日建協 2020年度 政策提言活動 魅力ある建設産業であるために

日建協では、建設産業の諸課題解決のために、作業所アンケートの結果や、政策提言アドバイザーの意見を基に「2021年 政策提言書」を作成し、国土交通省本省および各地方整備局に対して政策提言活動を行っています。
2020年度は8つのテーマについて15の提言を策定しました。今号では2020年度の提言活動の模様をお伝えします。

「2021年 政策提言書」のテーマ

1. 改正建設業法の適正な運用について
2. 週休2日(原則土曜閉所)の実現にむけて
3. 時間外労働の削減にむけて
4. 国土交通省 各施策の普及・改善について
5. 技能労働者の処遇改善について
6. 外国人技能労働者の労働環境改善について
7. 新型コロナウイルス感染症への対応について
8. 単身赴任者の帰宅旅費の非課税化にむけて

● 政策提言に対する主な回答を紹介します。

テーマ 1 改正建設業法の適正な運用について

【提言2】「著しく短い工期」の概念を定着させるため、駆け込みホットラインで扱った事例については、その判断結果の情報公開をお願いします。
【提言趣旨】
「工期に関する基準」は公表されたが、考慮すべき事項が列挙されているだけで、どこからが適正でどこからが適正ではないかがわからない。


【国交省本省回答】
当該建設業者の権利、競争上の地位、正当な利益を害するおそれがあることから公開しない。ただし、行政指導等を行ったものは、建設業法令遵守ガイドラインにおいて順次具体的な事例として公開していく。
<日建協コメント>
ホットラインに通報された事例をすべて公表してほしいわけではなく、あくまで工期に関することの判断事例を公表していただきたいと考えている。基準はできたが、定性的であって定量的なものではない。Aという事例に対してBという基準をもとに著しく短い、または、適正であると判断した、などのアウトラインの公表をすることで工期の概念が根付くと思っている。

テーマ 3 時間外労働の削減にむけて

【提言6】遠隔臨場の全国での標準化および地方自治体や民間への早期普及をお願いします。
【提言趣旨】
発注者、受注者双方にとって、生産性の向上に大きく寄与するものと考えており、全国での標準化を期待している。


【東北地方整備局回答】
平成29年度よりウェアラブルカメラ等を活用した現場管理を実施している。令和3年度は港湾空港関係を除く全ての土木工事および地質・土質調査業務、ボーリング調査等において、遠隔臨場を標準として実施する。
【四国地方整備局回答】
令和3年度の試行要領に基づき、実施可能な通信環境を確保できる現場において、遠隔臨場を積極的に行っていく。
<日建協コメント>
国もDXを推進しているので、今後さらに普及していくと思う。通信環境が整わないと採用できないという条件はあるが、遠隔臨場をさらに展開していただくことを期待している。

テーマ 5 技能労働者の処遇改善について

【提言11】建設キャリアアップシステムの更なる普及にむけ、事業者・技能労働者に対する利便性の早急な向上や、メリットの周知など広報活動に注力していただくようお願いします。
【提言趣旨】
建設キャリアアップシステムの普及は、技能労働者の処遇改善や定着に寄与するとともに、建設産業の魅力向上につながると考えているが、カードリーダーの利用率は依然低い水準である。


【東北地方整備局回答】
都道府県や市町村に対して、インセンティブの導入を要請しているところであり、東北管内では宮城県、福島県および仙台市が企業評価の導入を表明し、他の4県においても導入の検討が表明さ
れた。取り組みが広がるよう様々な機会で周知していく。
<日建協コメント>
インセンティブをつけることに関して、加点評価は元請会社のみが対象と
なり、実際に事業者登録する下請会社や技能労働者にとってのインセンテ
ィブがない状態である。技能労働者の方に対するインセンティブについて
も考えていただきたい。

 

作業所の生の声を、しっかり伝えてきました!!

作業所アンケートでは各所に自由筆記欄を設けて、作業所の声を集めています。その声を地方整備局ごとにまとめて、意見交換の際にお伝えしてきました。各地方整備局からの反応をご紹介します。

・国交省は率先して各施策や働き方改革に取り組んでいるにも関わらず、こんなにたくさんの指摘の声があるのに驚いている。さらに取り組みを強化しなくてはいけないと感じた。(中部地方整備局)
・各施策の改善に向けて改めて監督官や現場技術員に周知していきたいと思います。(関東地方整備局)
・職場の現状がよく調査されておりありがたく思います。いただいた意見に対しては改めて機会をとらえて周知していきます。(東北地方整備局)

といった感想をいただきました。これを機に、更なる労働環境の改善が進むことを期待します。皆さんの声が建設産業を変えます。今後とも、作業所アンケートへのご協力をお願いいたします。

提言書の提出先拡大にも取り組んでいます。

国土交通省不動産・建設経済局長、同局建設業課長へ提言書を提出してきました。
こちらの Nikkenkyo Newsも併せてご覧ください。
http://www.nikkenkyo.jp/activity/sansei/propos/14572/

 

おわりに

国交省は、将来の担い手確保や建設産業の魅力向上、働く者の処遇改善を強く推し進めており、また、2024年の時間外労働の上限規制適用を見据えて、加速度的にさまざまな取り組みを実施しています。
政策提言活動において作業所における諸課題を取り上げることで、国が進める働き方改革に大きく寄与するものと考えています。日建協は今後も、建設産業が魅力ある産業であるために、政策提言活動を行っていきます。