業退職金共済制度と連動した運用の整備や、各自治体のモデル工事による取り組みなど、普及推進の動きが加速している。
会社訪問を終えて
今回の会社訪問を通じて、「民間発注の工事について、週休二日を確保するのが困難である」、「建設キャリアアップシステムについて、技能労働者にメリットを理解してもらえない」といった声が多数聞かれ、まだまだ多くの加盟組合企業がこうした課題の解決に苦慮している様子が伺えました。また同時に、自社の価値向上と建設産業の持続的な発展にむけてさまざまな施策を講じ、真摯に取り組んでいることもよくわかりました。日建協では、今回得られた貴重な意見や情報を参考にして、建設産業の魅力向上のため活動に邁進します。