2012年度 会社訪問・・・経営者はこう考えています
日建協では毎年加盟組合企業を訪問し、企業経営者の方に対し日建協活動に対する理解を求めるとともに、産業が抱える様々な問題について意見交換を実施しています。2012年度の会社訪問では日建協が行っている時短推進活動、産業政策活動、建設産業の魅力向上にむけた活動について報告し、たくさんの貴重なご意見を頂きました。今回はその一部をご紹介します。
時短推進活動
長時間労働が常態化している組合員の現状を説明し、時短や統一土曜閉所運動について、労使一体となったより一層の取り組み強化を求めました。
企業経営者からの主な意見
- 低価格受注のため現場配員が少なくなり、一人あたりの業務量が増加している。休みたくても休めないことが現場の実情となっている。
- 継続して工期が厳しい現場に配属されている職員には、まとめて休みがとれるように工夫をしている。
- 統一土閉できない作業所については休めない原因を調べたうえで対策を講じている。
- 採用の場面で入職希望者が減っていることを実感する。労働時間を減らしていく必要性を強く感じる。
- 厳しい業務に見合う報酬にしていかないといけないと感じる。
- 昨年は東日本大震災の影響があり残業が増えてしまった。我々の業界は災害が起きてしまうと待ったなしである。
- 個々の意識改革も必要だ。長時間働くことが会社への貢献では無い。効率的に仕事をして、早く帰ることが建設業の社会的地位の向上につながると考える。
産業政策活動 ~土 木~
土木作業所で働く組合員の労働環境の改善にむけて、昨年度、国土交通省地方整備局に対して日建協が行った提言と、それに対し頂いた回答について説明しました。
(提言)総合評価落札方式のあり方の見直し、受注者の労働負荷を強いる仕組みを改める必要がある。
(回答)技術提案で加点評価されなかった項目は協議次第で履行証明が不要となる場合がある。(二地整)
(提言)現場条件を加味した4週8休の工期設定を徹底すべき。
(回答)工期に現場条件が加味されていない、完成日ありきの工期設定がされている、との意見は各方面から聞いている。今後現場の確認等を強化し、徹底していきたい。
(補足)日建協は、工事一時中止などが正しく運用されているのか疑問に感じています。
※ 土木作業所で働く組合員の労働環境改善にむけた提言活動については、Compass 9月号 Vol.794をご覧ください。
企業経営者からの主な意見
◆総合評価落札方式について
- 国交省も総合評価方式を変えようと努力している様子であるが、なかなか現実を変えることは難しい。
- 加点評価しなかった項目について協議次第で履行証明が必要ないと答えた地整があったことは重要だ。同様の扱いとなるように他の地整とも話をしてみたい。
◆現場条件を加味した4週8休の工期設定について
- 一時中止ではなく一部中止を行うケースが多い。一般管理費など必要な費用を考慮した上で、場合によって一時中止の適用を増やしてほしい。
◆その他
- 日建連でも同様の考えを持って取り組みを行っている。労使が協調して国交省に対して問題点を同じくして意見発信することは大事なことだ。
- 国交省は率先してリーダーシップを発揮して提言内容の実現に向け努力すべき。
産業政策活動 ~建 築~
民間建築工事における適正な工期の実現のため、昨年度、各方面に向けて行った提言と、それに対し頂いた回答について説明しました。
更に、適正な工期での受発注を促すために策定した「日建協標準工期」を紹介しました。
民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款委員会委員長への提言と回答
(提言)約款に休日条件を明示することを検討願いたい。
(回答)まず受注者内部が適正な工期について共通の理解を持った上で、受注者から声を上げるべき。
国土交通省官庁営繕部への提言と回答
(提言)まず公共建築工事から4週8休の工期設定を徹底すべき。
(回答)状況をよく理解した。標準仕様書の4週8休記載部について監督職員に徹底するように伝える。
※民間建築工事における適正な工期の実現に向けた提言活動の詳細についてはこちらをご覧ください。
企業経営者からの主な意見
◆日建協標準工期について
- 工期は発注者の事業計画段階の問題。ゼネコンが発注者のキャッシュフローまで踏み込む必要がある。ビジネスの考え方を変えるきっかけになるのではないだろうか。
◆約款に休日条件を明示することについて
- 受注者内部の適正な工期についての共通理解のために、日建協標準工期がいい役割を果たすと思う。
- 受注競争が激化しており、短工期でしか受注できないことが多い。業界全体でまとまって自主規制し、行き過ぎた短工期での受注が出来ないようにすべきだ。
- 法律等で規制するしかない問題と考えていた。約款に休日条件を明示することは非常に良いことだ。
- 土曜はもちろんだが祝日も休めるように考えることも大事ではないだろうか。
◆その他
- 土曜に休むことは世間一般で当たり前にならないと実現が難しいのではないか。
- 難しい問題ではあるものの、工期にゆとりを持った上で、品質が高く発注者に喜んでいただけるようなものづくりをしていきたいという気持ちは大いにある。
☆この他、作業所で働く女性技術者の労働環境について意見を集約し、女性の視点を産業に生かすべく実施している「女性技術者会議」、そして大学生向けに産業への理解を深めるため実施している「日建協出前講座」を、建設産業が魅力的で活力ある産業であるために実施している活動として紹介しました。
会社訪問を終えて
所定外労働時間は日建協目標が45時間でありながら、現実は平均60時間を超え、外勤者は80時間を超える高い値で推移しています。データを直接示した説明により、経営者には労使一体となって時短に取り組むことの必要性を再認識していただきました。
土木提言活動、建築提言活動で掲げた課題は共に今すぐ解決することは難しいものの、組合員の労働環境改善のために取り組むべきであることは概ね認識が一致しました。
今回ある経営者から頂いた「今の建設業界は厳しい状況にあるが、将来にわたって胸を張ってできる仕事、そして産業でなければならない」との発言には共感するものがありました。そして、日建協が産別組織として、一組合では解決できない課題に取り組むことは、組合員だけではなく会社側も必要としていることを感じました。私たちは今回得られた貴重なご意見を参考に、これからの活動をより実りのあるものにすべく取り組んでまいります。