4週8休 チャレンジ作業所訪問記
日建協では時短推進にむけた取り組みの一環として、4週8休にチャレンジしている作業所を訪問し、好事例の紹介や課題の抽出を行っています。今回は3つの作業所を紹介します。
PART.1では国土交通省中部地方整備局の紹介により静岡県内の作業所を訪問しました。中部地整では 「建設産業の担い手が、長く安心して働くことができる職場環境を作るための取り組みのひとつ」 として完全週休2日制工事の試行を進めています。今回は発注者である富士砂防事務所と施工会社の方にお話を伺いました。竣工直前であったため、ある程度課題が洗い出された状態での訪問でした。
従来通りの工期設定で週休2日を実現するために行ったこと
・ 裏打ちグラウト注入日やコンクリート打設日を細かく設定し、それをマイルストーンにして工程管理を行った
・ 施工機械の選定を工夫した
・ 協力会社との契約の際、週休2日制工事であることを説明した上で作業員に早出残業をしてもらった
・ 作業員に試行工事の趣旨を理解してもらうため 「現場新聞」 を掲示し理解を求めた。土曜閉所の動きやキャリアアップシステム、建設業の担い手確保などについて掲載
週休2日制を実施したメリット
◎ 仕事とプライベートにメリハリが持て、家族と過ごす時間が増えた
◎ 土日の出勤が無くなったので、その分集中して業務に従事できた
◎ 2日連続の予定された休日を確保できることにより休暇の予定を立てやすくなった
週休2日制を実施したデメリット
・ 施工会社職員の休日出勤手当が減り、手取り収入が減った
・ 協力会社と従来の単価で契約できなかった
PART.2では戸田建設職員組合の紹介により、東京都内の民間工事での取り組みを紹介します。特に発注者や会社からのモデル指定ではありませんが、作業所自らの取り組みで代休取得による4週8休を実施しています。また、休みだけではなく時短推進活動にも積極的に取り組まれているので、併せて紹介します。今回は作業所に常駐されている東京支店建築工事部森田部長にお話を伺いました。
週休2日の実現・時短推進のために
・ 同工種を担当するチームを組織し、休暇の予定を調整
・ 3ヶ月先までの 「社員休暇予定表」 を作成
・ 毎日10時から職員打合せによる情報の共有化
・ 円滑な引き継ぎのため、所内での風通しの良さを醸成
・ ToDoリストの共有
・ 残業時間管理ボードによる早期退勤の促進
・ iPadの活用
所内の風通しを良くするために
・ 毎月イベントを企画
(当該月の合同誕生日会、焼き肉パーティー、節分豆まきetc.)
・ 上記のイベント時に流す動画を作成
(自動ムービー作成機能を利用)
・ 「声のかけ愛」 活動
4週8休を実施したメリット
◎ 資格取得のための勉強時間の確保ができた
◎ 休むためにどうしたらいいのか、社員個々人が創意工夫するようになった
思 い
・ 休むのが当たり前という風土を醸成したい
・ 休む → 生産性UP → 業績UPという好循環を生み出したい
・ 産業全体の魅力化へ動きを作業所からも発信し、優秀な人材の確保につなげたい
最後は淺沼組職員組合の紹介による、大阪府発注の橋梁下部工事作業所での取り組みです。本作業所では、工期前半から 「4週8休」 に取り組みましたが、工期半ばから 「土日祝日閉所」 にチャレンジしています。現場代理人の近藤さんをはじめとした6人の所員全員にお話を伺うことができました。
4週8休実現のための工夫
・ 土曜出勤した社員は原則、月曜日に振替休日とする
・ 「引継ノート」 に伝達事項を記載
・ とくに施工管理が難しい複雑な作業を、出勤者が少ない土曜日と月曜日には実施しない
・ (甘くなりがちな) 工期当初で計画をきちんと練る
・ 休暇予定表の作成
・ 工期短縮につながる工法を積極的に採用
4週8休を実施したメリット
◎ 土曜出勤した週であっても、日曜日に全力で家族サービスして月曜日に体を休めるというサイクルができた
◎ 平日の勤務が充実する
4週8休から4週8閉所へ、実現のための+α
・ 元請けの閉所に向けた強い意志
・ 発注者の協力 (適正な工期設定)
・ 協力会社との閉所を盛り込んだ契約
・ 土日祝日ありきの工程をやめる、「土日に逃げない」
・ 施工計画段階での土日祝日の原則完全閉所を掲げ、関係者と共通認識を図る
・ 技能労働者の給与体系の改善 「日給月給から月給制へ」
訪問させていただいた作業所の方それぞれに、4週8休にむけた強い意志を感じました。この記事を読まれて、「たまたま余裕があったのでは?」 と思われる方もいらっしゃると思います。しかしながら、4週8休の実現には 「産業の魅力向上」 という側面だけではなく、法適合という側面もあります。改正後の労働基準法では、「特別条項でも上回ることのできない時間外労働時間」 を設定する予定になっており、建設業への適用は2024年に予定されています。その改正案では特別条項が盛り込まれているものの、「原則」 は月45時間かつ年360時間となっています。特別条項の 「年720時間」 ばかりが注目され、月平均60時間と考えている方も多いかと思います。しかしながら、「原則」 である年間360時間 (=30時間/月) を考えた場合はどうでしょう。例えば土曜日に月4回出勤した場合、32時間(1日の所定労働時間を8時間とした場合) の所定外労働となります。「原則」 を考えたとき、それだけで超過してしまうことになります。
未だ詳細は決定していないところもありますが、来るべき法改正及び建設業への適用にむけて緩やかに適応していくためには、発注者指定の 「モデル作業所」 で4週8休を実施するだけではなく、自主的に4週8休に取り組んでいくことで、早めに課題の洗い出しや解決をしていくことも必要なのではないかと感じました。
今回は4週8休に取り組んでいる3つの作業所を紹介しました。当初は 「4週8休モデル工事」 として発注者や会社から指定されている 「モデル作業所」 を取材対象としてイメージしていました。PART.1では国交省発注の 「モデル工事」 でしたが、その他はいわゆる 「モデル工事」 ではありませんでした。日建協加盟組合に募集した結果、自発的に4週8休や4週8閉所に取り組んでいる二つの作業所を紹介していただきました。
この二つの作業所では建設産業の未来に危機感を持ち、少しでも休みを増やすことにより産業の魅力をUPしたいという個人の強い思いから、4週8休を実施していました。
日建協では4週8休を実現するために、実施作業所を紹介し、加盟組合に情報提供をしていきたいと考えています。