建築作業所における4週8休の実現にむけて ~誰もが働きたいと思える建設産業をめざして~

民間工事 4週8休

4-5-01title日建協では、作業所全般の労働環境改善にむけて、作業所で働く組合員の長時間労働を中心とした諸課題の解決をめざして、提言活動を実施しています。 土木提言に引き続き、建築提言についてお伝えします。
2015年3月から5月にかけての国土交通省官庁営繕部、不動産協会、設計者団体、業界団体に対して行った提言の内容と主な回答をご報告します。

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2014年、担い手三法が改正された。改正内容は、公共工事の品質が将来にわたり確保されるよう、それに携わる「担い手」を確保・育成することを目指していることから、実行を伴えば、働く者の労働負荷軽減につながる。現在建設産業では様々な施策が実行されているが、真の意味での実現にむけては、民間発注者との理念共有が不可欠である。

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◆ 九州地方整備局(営繕)

「発注者インセンティブへの取り組み」 について、試行工事をもとに、どんなインセンティブを付与した方が良いか今後検討する。また、第三者機関による工期算定についても、建築確認申請時に、適正な工期という観点から審査していく。

◆ 日本建設業連合会

民間工事においては発注者の理解に尽きる。まず土木でモデル工事を展開し、建築では今後協議をしていくということになるのではないか。

 

建設プロジェクト運営方式協議会

設立総会の模様 会長は椎名武雄 日本IBM名誉相談役

設立総会の模様
会長は椎名武雄 日本IBM名誉相談役

同協議会は2015年5月、新たな発注方式の推進をめざし、官民の発注者が主体となって設立されました。学識経験者やコンサルタントが発起人となり、設計事務所、ゼネコン、サブコン、法律事務所をはじめ、国土交通省や公共発注者などが会員となっています。民間の建設事業における発注方式の選択肢を増やし、建設投資・施設性能の最適化をつうじて産業競争力を強化するとともに、建設業の競争力・マネジメント能力を高め、多様な建設プロジェクト運営方式の発展とそれを担う人材の育成を目的としています。事業計画骨子(案)には、標準契約の策定も含まれています。

 

日建協は、調査委員会にオブザーバーとして参加し、建設産業が現状抱えている課題を把握するとともに、働くものの立場から、作業所における4週8休の実現にむけ意見発信していきます。

 

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管理工程表の活用による四者(発注者・設計者・監理者・施工者)の情報共有化、余裕工期での発注・発注時期・納期・施工時期の平準化が必要である。また、工事工程は日建協標準工期で契約すべき。工程算出にあたっては、施工者に施工条件や設計図書の完成度、資機材の調達、労務確保の状況などを実情に即し総合的に勘案させた上で算出させるべき。
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◆ 不動産協会

不動産市況が横這いから上がり基調で、「少しでも早く完成させて売りたい」 という切迫感がなくなってきたので、建設産業の理解を得やすい状況になってきた。

◆ 日本建築家協会

設計者が施工を理解できておらず、正しいコスト、工期が算定できないので、現状では後工程でその訂正に時間を取られている。

◆ 日本建設業連合会

発注者の理解を得ることはもちろんだが、受注者の意識も重要である。金額も工期もダンピングしてはならない。自らの襟を正さなければならない。

 

日本建設業連合会 「適正工期算定プログラム」

日本建設業連合会は、2015年度末までに国土交通省の 「公共建築工事における工期算定の基本的考え方」 をベースにした 「適正工期算定プログラム」 を作成すると発表しました。会員各社のデータを基に、標準的な工事歩掛りによる8時間作業を原則とした休日を取得できる工期を算出するプログラムを目指しています。
日建協は、2012年より稼動日と不稼動日を明確にした 「日建協標準工期」 を用いて、施工者の考える適正工期を提言してきました。適正工期の見える化が公共工事のみならず民間工事にも広まれば、4週8休の実現への大きな一歩になると期待しています。

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国土交通省では、担い手三法の理念実現にむけて4週8休取得モデル工事の取り組みが進められている。働く者への配慮は、必ず、社会貢献に寄与する企業として発注者のブランド力向上にもつながると考える。民間工事においても注目度の高いプロジェクトをモデル工事に選定いただき、企業価値向上に利用していただきたい。
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◆ 不動産協会

不動産産業と建設産業は運命共同体である。建設産業がなければ建物を建ててもらえない。建設産業の健全な発展が必要である。

日本建築家協会

◆ 日本建築家協会

資本主義社会であり、発注者から生産性向上や工期短縮の要請がなくなることはない。その上でどのような対策を取っていくか考えなければならない。技術の進歩で工期は短くなるが、働いている人の労働環境は悪化しやすいので、注意が必要である。

◆ 日本建設業連合会

日建連の体質も変えていかなくてはならない。理事会で 「労働環境改善に異議なし」 と決議しても、自社に戻れば 「利益重視」 ではだめである。

 

独自の4週8休モデル工事の取り組みへ

各地方整備局では、土木直轄工事で週休2日モデル工事の試行が始まっています。関東地整でも2015年度より順次試行が開始されていますが、契約済工事でも受発注者協議によりモデル工事への移行を認めており、「結果的に週休2日できなくても罰則は課さない」 と受注企業へ積極的な参加を促しています。

 

日建協が9月から11月にかけて実施した加盟組合会社訪問でも、経営陣から 「週休2日もしくは4週8休モデル工事に取り組みたい」 という積極的な発言が聞かれるようになりました。

 

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国土交通省では、施工の円滑化を目的として 「設計照査ガイドライン」 「工事一時中止ガイドライン」 「設計変更ガイドライン」 など、様々な施策を打ち出している。円滑に工事が進むことは、発注者を含め事業に携わるもの全ての切実な願いである。国内事業の6割を占める民間事業においても、施策理念を共有し、施工円滑化を進めることが重要である。

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◆ 国土交通省官庁営繕部

4-5-14eizen 公共工事における適正工期の考え方や各種ガイドラインを周知し、その運用についても引き続き注視していく。

◆ 国土交通省官庁営繕部

例えばコンビニなどは仕様が一定化できるので随契も成立し得るだろうし、マンションであればデベロッパーによる数社ゼネコンでの競争など、公共建築工事とは施工業者の選定方法が異なる。土木のように民間でも一般競争入札が行われていれば、官庁営繕部としても指導しやすくなる。

 

 公共建築工事全体への普及

国土交通省は 「公共建築工事における工期算定の基本的考え方」 をHPを通じて公開し、公共建築工事全体へ普及させる姿勢を打ち出しました。

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日建協では、国土交通省官庁営繕部に対し、品確法の理念を全国の発注者の現場監督員に浸透させ、施工円滑化に向けた施策を確実に運用するよう求めるとともに、民間事業へも波及させるよう、引き続き提言していきます。

 

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後工程にしわ寄せがいく現行の生産システムに対し、四者が協力体制を築き、上流工程で諸課題を解決していけるような建設生産システムの構築と、その普及促進が必要である。

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◆ 不動産協会

6-7-18fudousan 生産性の向上は不動産産業にとっても建設産業にとってもまさにWin-Winである。実施設計の早期確定については、発注者がどこまで許容できるか。マーケットは日々動いているので、「デベロッパーが建築計画の判断を行うタイミングは遅くできればできるほど良い」 という面もある。

◆ 日本建築家協会

民間発注者、特にデベロッパーの工事が厳しいのは当然である。彼らは販売時期や稼働時期が遅れれば売上に大きく影響する。設計者が発注者に対し、コストと工期についてしっかり説明しなければならない。

 

公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン

同ガイドラインは、改正品確法で 「発注者は、その発注に係る公共工事の性格、地域の実情等に応じ、この節に定める方式その他の多様な方法の中から適切な方法を選択し、又はこれらの組合せによることができる」 と新たに規定されたことを受け、発注者による適切な入札契約方式の選択が可能となるよう、多様な入札契約方式を体系的に整理し、その導入・活用をはかることを目的として、2015年5月に国土交通省により作成されました。

ガイドラインは本編と事例集から構成され、本編では選択時期、全体像、考慮事項など選択にあたっての基本的考え方が解説され、事例集では各方式の活用事例について適用の背景や効果から検索できるように整理されています。

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今後、発注者の技術者不足がますます顕著になる中、多様な発注方式の採用が見込まれます。日建協では、引き続き発注方式の動向に注目していきます。

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次世代の担い手たちに建設産業の社会的役割を伝える機会の創出や、広報機会の拡大、注目度の高いプロジェクトでの建設産業のイメージアップ、地域社会へのPR協力などが必要である。

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◆ 不動産協会

不動産産業と建設産業が協働してできることは連携したPRである。機会があれば協働していければよい。

6-7-22nikkenren◆ 日本建設業連合会

人材が不足すると必然的に近代化は進むが、建設産業は簡単に人を少なくできる産業ではない。人材を確保しながらいかに近代化をはかっていくか、そのマッチングが重要になる。

 

 

文部科学省 「土曜学習応援団」 の取り組み

文部科学省では2014年度より、子供たちが社会を生き抜く力を培えるよう土曜日ならではのプログラムを実践し、学校における授業や地域における多様な学習や体験活動の機会の充実をはかることを目的に、様々な企業・団体・大学等 に「土曜学習応援団」 への参画を呼びかけています。

 

日建協では、「幼少期にものづくりの魅力に触れることが重要」 と考え、「土曜学習応援団」の取り組みに賛同する形で、2015年度より小学生を対象とした出前講座に取り組んでいます。埼玉県の久喜東小学校で開催した講座では、子供たちにストローハウスの設計・施工に取り組んでもらいました。会場では 「自分でやってみて、強い建物の仕組みが分かり面白かった」 「設計をしているお父さんの仕事がこんな大変だったと分かって、お父さんをすごいと思った」 という小学生や、「建設業が身近に感じられた」 という保護者の声が聞かれました。
日建協では今後も、出前講座開催のみならず、「子供たちに建設の仕事を伝える取り組み」 を行い、産業の魅力向上に取り組んでいきます。

 

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担い手確保・育成のためには、作業所における4週8休の実現にむけ、建設産業に関わる関係者が協力して、技能労働者の処遇改善を推進することが必要である。

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◆ 全国建設業協会

6-7-25zenken 技能労働者の確保には 「賃金アップ」 「週休2日」 「社会保険加入」 の3つが必要である。二次、三次の協力会社については、いまだ社会保険料も払えないところもある。地方の協会長が4週8休に踏み切れないのは、日給月給の技能労働者がどれだけついてこれるかを危惧しているからだ。「不稼働日分をいかに設計労務単価に反映させるか」 を、政策的に決めなければならない。

 

就労履歴管理システム

国土交通省は、今年の8月に 「就労履歴管理システム構築にむけた官民コンソーシアム」 を立ち上げました。今年度内に中間まとめを発表、2016年度前半に全体設計、同年度後半の試行運用を経て、2017年度の本格運用を視野に入れているとのことです。建設技能労働者一人ひとりの就労履歴をシステム上に蓄積し、技能と経験を 「見える化」 することで、働き手の処遇改善につなげるシステムの構築にむけて、今後議論が本格化していきます。外国でも様々な取り組みが行われています。イギリスでは、CSCSカード(建設技能認証制度)が1995年から運用されています。

 

<CSCSカード(イギリス)>

● 2014年末時点で190万人が保有、受験時に運転免許証等の本人確認を実施
● 資格取得には国家資格を有しているか安全衛生試験受験が必須
● 再試験、更新期間は3~5年、カード発行、更新費用は約9,000円
● 資格、技能レベルにより13種類にランク付
● カード保持の法的義務はないが、多くの発注者や建設会社がカードを持ってない人の現場入場を認めていない
● イギリスは諸外国に比べ建設業の死亡災害発生率が低い
● ICチップ内蔵で、資格情報管理、入退場管理、社員教育管理等、給与支払いのための労働時間管理等が可能
6-7-26cscs● 現場従事者は必要な資格・訓練の有無を簡単に証明できる
● 企業側にとっては不適切な人の現場入場や作業従事を防止でき、労働者の資格確認やデータ入力手間軽減が可能に

 

就労履歴管理システムの構築により、技能労働者、下請、元請、行政それぞれのメリットが期待されています。技能労働者の処遇改善はもちろんですが、元請も、社会保険加入状況確認や技能労働者の適正な能力評価、効率的な人材配置や労務安全管理、建設作業所のセキュリティ確保(不審者の侵入防止)などの効果が見込まれます。
日建協では、技能労働者の処遇改善が作業所の労働環境改善につながると考え、就労履歴管理システムの動向について引き続き注視していきます。

 

CM(コンストラクション・マネジメント)について

6-7-27zu国土交通省では、地方自治体などの公共工事発注者に対し、CMの活用促進のため、同省初の事例集を作成すると発表しました。公共工事の他、導入が進んでいる民間工事を対象にCMの先行事例を収集し、導入効果をコストやスケジュール、品質の観点で体系的に整理し、2015年度末までにまとめるとのことです。改正品確法では、発注関係事務を適切に実施することが困難な公共工事発注者は、CMr(コンストラクションマネージャー)など「発注関係事務を行うことができる者」の能力を活用するよう求められており、運用指針でも、CM方式が多様な入札契約方式の一つとして位置付けられています。

 

今後、CM方式の採用が増えていく中、施工を理解するCMrのニーズがますます増加していくものと思われます。日建協では、日本CM協会等での交流の場を通じ、CM方式の情報収集に努めるとともに、働くものの声を意見発信していきます。

おわりに

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日建協「標準工期」推進マスコット テキセイインコ

今号では、昨年度の建築提言と、建設産業の周辺情報についてまとめました。国土交通省が担い手確保にむけて様々な施策を打ち出す中、業界団体も呼応して、産業全体がこれまでにないようなスピードで変わり始めています。
これまであまり活発ではなかった民間建築においても、建設プロジェクト運営方式協議会に多くの民間発注者が参加して討議が始まるなど、改正品確法の民間波及の動きを感じることができます。

日建協でも、昨年度は不動産協会と提言書を用いた意見交換を実現しました。

今年度は、こうした産業全体の改善にむけた流れを踏まえ、作業所アンケート等で抽出した働くものの声をもとに、国土交通省や発注者、設計者団体等に対し、作業所の適正工期実現、そして4週8休の実現を訴えていきます。

引き続き、日建協の政策提言へのご協力をお願いします。

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