時短特集:私たちの使える時間について考えてみよう
自分の人生であとどれくらいの時間が使えるのか、皆さんは考えたことがありますか? きっと日々の仕事に追われ、そんなことを考える余裕はないのではないでしょうか。
人にとって時間は無限ではありません。また、必ずしも時間を思い通りに使えるわけではありません。自分に残された時間を有意義に使うためにも、この機会にじっくりと時間の使い方について考えてみましょう。
自分に残された時間がどのくらいあるのか、そしてその時間をどのように使っていくのか。もちろん人それぞれのライフスタイルがあるので、人によって時間の使い方は異なります。ここでは、日建協の組合員の平均的なライフスタイルをモデルに人生の残りの時間について分析します。
日建協が行った時短アンケートから男性を例に、年齢別に定年までの残りの時間、そしてその時間の使い方について試算しました(図1)。これによると、例えば組合員35歳の場合、定年までに約220,000時間すべてを仕事や生活その他に充てることができます。
また、厚生労働省の資料(図2)によると35歳男性の平均余命はおよそ46年です。毎日約6時間の睡眠を除くと、残りの人生のうち起きて生活している時間は約302,000時間となります。
しかし、その全ての時間は思い通り自由に使えるわけではありません。身支度、通勤、食事、睡眠など、日常生活を送るためにどうしても必要な時間が存在します。今のままで満足せず、自由に使える時間をもっと増やしたいと思いませんか?
私たちが使える時間は限られていますが、時間を増やす前に大切なのは、この時間を減らさないことです。
時間を減らしてしまう要因の一つには『病気』があげられます。病気になると、治療のために通院が必要になり、症状が重ければ長期間の入院を余儀なくされます。
厚生労働省の調査によると病気の平均入院期間は
脳血管疾患93日、糖尿病36日、心疾患22日、がん20日 となっています。もちろん症状が重ければ、もっと長い入院生活を送ることになります。
がん・糖尿病・心臓病などの病気は、普段の生活習慣が発症や進行に大きくかかわることから生活習慣病と呼ばれています。通院や入院にとどまらず生活習慣病は現代人の死因の6割にあたるとされており、注意が必要です。 大事な時間を減らさないためにも、まずは病気の予防が欠かせません。右の「生活習慣病を防ぐ9カ条」を参考に、日常生活から改善するように心がけましょう。
コラム①
新鮮な経験がゆったりとした時間感覚をもたらす
最近「もう1週間過ぎてしまった」「1年はあっという間だった」と時の流れを早く感じたという経験はありませんか?
年齢を重ねるにつれて、時間の経過がだんだん早く感じられるようになるという感覚を説明したのが「ジャネーの法則」です。これは、「人が感じる時間の長さは、自分の年齢に反比例する」というものです。例えば、5歳の人にとっては1年の長さは人生の5分の1に相当しますが、50歳の人にとっては人生の50分の1に過ぎないということです。つまり、時間の感じ方というのは、年齢によってそれぞれ違ってくるということです。
また「ジャネーの法則」では、時間の感じ方は経験の数に左右されるとしています。これによると、新しい経験を多くする若い人ほど時間を長く感じ、一方で年齢により経験を多く積んだ人ほど生活に新鮮味を失い、時間を短く感じることになります。子供のころには小さな体験でも心に深く残り、それに関わっている時には時間が長く感じられます。
逆に大人になると新しい経験に出会ったことの感動が減り、時間が短く感じるようになるようです。 いくつになっても、新鮮な経験をすることでゆったりとした時間の流れを感じてみてはいかがで しょうか。
時間には限りがあるので、これ以上増やせないと思っていませんか?
いいえ、自由に使える時間はちょっとした工夫によって生み出すことができます。ここではその方法について事例をもとに紹介します。
① 身支度の時間
社会人として身だしなみは非常に大事です。
日建協のアンケートによると組合員は平均1日50分程度、身支度に時間を使っています。
改善ポイント! 身支度にかける時間を効率化。40分で行うことで毎日10分の時間をつくります。
効 果! 10分/日×365日=3,650分=61時間/年
少しの改善で年間61時間の時間をつくりだすことができました。
② 喫煙の時間
喫煙は、人とのコミュニケーションを図るため、自身の気分転換を図るためにも必要と考える人も多いでしょう。
改善ポイント! ここは健康のことも考え禁煙。
効 果! 1本あたり5分、1日20本を喫煙している人が禁煙すると仮定。
5分/本×20本/日×365日=36,500分=608時間/年
年間608時間も増やすことができます。
病気にかかるリスクも軽減することができて一石二鳥 !?
③ 迷いの時間
私たちは、日常生活において色々と迷い、その解決のために時間を使っています。例えば、本を買う場合に30分悩むケース。
改善ポイント! 選ぶ時間を10分だけ短縮し、20分にします。
効 果! 10分/冊×365日=3,650分=61時間/年
さらに増えた時間を購入した本の読書に充てることができます。
ただし、本を選んでいる時間が楽しいという人は、その時間を是非楽しんでください。
迷ったり悩んだりしている問題を早く解決することができれば、もっと時間をつくりだすことができます。
自分ひとりで解決できない悩みは、時間がもったいないと割り切って、職場の上司や先輩に相談してみるのも一手です。
④ 会議の時間
ある研究機関による調査によると、一般の企業で全体業務に占める会議の割合は15%とのことです。
改善ポイント! 会議にかける時間を50%短縮します。
効 果! 8時間×20日×12カ月×15%×50%=144時間/年
(所定内労働時間1日に8時間、月に20日働いたと仮定)
一概に長い会議を否定することはできませんが、短縮した時間を他の業務に充当することができれば、職場の生産性向上につながるかもしれません。
コラム②
『鳴かぬなら・・・』
昔むかしのこと。全く鳴こうとしないホトトギスを囲んで、3人の武将が何やら話しこんでいます。
信長 『え~い、ワシには時間がないんじゃ。時間を無駄にはできぬ。亡き者にしてしまえ。鳥の代わりなどいくらでもおるわ』
秀吉 『あいかわらずお気が短い。時間を有意義に使い、鳴かせてみようではありませんか。あれやこれやと思いをめぐらし、考えるのもなかなか一興ですぞ』
家康 『ものごとがうまく進むためには、何事にも時間が必要でござる。書物でも読みながら機が熟すのを待つことにしましょう』
これらの有名な言葉は、信長の強引さ、秀吉の積極性、家康の忍耐強さという3人の性格を表したものですが、一方で3人の時間に対する考え方の違いも感じられませんか? 自分に残された時間を意識した上で何事にもムダを排し、合理性を追求した信長。目的を達成するために時間を使って策を講じ、そしてその考えている時間さえ楽しむことができる秀吉。時間や時代の流れを敏感に感じ、動くべき時にはしっかりと動き、止まるべきところでは止まって、悠々として時を過ごせる家康。 このように、私たちも一人ひとり、時間に対する感じ方や考え方は違って当然です。とはいえ、せっかくですから、限りある時間を有効に使い充実した人生を送りたいものです。やはり『TIME IS MONEY』 誰にとっても時間は大事ですね。
最後に最も大切な・・・
⑤ 残業時間(所定外労働時間)
組合員の所定外労働時間の現状をみてみます(図4)。(時間はすべて月あたり、以下同じ)
日建協アンケートによると、所定外労働時間は平均63.1時間、特に外勤者は83.7時間となっています。所定外労働時間はここ数年ほぼ同様の数値を示し、長時間労働が常態化している現状がうかがえます。また、外勤者の内訳をみると、平日が50.6時間、休日が33.1時間となっており、休日取得だけでなく平日もなるべく早く帰宅し、所定外労働時間を減らしていきたいものです。
次に、所定外労働時間別の時間の使い方をグラフにしました(図5)。100時間の過重労働、日建協平均の63.1時間、日建協目標の45時間、他産業平均(連合)20時間の4パターンで比較してみました。結果は・・・
今回、所定外労働時間の削減に対し、その具体的な「改善ポイント」は示しませんでしたが、各職場に合った様々な方法で改善に取り組んでほしいと思います。
日建協では、所定外労働時間の削減のために「適正工期の必要性」を各所に訴えるなど、建設産業の構造的な問題の解決に取り組んでいます。また、職場で時短に取り組めるような活動も積極的に展開しています。その一環として左のような時短グッズも用意しています。ぜひ利用してください。
一生で、私たちの使える時間は限られています。与えられた時間をどのように使うのかは重要な問題です。ただ漠然と時間を消化するだけなのか、時間を作りながら上手に生きるのか。その結果は大きく異なります。せっかく持っている自分が使える時間を減らさないために、そして少しでも使える時間を増やすためにも、日頃から意識してみてはいかがでしょうか。天命を全うする瞬間に「良い人生だった。いろいろなことができた。もう十分だ。」 そう思えるような人生を送りたいですね。
これからの時間を有意義に使うためにも、残された時間について皆さんもゆっくり考えてみてください。