世界の労働者の権利保護のために ~ BWIの活動紹介 ~
日建協では、海外の労働環境についての情報収集と意見発信のためにBWIに加盟しています。今回は、日建協が加盟するBWIやBWI-JAC(BWI日本協議会)の活動についてご紹介します。
BWIは、建設・木材・林業関連の労働者の権利保護を促進することを目的とする国際的な労働組合の連合体です。日建協は2006年から加盟しています。
「人が第一」 であるとの考えのもと、加盟組合員の 「生活の質」 や 「労働条件の改善」 に力を入れて活動しています。組織は世界4地域 (アジア太平洋、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ、アフリカ中東) に分かれています。
<組織概要>
名 称 : 国際建設林業労働組合連盟 Building and Wood Workers International (BWI)
本 部 : スイス ジュネーブ
組合員数 : 1,200万人(127ヶ国351組織) ※ 2020年1月現在
詳しくはこちらをご覧ください
BWIに加盟する国内4組織による協議会です。アジア太平洋地域における各国加盟組織との連帯を強化し、また産業の持続的発展にむけてILO (国際労働機関) 等と連携し労働者の処遇や安全衛生面の改善に取り組んでいます。
<組織概要>
名 称 : BWI日本加盟組合協議会 Japanese Affiliates Council (BWIーJAC)
本 部 : 東京都千代田区霞が関1-2-1林野庁内
加盟組合 : 日建協、森林労連、UAゼンセン、全建総連
各国代表が活発に意見交換
2019年11月24日 ~ 26日にオーストラリアにてBWIアジア太平洋地域大会が開催されました。対象地域の17か国、総勢約100名が参加し、日本からはBWI-JACのメンバーである日建協、森林労連、UAゼンセン、全建総連から派遣された代表団9名が出席しました。
大会前のセミナーでは、メガ・スポーツイベントの施設建設工事にかかわる労働安全衛生の改善にむけたBWIの取り組みや、建設・林業に従事する労働者の組織化などについて、事例報告や活発な討議が行われました。そして大会では、BWIの活動方針や財務、地域委員の選挙等、11の決議事項が議決されました。加えてスポーツ、インフラ、サプライチェーン、電力をテーマに、各分野における地域の労働実態や課題解決のための政治活動についてディスカッションが行われました。
グローバルな視点で
大会参加国の多くが開発途上国でした。各国代表から児童労働や強制労働など基本的人種が守られていない状況が報告され、大変衝撃を受けました。日本企業の海外進出が進む中、ビジネスのあらゆる場面で人権を尊重することがより一層求められます。私たちは海外の諸問題に対しても当事者意識をもって課題解決に取り組むことが必要であると実感しました。
2018年平昌オリンピックにおける建設工事では、外国人労働者の賃金不払い対策として、事業主である自治体から建設技能労働者に対し 「電子決済システム」 を活用した賃金の払い込みが行われました。雇い主の建設会社は労働者の賃金管理を行わず、国や自治体が直接労働者の口座に支払うもので、賃金の不払いや低賃金労働の防止につながったそうです。
中長期的に国内建設市場が縮小すると予想されることから海外での建設受注が増加しています。作業所では様々な国籍の労働者が従事しており、海外の労働者を取り巻く問題は、私たちにとっても無関係ではありませんね。
① BWI-JACの活動の意義について、どのようにお考えですか。
世界的な潮流として様々な場面でグローバル化が進展する中、海外での紛争や貧富の格差拡大により移民労働者や出稼ぎ労働者が国境を超えて存在しています。建設業を含む日本の労働者・労働組合も国際的な視野を持ち、取り組みを進める必要があります。
② 特に注力している活動を教えてください。
BWI本部は、世界のメガスポーツイベント (オリンピック・パラリンピック、サッカーワールドカップ等) に関わり、施設建設労働者の移民労働や安全衛生の問題、違法木材の調達禁止等への取り組みを進めてきました。
BWI-JACでは、東京オリ・パラ大会について3年前から違法伐採木材の調達や施設建設労働者の安全衛生問題について、本部との連携をはかり、政府や組織委員会、東京都、日本スポーツ振興センター (JSC) 等との意見交換や、国際フォーラムの開催等を実施しています。
今後も最終段階に入っている大会の施設建設において、労働災害が発生しないよう関係機関へ安全衛生対策の申し入れ等を行い最後まで関わっていきます。
大会の 「レガシー」 として、日本国内のすべての建設作業所で従事する労働者の安全衛生の確保や処遇の改善にむけ、構成組織が連携し取り組みを進めたいと思います。
③ 日建協に期待することは
国際化の波の中で、少子高齢化や生産人口の減少が進む日本において、建設産業をどう位置づけ発展させていくのか、さまざまな課題解決にむけて日建協には大いに期待しています。またBWI-JACは、日建協と全建総連、言い換えれば、ゼネコンと技能労働者の労働組合が、一緒に取り組みを進めています。こうした関係は国内に、そうあるものではありません。元請と下請の間で生じている課題や問題の解決について、経営者とは違う視点で、取り組んでいただきたいです。
2019年4月に改正入管法が施行され外国人労働者の受け入れが拡大し、建設産業でも多くの外国人労働者が作業所で働いています。日建協は今後もBWIと連携して外国人の労働者の権利保護にむけて海外の労働事情に関する情報収集を行っていきます。