知って役立つ「労働法」の基礎知識

法律

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10-2_book皆さん「労働法」って知ってますか。「聞いたことはあるけど中身まではよく知らない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし労働法は、雇用、賃金、労働時間、それから労働組合に関することなど、働く私たちの権利を守る非常に重要な法律です。今回は、その知っていそうでよく知らない労働法について、専門家の先生に事例を交えながら分かり易く説明していただきます。この機会をつうじ、日頃敬遠しがちな法律について少しでも身近に感じ、職場環境の改善に役立ててみませんか。

労働法のはじまりと目的

10-3_Dr.law_1労働法を学ぶ前に「労働法という名の法律はない」ということをまず理解しておいて欲しい。労働法は、「労働基準法」「労働関係調整法」「労働組合法」など数々の労働に関する法律の総称であり、日本国憲法第27、28条に記された労働者の基本的な権利を実現することをその目的としている。1802年にイギリスで成立した「工場法」がはじまりと言われ、日本ではこれに約100年遅れ、1911年に工場で働く女性や年少者の就業制限や安全衛生に関する規定が定められた「工場法」が現在の労働基準法の起源である。

労働法の役割

次に労働法の役割について説明する。労働問題については後の弁護士に任せるとして、今回は労働法を構成する数々の法制群の中から、労働三法と呼ばれる代表的な3つの法律(労働基準法・労働関係調整法・労働組合法)について説明する。

 

労働基準法は


10-3_Dr.law最低限必要な労働条件を定め、立場の弱い労働者の保護を図ることを目的としている。例えば、労働時間は、「1日8時間、1週40時間まで」と規定されており、この時間を超える労働契約を締結した場合、該当部分は無効となる。職場でよく耳にする36協定は、同法第36条(時間外及び休日の労働)からきている。

 

労働組合法は


 

使用者に対して弱い立場にある労働者が、労働組合をつくることによってその団結力をもって使用者と対等の立場に立ち、労働条件の維持・向上のために団体交渉などの活動を行う権利を守ることを目的としている。労働組合として認められる要件、使用者側に対する不当労働行為の禁止など、労働組合の組織・運営に係る事項のほか、労使間での労働協約や労働委員会などについても定められており、労働者の権利を下支えしている。

 

労働関係調整法は


 

労働争議を予防または解決することを目的としている。労働争議について、その自主的な解決を原則として、行政機関である労働委員会による調整方法として「斡旋」「調停」「仲裁」「緊急調整」の4種を定めており、また争議行為の禁止・制限などを規定している。

 

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全国に支社を持つA建設は、午前9時から午後6時を所定労働時間と設定している。先日、営業職のX氏は、地方出張のため朝6時に自宅を出て10時から行われる会議に出席した。その後現地で一泊し、翌日の土曜日に帰宅した。A建設では土曜日は休日と定められているが、この場合、残業代・休日時間外手当はもらえるのか。


 

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Y氏は大手飲食店が経営する喫茶店で店長をしている。店長としてパート社員の採用権限や労務指揮権限を有しており、また材料の仕入れ、メニューの決定についても一部ではあるが権限がある。しかし、欠勤・早退・私用による外出については、本部の社員に連絡をしており、営業日に勝手に店を閉めることは許されていない。また、営業時間についても若干変えることは許されているものの、大幅に変更することは認められていない。さてY氏は残業代を貰うことができるのか。


 

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今回は、労働者の基本的な権利を守る労働法の目的と役割について事例を交えながら紹介してきました。少しはみなさんのお役に立つことができたでしょうか。労働法は、私たちの労働環境をより良いものにしていくためには切っても切り離せない法律です。自分自身が働く上で何が大切なのか、もう一度考えるためにも興味を持ってもらえれば幸いです。

最後にメディアでも度々取り上げられている労働法の改正にむけた最新の動きについて紹介します。私たちの労働環境にも影響を及ぼしかねない重要な内容が議論されています。今後の動きにも注目してください。

 

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昨年6月、「日本再興戦略(改訂2014)」に、雇用制度改革の一環として、「多様な社員制度の普及・拡大」や「フレックスタイム制度の見直し」に加えて、健康確保や仕事と生活の調和を図りつつ、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する働き手のニーズに応える、「新たな労働時間制度」が創設され、現在国の委員会で白熱した議論が展開されています。

では、掲げられた4つの施策について、2つの視点から見てみます。

 

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現在メディアでは、右図 ②~④ の労働規制緩和の話題が中心として報じられていますが、その上段には「① 働き過ぎ防止のための取り組み強化」が掲げられています。しかしこちらに関しては、「朝型の働き方の普及」「労働基準監督署による監督指導の徹底」など議論されてはいるものの、何をどのように監督指導するのかなど具体的な方策は未だ見えてきません。私たちが働く建設産業においても長時間労働解消は最優先の課題です。働き方改革を行う場合、まずは働き過ぎ防止にむけ、より具体的な取り組みを徹底的に進めることが先決です。

連合をはじめ労働者側の代表も、「長時間労働の抑制策こそ先にあるべき」と強く主張しています。

 

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現在の労働基準法では、1日の労働時間を原則8時間、1週間の労働時間を40時間と定めており、残業や休日・深夜の労働には企業が割増賃金を払うこととしています。また、その場合労使間で36協定を結ぶことを義務付けています。議論されている「時間ではなく成果で評価される仕組み(ホワイトカラーエグゼンプション)」とは、この法定労働時間規制そのものを取り払うものであり、いくら働いても残業代がゼロとなる制度です。現在の労働基準法で労働時間規制が定められた趣旨は、労働者の健康確保にあります。社会で過労死が問題となっている中、政府には、もう一度労働基準法の趣旨を真摯に受け止め、長時間労働対策に全力を注いで欲しいと思います。

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