2020新春対談 日建連 山本事務総長に聞く

業界団体 産業内の連携

鈴木 : あけましておめでとうございます。日建協議長の鈴木です。新春対談として、日建連 山本事務総長に日建連の取り組みについて伺います。早速ですが、昨年は建設産業にとってどんな1年だったと感じられましたか。

 

山本 : 2019年は、建設産業にとって節目の年だったと思います。世の中から注目を集めていた東京オリンピック・パラリンピックの施設建設では、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長からも 「ここまで準備が整っている都市を見たことがない」 と賛辞をいただくなど、建設産業が期待にしっかりと応えることができました。また、数多く発生した災害にも、大手から地域の建設会社までが一緒になって、復旧・復興にむけて力を発揮しました。減災・防災、国土強靱化に対して建設産業の役割をしっかりと果たすことができたと思います。

 

鈴木 : 2019年は、建設産業が期待に応えられた年と言えますね。そういった中で、新たな年となる2020年の日建連の取り組みについてお聞かせください。

 

山本 : 2020年の二大テーマは 「働き方改革」 と 「建設キャリアアップシステム」 です。「働き方改革」 では、建設産業で働いている私たちの働き方を変えていくこと、特に休みを増やすことが重要ですし、「建設キャリアアップシステム」 は、建設産業にとって重要なインフラだと思っています。

 

鈴木 : やはり、働き方改革と建設キャリアアップシステムがポイントとなるのですね。はじめに、働き方改革の取り組みについてお伺いします。これだけ世の中が働き方改革に取り組んでいる中にあっても、建設産業は首都圏の再開発工事やリニア中央新幹線工事など多忙を極めていて、なかなか労働時間の削減は進んでいません。そういった中で、働き方改革を進めるにあたって、日建連としてどのような取り組みをされていきますか。

 

山本 : 労働基準法が改正され、2024年からは建設産業にも罰則付き時間外労働時間の上限規制が適用されることが決まっています。日建連として、真剣に労働時間の削減に取り組んでいかなければいけないと考えています。そのために、上限規制の適用に先がけて、2019年4月から時間外労働の適正化にむけた自主規制をはじめました。日建連が改善目標時間を定め、各会員企業が段階的に時間外労働時間を削減する取り組みを行っています。2024年の時間外労働時間の法規制までそれほど時間がありません。労働時間削減の要となるのは、やはり作業所の週休二日、それも土日閉所の実現ですね。

日建連 山本事務総長

 

日建連では、2017年12月に週休二日実現行動計画を策定し、作業所の土曜閉所に取り組んできました。2019年度上半期の閉所状況は、回答のあった約13,000事業所のうち4週8閉所以上は30.0%、4週6閉所以上は68.5%という結果でした。1年前と比べると10ポイント近く上昇しており、着実に閉所は進んでいます。いろいろな作業所があるので、全ての作業所で土日を閉所するのは無理ですが、やはり建設現場は土曜日も工事をしているという世の中の認識を変えていかないと、長時間労働は是正できません。

 

鈴木 : 加盟組合の企業経営者に聞くと、4週6閉所までは作業所の努力、自社の努力で何とかできそうだが、ここから7閉所、8閉所と増やしていくには、やはり発注者の理解がないと難しいとの声が多くあります。土曜閉所を進めるには、とくに民間工事の発注者の理解が必要ではないでしょうか。

 

山本 : そうですね。政府が大きな後押しをしてくれているので、官庁工事ではかなり土曜閉所が進んでいます。民間の発注者に対しては、やはり工期設定をどう考えるべきかを、しっかりと訴えていかなければいけません。また、適正な工期での契約は、発注者にもメリットがあることを訴えていく必要もあります。適正工期での契約が、建設産業の時短や土曜閉所にもつながります。このことで将来の担い手を確保でき、インフラを支える建設産業が永続することにつながり、将来にわたって発注者の要請に応えることができるようになります。昨今、コンビニの営業時間や宅配便の配達のやり方など、働き方改革にむけサービスの在り方が議論されています。建設産業も働き方改革にむけ、新しい時代の仕事のやり方を、一般社会に訴えていかなければいけません。

新・担い手3法に期待

鈴木 : 2019年に建設産業にとって大きな法律の改正がありました。新・担い手3法の改正です。この法改正の中には、民間を含むすべての発注者に対して 「著しく短い工期による請負契約の締結禁止」 が盛り込まれました。組合員からは、作業所の長時間労働是正に不可欠な、発注者による適正工期での発注への大きなアプローチになってくる、という声が多くあがっています。

 

山本 : 新・担い手3法は、建設産業のさまざまな課題について、解決策を示していると思います。「工期設定」 についても、この法改正によってメスを入れてくれました。建設産業では、過去にも 「適正な価格」 という議論はありました。ダンピングといえば 「価格のダンピング」 という議論になっていたと思います。しかし、建設産業の働き方改革を考える上では、工期が非常に大きな問題です。建設現場で職員や技能労働者にしっかりと仕事をしてもらうためには、価格だけではなく工期も適正でなければならないということが認識されてきていると思います。

 

鈴木 : 「適正な工期」 と一言で言っても、その基準が重要ではないでしょうか。

 

山本 : 確かに、何が 「適正な工期」 で、「著しく短い工期」 とはこうだ、と示す必要があります。これは、国交省の中央建設業審議会にて議論されており、日建連からも委員を出して施工者が考える適正な工期の考え方を訴えています。

 

鈴木 : 審議会には発注者側の委員も多いので、「適正な工期」 の基準作りは一筋縄ではいかないのではないですか。

 

山本 : 週休二日を前提とした工期が 「適正な工期」 となるかは、これからの議論ですね。労働基準法も週40時間労働や所定外労働時間は何処までといった規制はあるものの、週休二日でなければ法違反になるとはしていません。私たちは週休二日を前提にしていますが、週休二日と週40時間労働や所定外労働時間の上限規制と、どうバランスをとらせるか議論になると思います。多くの職員や技能労働者を集めて、交代で工事ができるのなら問題はないかもしれませんが、これだけの人手不足のなか、所定外労働時間の上限規制を守るには、週休二日にするしかないということを発注者に理解してもらわなければいけません。

追い詰められている作業所

鈴木 : 政府の2019年度 「過労死等防止対策白書」 に、重点業種として初めて建設産業が掲載されました。

 

山本 : 建設産業が白書で取り上げられ、閣議決定されたという事実を非常に重く受け止めています。白書のデータ自体は、建設産業が働き方改革に取り組む前のものとはいえ、建設産業における過労死事案が分析されていて、その大きな原因が長時間労働だとされています。特に作業所の現場監督が非常に追い詰められていることが、データとして浮き彫りになっていました。なお一層、働き方改革に取り組んでいかなければならないと決意を新たにしました。

 

日建協 鈴木議長

鈴木 : 「建設キャリアアップシステム」 について、取り組み状況を聞かせていただけますか。

 

山本 : このシステムは、技能労働者の資格や就業履歴をキャリアカードに登録し、作業所に入場する都度、カードリーダーにかざして就業履歴を蓄積するもので、技能労働者がその技能に応じた処遇を受けることができるようになります。2019年4月から本格的に稼働しています。今年からは建退共制度と電子的な連携も始まり、これによって具体的なメリットもわかりやすくなります。このシステムによって毎日多くの作業所で、どんな工事で、どんな職種や技能の人が、どのくらい働いているのかという情報が記録されてビッグデータとして蓄積されていきます。各技能労働者の就業経歴の記録に限らず、そのデータを分析することで、いろいろなことを客観的に世の中に訴えられます。今後は、データに基づいて、建設産業が発信していくということが重要だと思っています。

 

鈴木 : キャリアアップシステムの登録者はどのくらいですか。

 

山本 : 2019年11月末時点で約15万人が登録しています。登録者数は十分とは言えませんが、今後普及させていって、最初の1年間で100万人、5年で300万人の登録が目標です。高速道路のETCが、はじめ低かった普及率が、そのメリットが理解されると加速度的に広まったように、このシステムも普及していけばと考えています。

 

鈴木 : 最後に、労働組合に期待することはありますか。

 

山本 : 日建協活動によって、この建設産業を一流の産業にしていただきたいと思います。まだまだ建設産業のイメージは良くありません。建設産業はクリエイティブで、非常に魅力的な産業なのですが、未だに前近代的と言われたり3Kと言われたりしています。日建協の活動によって、建設産業の労働環境を改善し、建設産業のイメージアップをしていただくことで、優秀で、やる気のある、元気な担い手に建設産業に来てもらいたい。親御さんが安心して子どもを送りだせる産業にしていただきたいと思います。

 

鈴木 : その通りですね。長時間労働の是正や労働環境の改善は、私たち建設産業に働くものだけでなく、将来の担い手のためにも、私たち労働組合が取り組んでいかなければならないと思っています。本日はありがとうございました。

 

(一社) 日本建設業連合会 事務総長 山本徳治 氏 プロフィール

1979年 建設省 (現国土交通省) 入省

2004年 内閣府参事官 〈防災総括担当〉

2008年 水資源機構理事

2010年 河川局 (現水管理・国土保全局) 次長

2011年 日本下水道事業団副理事長

2015年 日建連常務理事

2018年 事務総長 (現職)

 

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