2022年度 加盟組合会社訪問 ~企業経営者に聞きました~

日建協では、毎年9月から11月にかけて加盟組合企業を訪問し、産業政策活動への理解や時短推進活動への協力を求めるとともに、建設産業が抱えるさまざまな課題について企業経営者と意見交換を実施しています。今年度は以下の①~③のテーマについて意見交換を行ったほか、総合評価落札方式における賃上げ加点措置についてや、昨年11月の時短アンケートの結果をもとに、それぞれの企業が抱える課題についても意見を交わしました。その中から、主な取り組みや企業経営者の意見を紹介します。

1 働き方改革の推進について

①‐1 4週8閉所(4週8休)の実現にむけて

  • 受注段階で4週8閉所ができない案件は原則取り組まない。8閉所が難しい場合は職員の4週8休を徹底している。
  • 4週8休の実施状況を確認し、休みが取れていない現場は増員している。
  • 社長名で4週8休宣言を出して取り組んでいる。
  • 国交省などの中央官庁以外の官庁工事や民間工事の4週8閉所実施率が低く、今後の課題である。

①‐2 2024年に適用される時間外労働の上限規制に対する取り組み

  • モデル現場を設定し、上限規制のルールに違反しない労働時間になっているか確認している。
  • 管理職に対し、時間外・休日労働の事前指示及び適正な把握、22時以降の勤務削減を周知徹底している。
  • 作業所において、時間外にやらなければならない業務を書き出して、職員間で割り振りする取り組みをしている。
  • 今年4月から時短につながるインセンティブとして、労働時間の削減ができている作業所に一定額を支給する取り組みを試行している。
  • 勤務報告と実労働時間との乖離をなくすため、半年ごとに労働時間の実態調査を行い、乖離があった場合には未払い分の賃金の支払いを行っている。
  • 業務改善の専門委員会を設置し、ワークフローの見直しを行っている。良い結果、効果があるものについては報奨金を出している。
  • フレックスタイム制を導入し、作業所においては朝礼を全員参加とはせず、時差出勤するよう意識変革を促している。
  • 発注者に対し、職員の就業時間および就業時間外のメール対応はできないことを書面で通知している。
  • 36協定で締結した時間に対する勤務状況がリアルタイムで確認できる勤怠システムを導入している。今後、時間外労働の上限規制に対応した勤怠システムへの改修を検討している。

①‐3 適正工期での受発注に関する会社の方針、発注者や協力会社に対する取り組み

  • 民間工事において、発注者に対し8閉所を確保できる工程表の提示をしている。協力会社に対しても8閉所を基本とした見積りを依頼し、作業員も8閉所、適正な休みが取れるよう発注している。
  • 発注者に対し、日建連等の資料を活用して適正工期確保にむけた説明をしている。
  • 日建連やPC建協などの業界団体をつうじて、国交省だけでなく関係省庁への働きかけを要請している。

①‐4 作業所の時短や工期短縮につながるDXなど施工の業務効率化の取り組み

  • 現場支援部署を設置し、現場のノンコア業務や定型業務をクラウドも活用しながら支援している。
  • 現場のノンコア業務のアウトソーシングを推進している。
  • 本部で現場を直接管理、支援する取り組みにより、経験が浅くても所長ができる体制を整備している。
  • 協力会社・リース会社との協働によるアシストツール開発を行っている。
  • 設計施工の現場にBIMを導入しており、他社設計の現場においても施工図段階での干渉チェックなどに導入している。
  • デジタル技術を活用した施工管理、ロボット化・自動化の推進など、業務変革に取り組んでいる。
  • 働き方改革コンテストを年2回実施し、有効な提案は全社展開することで意識の向上をはかっている。

2024年度から適用される時間外労働の上限規制にむけ、各企業において働き方改革への取り組みが加速していることを実感しました。先進的な取り組みについては加盟組合と情報共有していきます。

2 女性技術者の定着について

②‐1 女性特有の問題に関しての研修や男女を交えた意見交換などへの取り組み

  • 女性を部下に持つ管理職を対象に、外部講師を招いて研修を行っている。
  • 女性を部下に持つ管理職および女性社員を対象に、女性の健康に関するeラーニングを実施している。
  • 女性技術者委員会を立ち上げ、課題抽出や女性のキャリアプランについて、年に6回意見交換を行っている。
  • 階層別研修の1プログラムとして、女性活躍推進研修、女性に対するキャリアプラン、自己啓発研修を行っている。
  • キャリアプランとして、作業所勤務だけでなく内勤業務も選択できるよう、20代後半までに内勤を経験させている。
  • ダイバーシティの専門部署が、子育てをしながら作業所勤務をしている女性職員の事例の周知などを行い、社内への浸透をはかっている。
  • 仕事と育児の両立支援策として、短時間勤務のほか、コアタイムなしのフレックスタイム制を小学校就学以降も利用できるようにしている。
  • 配偶者同居支援として、配偶者が異動した場合には自身も異動申請ができる制度を導入している。配偶者の異動先に配属できる部署がない場合、3年間を限度に休職ができることにしている。

②‐2 男性の育休取得推進にむけた取り組み

  • 管理職および参加希望職員を対象に、女性の社会活躍と男性の育休取得推進をテーマにした女性フォーラムを開催した。
  • 育児休職から復職した社員と上職者を対象としたキャリアと育児の両立支援セミナーを開催している。
  • 出生時育児休業期間中の給与の支払いを行っている。

各社の女性技術者において、結婚・出産・育児などのライフイベントを迎える職員が増えてきており、試行錯誤しながらもさまざな取り組みをしている様子が伺えました。

3 担い手確保について

建設キャリアアップシステム(CCUS)の定着および完全実施にむけた取り組み

  • 協力会社に対し、CCUSへの事業者登録と技能者登録を見積条件とすることや、安全衛生協力会の規約に登録を条件とするほか、優良職長制度の認定条件としている。
  • サポートセンターを設置し、登録の指導やシステム環境の整備支援および協力会社に対する登録代行手続きを無償で行っている。
  • カードをタッチすることで技能者に毎週1本飲料が提供されるCCUS応援自販機を設置している。
  • Buildee(顔認証及び検温)とのシステム連携をはかっている。

担い手確保の観点から、日建協では今後もCCUSの普及・推進について提言を行っていきます。

会社訪問を終えて

会社訪問では、各テーマについて、各社の取り組み状況だけでなく企業経営者の率直な意見も聞くことができ、有意義な意見交換を行うことができました。あわせて意見を伺った総合評価落札方式における賃上げ加点措置についても、さまざまな意見がありましたが、『本措置にかかわらず従業員の処遇改善のために対応した』という前向きな意見もありました。一方、労働時間の適正な申告がされていないなどの問題も依然として根深く残っており、労使で解決していなかければならない課題であると再認識しました。日建協では会社訪問で得られた貴重な意見を参考にして、今後も「誰もがいつまでも働ける、誰からも誇りに思われる産業」をめざして活動を進めていきます。