日建協ホーム | What's 日建協 | 労働とくらし | 建設産業界 | 外部との交流 | 提言書 | トピックス | 健康とリフレッシュ | サイトマップ
ワンダフル・シネマ


日建協副議長  堀田洋昭

 いよいよ新しい年がスタートしました。2005年第1号のコンパス特集記事の執筆にあたり、新春にふさわしい題材とまではいきませんが、私が毎週のように探しては楽しんでいる「映画=シネマ」のお話をしてみようと思います。みなさんのなかにも映画通の方々はたくさんいらっしゃって、すでに新春公開のハリウッド映画や話題の新作などを見に、映画館へ足を運ばれた方も多いのではないでしょうか? アメリカ・イギリス・フランス・イタリアにアジア映画、最近お隣の国の韓国映画は大流行していますよね!
 映画は見ないという方や苦手という方には、大変申し訳ございませんが、ここはひとつ読み飛ばしなどなさらずに、コーヒーブレイクがてら、リラックスした気持ちでとりとめのないお話におつきあいいただきたいと思います。


 映画との出会い

 私の映画との出会いは、小学校2年生の頃までさかのぼります。学校から家に帰って来るのは大体決まっており、4時に帰っていました。さっそく母親におやつをおねだりなどして、何気なくTVを見ていると、いつも決まった時間に母親がチャンネルを替えてしまいます。ちょうどその時間帯にお茶の間洋画劇場がはじまるのです。当時見た映画は、西部劇が大半でありました。「駅馬車」「荒野の七人」「夕日のガンマン」「OK牧場の決闘」…。たちまち映画(というよりは西部劇)の持つ魅力に取りつかれてしまい、そのうち西部劇を見るたびに、カウボーイ・ハットが欲しくなり、「買って、買って、アレ買って!」の一点張り。母親をたいへん困らせていたことが懐かしく思い出されます。当時のことを母親に聞いてみると、私の住んでいた町は北海道北部の小さな田舎町で、カウボーイ・ハットを売っている店など、どこに行ってもあるはずもなかったのです。

 高学年になり、その次に虜になったのは戦争アクションものの映画です。とくに好きだったのはTVシリーズの「コンバット」。サンダース軍曹はいうまでもありませんが、リトル・ジョンが結構好きだったことを覚えております。男の子でしたから、夢中にプラモデルの戦車や戦闘機をこしらえては、コンバットの主人公になりきっていました

 ますます身近になった映画たち

 いきなり大人になってお話を続けたいと思います。映画といっても、私は最近(ここ8年ばかりのことですが…)ほとんど映画館に行かなくなってしまいました。しかし、そのこととは逆に、ここ数年はかなりの数の映画作品を見ることができるようになりました。映画のビデオ化が普及し、レンタルビデオやDVDなどのおかげで、私たち映画通にとって、映画はほんとうに身近なものになりましたよね! 有り難いかぎりです。

 映画の作り手側にとっては、映画館での上映を前提に制作しているのですから、「映画は映画館で見るのが正当だ!」と当然おっしゃるでしょう。事実私もそう考えていた一人なのですが、最近はその正論もあまり意味がなくなってきているのかもしれません。その正論を貫いていくのも、それはそれでいいものだと思いますが、ビデオやDVDという便利なものが世の中に登場しはじめてからは、数多くの「いい映画」を誰もが見ることを諦めることなく、もっぱら自分の家の中のミニシアターで、感動を味わい、涙を流したり、怒ったり、笑ったりできるのですから…。

 作法を学んで映画をみるべし!?

 映画との出会いのない人はなく、世界中の多くの人々は、人生おりおりの場面でかなりの数の映画と出会っています。出会う映画の分だけ人々の心は温まり、「明日もがんばろう!」という気持ちになったり、ときには「生きる勇気」を与えてもらったり、家族や恋人との絆が深まったりするでしょう。映画のスクリーンからは、ほんとうに教えられることがたくさんあります。それだけでも十分価値があるはずの映画なのですが、映画をもっと面白く見るにはいくつかの作法があり、小道具も必要なのだとか。みなさんもこれらの作法を学んで、より一層映画を楽しんでみませんか!
まず、聖書、ギリシャ神話、クラシック音楽についての予備知識があると、映画の内容はより深く理解できるのだそうです。これらの知識が不足しているために、表面的な理解にとどまって、悔しい思いをしたり、大事な場面や、重要なセリフ、いい音楽を見落としたり、聞き逃している場合があるのだとか…。

演奏する天使たち。ヨーロッパ絵画にはよく登場するテーマだ。もともとはギリシャ神話のミューズたちがモデルか。 1511年に書かれたシャンソン(フランスの歌曲集)の譜面。添えられた絵の美しさに目を見張る。4本だった譜線はすでに5本になっている。教会から離れた楽譜の奔放な華やかさが感じられる。
アルゼンチン・タンゴは官能的で美しい
 私にはクラシック音楽の趣味はないけれど、昔見た映画のなかで確かに心に残るいい音楽がありました。アル・パチーノ主演「セント・オブ・ウーマン」のとある場面…自殺願望が強く、家族にも相手にされない盲目で初老の退役軍人が、大学生の付き添いアルバイトを伴って自殺するため大都会に出て行きます。ビシッとしたスーツを着込んで訪れた高級フレンチレストラン。生クラシックバンドの心地よいメロディが、その場の雰囲気をより一層格調高いものにしております。盲目であるが故に、元軍人は鼻を利かせて香水を嗅ぎわけ、若く美しい女性との会話を楽しむと、やや強引にダンスを申込みます。最初はその強引さにドギマギしていたその女性も、この軍人の巧みなリードによって、最後は二人で完璧かつ華麗なステップ
「間違っても踊り続けよう」
を踏むのです。念願のオスカーを獲得したアル・パチーノの演技に目を奪われてしまいがちですが、バックに流れる生バンドの演奏「…これがタンゴというものか!」…(タンゴはクラシック音楽ではないが)映画を見終わった後、さっそくそのタンゴの題名(「Por Una Cabeza」)を調べては、CDを買ってしばらく聴いていたことを思い出しました。
 クラシック音楽やタンゴに精通していなくても、とりあえず調べたり、聴いてみようという気になります。聖書やギリシャ神話なんかもそうですよね。主人公やまわりの登場人物たちが、これらの書物のなかに出てくる人物であれば、なおさら資料を調べたりして、前後の物語をつなげたりしては「彼はこのあと…する高貴な人物になるんだよ!」などと、周りの人にウンチクを語っては自己満足に浸ったりすることがよくありませんか。

 次に、欧米の人たちには当たり前の歴史的、地理的知識も、日本人にはすぐに頭に入らないことがよくあります。映画を見ながら、あるいは見終わったあとで、外国地図や歴史辞典をはじめ、映画監督や俳優の経歴名鑑などにいたるまで、資料を手元において調べることは、映画をより面白く楽しく見る方法なんだそうですよ。それだけでも映画への興味がさらに増し、そして深く理解し、楽しく学ぶことができて、これぞ映画の醍醐味と言えるのではないでしょうか!

 ビバ!字幕翻訳家

 聞きなれない言葉でありますが、映画の字幕を作成する人を字幕翻訳家と呼びます。私は常日頃から、この職業をしている方々に深く感謝し、心から尊敬の念を抱いております。また、同時にこれほど骨の折れる仕事はないと思います。もし字幕というものがなかったら、世界の「いい映画」に出会うことさえできなくなるからです。まして私は英語を聞くことも話すこともままならないのですから…。
ギリシャ神話風のニンフ(妖精)
 いまや世界共通語となった英語。日本語だけでも自分の思いを伝えたり、人の言っていることを理解することは難しいのに、英語を自由に操り、自分で聞き取って、人々に映画の感動を伝えることができる彼らの偉大さを感じずにはいられません。
 字幕翻訳の最初の仕事は、映画配給会社の試写室に行って、海外から届いたプリントを見ることからはじまります。たいていは脚本も一緒に届くそうで、その脚本に書かれたセリフと実際の映画をつき合わせながら見るというのが、翻訳の第一歩。次に実際の翻訳作業に入り、セリフのひとつひとつに、場面にぴったりの日本語をつけていく。スラスラと言葉が出てくるものもあれば、専門用語でひっかかったり、状況を説明するのに知恵をしぼらなくてはならない場面もある…なんて頭の使う仕事でしょう。

 みなさんもTVなどで、一度はお目にかかっていることがあると思いますが、この世界の第一人者である戸田奈津子さんは、その著書の中で「映画の字幕は、それを限られた字数の中で、瞬間的に伝わるよう説明しなくてはいけない。そして、映画を見ている人に、字幕を読んでいることを意識させないことも、翻訳の大切なポイント!」と述べています。
 しかも、映画1本分の字幕翻訳をきっちり1週間で終えるのだとか…。夜は12時前に仕事を終えて、睡眠時間もきちんと8時間とり、翌日は必ず8時か8時半には起きる。このペースはまったく崩さずに、仕事で徹夜したことなど、これまで一度もないのだそうです。
 自分の好きな仕事を自分できちんと管理できること。私たちがいま、まさに取り組んでいる時短推進にもきっと通じるところがありますよね。
 建設産業も字幕翻訳も、1日徹夜したからといって終わるようなものではありません。やはりここは、好きな仕事であるがゆえに、常に意識を持って自分の仕事を楽しく管理する戸田さんのような「プロフェッショナル」にならなければなりませんね。

☆セリフで学ぶ英会話☆ 実際の映画の劇中の会話から少しだけ・・・
セリフ 意 味 作品名
You’ve been a very,very naughty little girl. 「おまえはとても、ワルーい子だよ」 インタビュー・ウィズ・バンパイア
Show me the money! 「おれのためにバッチリ稼いでくれ!」 ザ・エージェント
If it’s not too much trouble, can you bring my fiance home with you? 「もし面倒でなかったら、私のフィアンセも一緒に連れて戻ってくれる?」 アルマゲドン
I want tell you my secret now. 「先生に僕の秘密を話すよ」 シックス・センス
Be my guest. 「どうぞ」「ご遠慮なく」 パルプ・フィクション
Come on! Hurry up! ASAP
ASAP=as soon as possibleの略語
※普通に「エー・エス・エー・ピー」と発音する
「グズグズしないで、急げよ!」 ボーン・コレクター
I promise. I will never let go, jack. l’ll never let go. 「約束するわ。決してあきらめないわ、ジャック。どんなことがあっても」 タイタニック
You're not perfect. She isn't perfect either. But the question is whether or not you're perfect for each other. That's the whole deal. 「君は完璧じゃない。彼女も完璧じゃない。だが、問題は君らがお互いにとって完璧かどうかってことだ。それが一番、大切なんだよ」 グッド・ウィル・ハンティング
I might as well tell her that I love her. 「思い切って彼女に愛してるといってしまおう」 スリーパース
We all have a destiny. Nothing just happens. It's all part of a plan. 「人間はみな運命を持っているんだ。物事はただ起こるんじゃない。すべてあらかじめ定められていることの一部なんだよ」 フォレスト・ガンプ

ジャンルで選ぼう! 1度は見て欲しい映画

 みなさんにもマイベストのお奨め映画がたくさんあると思います。ここでは、私の独断と偏見で勝手に選んでしまうという暴挙に出てしまいました。いわゆる不朽の名作や、最高観客動員数を誇るようなメジャーな映画ではないにしても「心にジーン」とくるような、みなさんに必ず一度は見て欲しい映画4作品をジャンル別にご紹介します。ゴージャスな著名俳優陣を起用した大作や、新春公開のハリウッド映画もいいですが、たまにはのんびりと、お茶の間でくつろぎながら家族一緒に楽しめる映画もまたいいものです。

少女の心は誰にもわからない 天国の父に
届けて!
●音 楽
「リトル・ヴォイス」

1998年イギリス マーク・ハーマン監督
 亡き父の残したレコード盤を聞いているときだけが幸せ一杯の不器用な少女、愛称リトル・ヴォイスは、ひょんなことから抜群の歌唱力の持ち主であることが判明します。なにしろ、歌がとても素晴らしい! なつかしい多くの「いい歌」を楽しむことができます。最初はユアン・マクレガーやマイケル・ケインといった実力派の俳優たちが脇を固めているので見た作品ですが、やはり少女の歌に脱帽しました。

●オリンピックと人生観
「炎のランナー」
走ることは
人生そのもの
神を讃えるために走る
1981年イギリス ヒュー・ハドソン監督
 ヴァンゲリスの壮大なサウンドをバックに、砂浜を走る若者たちからはじまるこの映画は、イギリスの陸上短距離界で名をなした二人の実在のランナー、ハロルド・エイブラハムズとエリック・リデルが、1924年のパリ・オリンピック大会で金メダルを勝ち取るまでの過程を描いた作品です。ユダヤ系であるがゆえに、人種差別を乗り越えるために走るハロルドと、敬虔なクリスチャンの牧師の息子として伝道のために走るエリックの世界観や人生観は、オリンピックの世界を完全に超越しております。何回見ても素晴らしい!

●子供の存在
「リトル・ダンサー」
男の子がバレエなんて・・・ 何もかも忘れて電気のように!
2000年イギリス スティーヴン・ダルドリー監督
 イングランドの炭鉱の町に住む、11歳の少年ビリーが主人公。いやいやボクシングを習っていたが、クラシックバレエの練習クラスを偶然覗いたことから、その楽しさに惹かれ、父に内緒でそのクラスに加わります。息子を思う気持ちがいつも直球一本やりの父ジャッキーの無骨で不器用なまでの正直な愛と女装癖のある彼の友達マイケルとの交流がいたく心に残ります。バレエの先生のウィルキンソンも素敵ですよ。感動的な人間ドラマでお勧めです。

私は信念のために立ち上がり、それを貫く人間だ!
●正義
「真実の瞬間」
1991年アメリカ アーヴィン・ウィンクラー監督
 1950年代のハリウッド内に起きた`赤狩りaをテーマにした異色作。20世紀フォックス社の社長から呼ばれ、フランスから映画の都に戻ってきた売れっ子監督のデヴィット・メリルの信念を貫こうとする生き様に感動します。「真の友、真の正義とは何なのか」「国家権力とは何なのか」ほんとうに考えさせられます。自由と民主主義の大国アメリカでこんなことがあったとは…。


映画ばかり見ていると…

 現実から逃避しているのではないのかと言われてしまいそうですが、いつの間にか、いつも何かしらの映画を見ないと気がすまない性格になってしまいました。みなさんのなかにもこのような気持ちをわかってくれる方が必ずいるはずですよね。それほど映画は素晴らしいものなのです。
 国や社会、会社や家族、そして仕事、現実に生きる人間だからこそ、映画という夢の中のほんの一瞬を心から楽しみたいと思うのです。

参考文献:
大鳥俊平著 「いい映画が観たい│シネマの森の探索│」
戸田奈津子著  「スターと私の英会話!」
Compass/Vol.760
Home 日建協ホームへGO このページのトップへ サイトマップへGO お問い合わせ・ご意見・ご感想