企業経営者へ提言、意見交換を実施しました!・・・2013年度 会社訪問

日建協では、毎年加盟組合企業を訪問し、産業政策活動への理解や時短推進活動への協力を求めるとともに、産業が抱える様々な課題について企業経営者への提言と意見交換を実施しています。今年度においても多くの企業経営者と意見交換を行いました。主な内容を紹介します。

時短推進活動

【日建協】
所定外労働時間は増加傾向、特に外勤技術系は80時間以上の割合が半数を超える。この危機的状況を労使協働で打破したい。

【経営者】
⇒書類作成に時間をとられ所定外労働時間が増加しているので、少しでも書類の簡素化を図りたい。

⇒女性と男性の目線は違う。現場で働く女性の活躍を阻害する要因は結婚・出産・育児だと考えていたが、実際は『長時間労働』だ。

⇒時短の手段として、企業内の『適正な人員配置』だけでは解決は難しい。『建設産業外からのイメージと考え方を変えていく』取り組みが必要。

⇒労使による労働時間検討会では、様々な時短施策について検討を行っている。ノー残業デーの取り組みとともに、『1時間でも早く帰ろう』と呼び掛けた結果、時短が進み一定の効果があった。

⇒社内で『休もう』という意識の醸成を実施してきた結果、所定外労働時間は平均60時間/月まで減少してきた。現在は80時間以上の所定外労働をしている職員の労働環境改善に注力している。


【日建協】
外勤技術系の土曜・祝日の休暇取得率は半数以下。長時間労働の原因の一つであり、なんとか休日取得を推進したい。

【経営者】
⇒時短が進まないのは受注産業の特徴。『土日は作業禁止』という制度を作らないと休めないのでは。一企業の取り組みだけでは改善は困難。ただし、作業所職員も『時短意識が甘い』ところはあるので、自助努力も必要であろう。

⇒統一土曜閉所運動は労使一体となって取り組んでいる。作業所長によって休める現場と休めない現場に分かれるので、『管理監督者の意識改革』に努めていく。

⇒官庁工事は4週8休を基本としているものの、実際は4週6休をベースとせざるを得ないのが現実だ。


【日建協】
組合員の約半数は建設産業に魅力を感じていない。また、20代で約4割が転職を考えている。この現状をどう思うか。

【経営者】
⇒若手組合員の多くが転職を考えているという事実は由々しき問題。要因のひとつである労働環境の改善にむけて、会社として早急に取り組んでいかなければならない。

⇒東日本大震災の復興本格化や、東京オリンピック関連工事の増加に伴い、今後ますます若手組合員の力が必要となる。単に多忙を理由として離職させてしまうことの無いよう、全力で建設産業の魅力を若い世代へ伝えていかなければならない。私たち経営者としての果たすべき役割は大きい。

⇒組合と私たち経営者、立場が異なっていてもめざすベきところは同じ。今後も、労使共に協力して、建設産業の魅力化にむけて取り組んでいきたい。

中期時短方針2013の詳細はこちらをご覧ください

 

産業の魅力向上にむけた活動

【日建協】
女性技術者について、どのように考えているか。

【経営者】
⇒入職させるだけでなく、離職させないことも会社の責務だ。男女問わず『正当かつ公平な評価』が重要。

⇒女性技術者の活躍は、非常に重要。日建協の女性技術者会議は、他の会社との交流機会であり、良い活動だ。

⇒今後の建設産業の魅力向上のために、女性技術者が増えて、管理職、さらには経営者の立場で活躍して欲しい。


【日建協】
次世代を担うより多くの学生たちに建設産業の魅力を伝えるため、出前講座を実施している。

【経営者】
⇒建設産業とはどういうものかを具体的に正しく伝える必要がある。実際に携わっている人の声は重みと説得力がある。

⇒建設現場のマネジメントは難しい仕事だが、やりがいも大きい。そのような魅力を若い世代に理解してもらいたい。

⇒ゼネコン志望が少ないのは、採用する側が魅力を伝える機会が不足しているからであり、反省しないといけない。

 

産業政策活動 ~土 木~

【日建協】
総合評価落札方式の見直しについては、受注者の労働環境をきびしくする仕組みを改めるよう国交省へ提言した。

【経営者】
⇒履行確認は、品質確保の観点から必要なのはわかるが、少し過剰だ。

⇒制度の改定をしているが、受注者側の理想とする状態ではない。これからも改善にむけ言い続けていく。


【日建協】
現場条件に変更が生じた場合は各種施策に沿って協議をしているとのことだが実際はどうか。

【経営者】
⇒工事中止がかかり工期が延伸されるようになったが、追加費用は実態に合っていないことが多い。

⇒用地の問題ですぐに着工できないことがあり、結果的に土日の休みがない工程を余儀なくされることがある。


 【日建協】
国交省の施工円滑化にむけた各種施策の運用状況をどのようにみているか。

【経営者】
⇒国交省直轄工事では工夫が感じられ、三者会議や設計変更審査会は有意義だ。

⇒国交省が前例を示し、他の発注者においても改善が図られることを望む。


【日建協】
片務性の解消については、国交省も対応を進めている。受注者として現状を正確に伝えることが重要だ。

【経営者】
⇒契約内容の中で、リスク分担を明確にすることが必要。会社としても認識を再確認し、周知徹底する。

⇒監督員の個人的な感情で結果が違うなど、人によって差がでることはあってはならない。

土木(公共)提言の詳細はこちらをご覧ください

 

産業政策活動 ~建 築~

【日建協】
建築(民間)提言活動全般について意見を伺いたい。

【経営者】
⇒民間契約約款では工期遅延について違約金条項があるなど厳しく縛られている。約款改定にむけた動きは重要だ。

⇒近年の天候不順を勘案すると、作業不能日に着目すること(日建協標準工期の考え方)は、非常に有効。

⇒『適正な工期』について考える機運は確実に高まっている。これまでの行政や業界団体へのアピールは効果が出ている。日建協の独自データを元に、広く産業内外へ発信して『適正な工期』の概念を広げていって欲しい。


【日建協】
『適正な工期』での受発注、4週8休の実現にむけて必要なことは。

【経営者】
⇒行政発注工事には一定のルールがあるが、民間工事には規制が無く、工期が受注の競争条件になっていることが問題。『不適切な工期で受注した会社は免許取り消し』などの明確なルールが必要だ。

⇒技能労働者は日給制が多く、閉所日が増えると直接収入減につながる。社会保険整備を含め協力会社などの給与形態を変えていく動きが必要なのでは。

⇒企業として『適正な工期』での受注に努めると同様に、『適正な人員配置』も考えていかねばならない。

⇒国交省以外の行政機関や、ディベロッパーなどの認識を変える働きかけも必要ではないか。

⇒発注者と受注者の行司役である設計事務所にも認識を持ってもらうことが重要。

建築(民間)提言の詳細はこちらをご覧ください

 

会社訪問を終えて

建設産業を魅力あるものにしなければならないという切実な思いは、企業経営者も同じであり、産業別労働組合である日建協の活動に対する期待と協力姿勢を強く実感することができました。私たち日建協は、会社訪問を通じて得られた貴重なご意見を参考とし、労働環境の改善にむけてあらゆる活動を充実させていきます。