いざ離職に直面したときに


離職者に対する精神的支援・心の不安を取り除く


知って得する素朴なQ&A 退職後の疑問・不安 日建協が訪問調査した再就職支援機関一覧
失業給付金をもらうための条件は? 万一への心の準備が必要です
あなたの再就職を支援する各種制度・施設 何をどこへいつ持っていく?●退職前後の手続き一覧



建設産業からの離職者に対する雇用対策
 日建協は、これまで「離職者のための雇用のセーフティーネット構築」にむけて、98年度に作成した雇用の提言書をベースに、加盟組合企業での雇用調整の実施・計画の実態を調査し、行政機関や経営者団体に対し実態を訴えるとともに、再就職支援策の強化を訴えてきました。これからも、最重要課題として取り組んでいきます。

 このような状況の中、日建協としては、現状認識のうえで、「新しい職を探さなければならない人を支援したい」、「円滑な労働移動をしてほしい」との思いから、
離職者に対する精神的な支援という意味からもお役に立てればと思い、この特集を掲載しました。一生のうちにそう何度も経験するものではありませんが、離職したらすぐ“自分のことは自分でやらなくてはならない”のです。「自分には関係ない」と思い続けてきたが、「最近少し心配になる」「興味はあるけど聞きにくい」「わからないことが多くて何となく不安」などと思っている人も多いでしょう。日建協としては、この記事を読んでいただき、心の不安を少しでも取り除いてほしいという思いなのですが、あくまで、実際にはみなさんが利用することのないことを願い、さらに、利用しなくても良い産業になることをめざして取り組んでいきます。


なるほど そうだったのか!
知って得する素朴なQ&A ここでは、退職後の疑問・不安について お答えします。

Q:会社が倒産したら、給料や一時金、退職金はどうなる?


A:何らかの事情によって会社が倒産した場合、その時点で会社は債権・債務を整理することになります。商品の売上先には売掛債権、仕入先には買掛債務が発生するといった具合です。未払いの賃金がある場合には、労働者は会社に対する「労働債権」という“貸し”が生じることになります。この労働債権は、法律的に他の債権よりも優遇されることになっています。つまり、倒産会社は、労働者に対して真っ先に未払い賃金などを支払う義務があるのです。ただし、源泉所得税などの国税や、住民税などの地方税、健康保険などの社会保険料は、この労働債権よりも優先されることになっています。したがって、会社が倒産して、債権者集会が開催されたり、会社の精算業務を担当する当事者が判明したときには、未払い賃金などの内容や額を申告して、労働債権として確保しておく必要があります。その際は、未払い賃金を一般債権に優先して確実に支払うように要求します。

 退職金も同様で、就業規則や退職金規定に定めがあって、会社が支払う義務を負うものである場合には、退職金は賃金とみなされます。また、労働慣行によって、一定の退職者に慰労金や功労金など退職金と考えられる金品が支払われている場合も、賃金と考えられます。

 一時金については、「賞与は会社の業績および本人の勤務成績を総合的に勘案して支給する」という規定を設けている会社がほとんどです。倒産するということは、会社の業績が最悪であることを示しています。その点からすると、支給されないケースが大部分でしょう。

 いずれの場合も個人で対応するよりも、労働組合での対応が最善と言えるでしょう。


Q:会社が倒産したら社内預金はどうなるの?


A:社内預金は、これまで、銀行保証、信託契約、質権の設定、抵当権の設定、預金保全委員会の設置のいずれかの方法によって全額共益債権として保全されることになっていました。しかし、昨年12月6日の参院本会議にて改正会社更生法が成立し、その内容は、大きく変わりました。
 新会社更生法では、「社内預金は、賃金の6ヶ月分、あるいは総額の3分の1の多い方に限定して共益債権部分とする」となりました。また、現実の問題として経営者側が何らかの手段を講じ、社内預金を使い込んでいる状況もありえないわけではありません。このような場合では、労働組合を通して労働基準監督署へ相談するとともに、その指導にしたがって、社内預金の返還にむけた行動を起こすことになります。社内預金については、今回の会社更生法の改正にともない、今後の動向について注意が必要かも知れません。


Q:会社を辞めたら、住宅ローンはどうすればいい?


A:住宅ローンについては、住宅の取得にあたって個人と金融機関との間で、金銭貸借に契約を結んで融資が行われているはずです。したがって、勤務する会社が倒産したり、あるいはリストラなどによって会社を退社してからといって、すぐさま何か問題が生じるとは考えられません。ローンの返済が6カ月以上滞るなどの問題が発生してはじめて、何らかの対策を講じる必要が出てくるでしょう。福利厚生のメニューの一つとして、社員に対する住宅取得融資制度を導入している会社は多いようです。具体的には、会社が直接融資するケース、提携金融機関に対する利子補給をしているケースなどが考えられるでしょう。こうした場合、会社の倒産またはリストラによる退職によって、何らかの対策を講じる必要が生じます。たとえば、会社から直接融資を受けている場合には、会社との労働関係が終了しているわけですから、一括返済を考えなければなりません。
 会社に対して債務が存在することになりますから、他の金融機関と協議をしたうえで返済するといった対応が必要となります。


なるほど そうだったのか!
失業給付をもらうためには どんな条件を満たせばいい?
ここでは、退職後の生活に 大きな影響を及ぼす、 失業給付について触れます。

働く意欲を示さないと失業給付は受けられない


 失業給付は退職すればどんな場合でも受けられるというものではなく、受給するためには、次のような一定の要件を満たしていることが必要です。
  @ 離職して雇用保険の被保険者ではなくなったこと
  A 就職する意思と能力があること
  B 離職の日以前の1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上あること

 雇用保険では「離職し労働の意思と能力がありながら、仕事に就くことができない状態にあること」を「失業」と定義しています。つまり、退職=失業ではなく、就職する積極的な意欲と、いつでも働ける能力が必要なのです。労働の能力があるというのは、労働していけるだけの精神的、肉体的な能力が整っていて、環境上も労働が可能な条件にあることをいいます。


雇用保険に6ヶ月以上加入していることが必要  


 失業保険を受けるためには、離職する日以前の1年間に雇用保険に加入した期間(被保険者期間)が6カ月以上必要です。この場合、賃金の支払われた日が14日以上ある月を1カ月として計算します。


失業給付の手続は?  


 失業給付の手続は、住所地を管轄する公共職業安定所(愛称ハローワーク)で行います。就職したいという積極的な意思と能力があることを認めてもらうには、公共の職業紹介機関でもある公共職業安定所に「求職の申込み」を行うことが必要です。

 この手続では、再就職の希望条件などを書き入れた「求職票」と「離職票」を提出します。受給資格が認定されると、被保険者だった期間や退職理由などに応じて、失業給付の日数や金額が決まります。基本手当の1日分は、退職前6カ月間の賃金を180で割った額(賃金日額)に、一定の給付率(60〜80%)を掛けると基本手当1日分が算出されます。所定給付日数は、離職した理由により「一般の離職者」(被保険者の期間により、90〜180日)、「特定受給資格者」(被保険者の期間により、90〜330日)と分類されます。基本手当の第1回目の振込みは、受給資格認定日より約5週間後になり、まず、2〜3週間分になります。
 以降、失業認定と振込みがくり返されます。


あなたの再就職を支援する各種制度・施設
再就職活動支援
退職前後の再就職活動について、 支援する機関・施設・制度を紹介します。
詳細については、インターネットで 調べるのが便利です。

@ 再就職先斡旋機関…あなたの再就職先を紹介・斡旋してくれます。  
公的機関
ハローワーク(公共職業安定所)…地域の職業相談・職業紹介、求人情報の提供
産業雇用安定センター…出向、移籍支援事業、在職者職業紹介事業
人材銀行(各地方ごとなのでYahooなどで検索してください)…管理職、技術職、専門職の職業紹介

民間機関
人材バンク…職業の紹介・斡旋

A 再就職のための各種教育・訓練…新しい仕事へのスムーズな移動を支援します。
雇用能力開発機構
職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)
…離職者・転職者のための訓練
生涯職業能力開発促進センター(アビリティガーデン)
…離職者・転職者を対象に、独自に開発した様々な実務・実践的能力開発(アビリティコース)
雇用能力開発機構 都道府県センター
…離転職者の就職支援(職業能力開発・向上についての相談・援助・訓練)

都道府県職業訓練校(各都道府県立)各地方ごとなのでYahooなどで検索してください
教育訓練講座を実施する各種専門学校(厚生労働大臣指定)

B 各種助成金制度…教育・訓練、再就職を経済面でサポートします
教育訓練給付制度
…国が指定した教育訓練講座の受講に負担した費用の8割
 (上限30万円)相当する額が支給される。
キャリア形成促進助成金
…事業主が従業員について、職業訓練の実施、能力開発休暇の付与、
  職業能力検定の受検への支援を行った場合に支給される。
再就職支援給付金
…民間の再就職支援会社を利用して再就職をサポートした事業主に
  斡旋費用の1/4(一人当たり30万円程度)が助成される。
その他
建設業労働移動支援助成金、雇用調整助成金、労働移動支援助成金
 (うち求職活動支援給付金)、在職者求職活動支援助成金など

日建協が訪問調査した再就職支援機関一覧

機関名をクリックすると調査結果の詳細を見ることができます
アドレスをクリックすると各機関のホームページにアクセスできます

機関名 所在地 ホームページアドレス
公的機関 ハローワーク新宿
(ハローワークは全国各地に設置)
〒163-1523
東京都新宿区西新宿1-6-1
新宿エルタワービル23F
TEL 03-3200-8609
http://www.hellowork.go.jp/
東京就職サポートセンター
(同様の施設が、さいたま市と大阪市にあり)
〒100-0006
東京都千代田区有楽町2-10-1
東京交通会館7階
TEL 03-5218-8609
http://www.tokyosupport.jp/
東京人材銀行
(人材銀行は全国に26箇所設置)
〒100-0006
東京都千代田区有楽町2-10-1
東京交通会館11階
TEL 03-3212-1996
http://www.tokyo-jingin.go.jp/
東京キャリア交流プラザ 〒100-0006
東京都千代田区有楽町2-10-1
東京交通会館9階
TEL 03-5220-2310
2004年3月ごろ開設予定
財団法人産業雇用安定センター
(47都道府県に地方事務所設置)
〒110-0016
東京都台東区台東2丁目27番3号
NSKビル
TEL 03-5818-3001
http://www.sangyokoyo.or.jp/
民間機関 日本ドレーク・ビーム・モリン株式会社
(全国主要都市に支社・事務所設置)
〒141-0032
東京都品川区大崎1-11-1
ゲートシティ大崎ウエストタワー22F
TEL 03-5437-1707
http://www.dbm-j.co.jp/
旭化成アミダス株式会社
(東京・大阪・福岡に事業所設置)
〒103-8486
東京都中央区日本橋浜町3-21-1
日本橋浜町Fタワー12F
TEL 03-5695-6605
http://www.asahi-kasei.co.jp/amidas/
株式会社ワークネット 〒101‐0052
東京都千代田区神田小川町3-8
中北ビル4F
TEL 03-3518-0537
http://www.worknet.co.jp/
公的機関
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職業訓練等
雇用・能力開発機構
(全国に都道府県センター設置)
〒231‐8333
横浜市中区桜木町1-1‐8
日石横浜ビル
TEL 045-683-5393
http://www.ehdo.go.jp/
アビリティガーデン
(生涯職業能力開発促進センター)
(※全国でここだけ)
〒130-0022
東京都墨田区江東橋2丁目19-14
TEL 03-5624-8020
http://www.ab-garden.ehdo.go.jp/


失業なき労働移動、円滑な労働移動をするために
厳しい時代だからこそ、 万一への心の準備が 必要なのです

 みなさん、今回の記事はいかがでしたでしょうか?
 最近の雇用状況としては、雇用調整が建設業界で行われて当然との風潮になっています。しかし、私たち働く者の立場から考えると、人員削減など安易に行わない企業こそが、あるべき企業の姿だということは当然再認識すべきですし、社会からも望まれています。たしかに建設産業の現状はいまだ厳しいですが、本当に個々の企業の経営方針や長期戦略に基づいて実施され、なおかつ従業員に十分説明され、理解・納得を得ているとは言えないのが現状ではないでしょうか。

 人員削減は、企業としての一体感や求心力を急速に失ってしまうばかりではなく、「建設業の財産は人」という観点からも、これまで培われた貴重な技術やノウハウまでをも失うことであり、産業の財産に対して大きな損失をともないます。だからこそ、経営者に望まれるのは、企業・産業再生という流れを追い風にして安易に人員削減に走らず、計画にあたっては組合(社員)への充分な説明・協議を尽くすことが大前提であり、また、社員への納得できる説明をすることが当然必要・不可欠です。一方、雇用調整を行っている企業があり、心ならずとも会社を離職せざるを得ない人が発生し続けていることは、残念ながら事実です。

 離職が現実になったらやはりショックは大きいでしょう。でも、悲観ばかりしてられません。生活をするためには、新たな気持ちで再就職へスタートしなければなりません。私たちには普段あまり馴染みはありませんが、退職時の手続や再就職を支援する制度・施設はこれだけあります。

 日建協は、今後も雇用問題に対して「建設産業で働く私たちが、雇用に対する不安を感じることなく、安心して働ける」ように取り組んでいきます。これまでと同様、不当な人員削減については断固として反対姿勢を貫き、建設業全体で雇用を守るという観点から調査・分析を行い、厚生労働省などへの提言活動を行っていきます。


「何を」「どこへ」「いつ」持っていく?
退職前後の手続き一覧

保険等の種類 手続き 何 を どこへ い つ
退

雇用保険 ・雇用保険被保険者賞の有無を確認
・離職票の受取方法を確認
会社の担当部署
年  金 年金手帳の有無を確認 会社の担当部署
年金加入歴の確認 @年金手帳、
  基礎年金番号通知書
A印 鑑
社会保険事務所
健康保険 健康保険証の返却 会社の担当部署 退職日当日
税  金 「退職所得の受給に関する申告書」を提出 会社の担当部署
退

雇用保険 失業給付を受給するための最初の手続き
(求職の申し込み)
@雇用保険被保険者証
A離職票-1、離職票-2
(退職後会社から受け取る)
B住民票または運転免許証
C写 真(タテ3cm×ヨコ2.5cm)
D印 鑑
住所地を管轄する公共職業安定所
 (ハローワーク)
会社から離職票を受け取ったら
すみやかに
失業の認定 @雇用保険受給資格者証
A失業認定申告書
B雇用保険のしおり
C印 鑑
求職申込み後の指定された日
(4週間に1回)
年  金 国民年金の種別変更の手続き
(20歳以上61歳未満の人)
@年金手帳、
  基礎年金番号通知書
A印 鑑
市区町村役場の国民年金課
(年金窓口)
退職日の翌日から
14日以内
健康保険 任意継続の手続き @健康保険任意継続被保険者 資格取得申請書
A健康保険被扶養者届
(被扶養者がいるとき)
B印 鑑
C住民票
(必要かどうか手続き先に確認)
住所地を管轄する社会保険事務所、または健康保険組合 退職日の翌日から
20日以内
国民健康保険加入の手続き @国民健康保険被保険者資格届
A退職日を証明する書類
(健康保険被保険者資格喪失証明書の写しなど)
B印 鑑
市区町村役場の国民健康保険課 退職日の翌日から
14日以内
税  金 確定申告の手続き @確定申告書
A源泉徴収票
B生命保険料控除・損害保険料控除、住宅ローン控除などを受ける人はそれぞれの証明書や添付書類)
C印 鑑
住所地を管轄する税務署 退職した翌年の
2月16日〜3月15日

(参考資料) 株式会社 日本実業出版社  「会社を辞めるときの手続き完全ガイド」 2001年7月

2003年3月/2004年2月

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