資 料


2.民間マンション建築工事に関する実態調査結果

 日建協では、建設産業が抱える課題への取組みとして、民間建築工事の安値受注、サービス業務、工期設定の問題について、その改善に向け取組んでいます。過度な安値受注による低価格競争は、公正な市場競争を衰退させ、産業の健全な発展を阻害するばかりでなく、賃金の低下や労働時間の増大など、そこで働く私たちの労働条件を悪化させる要因となりかねません。
 この調査では、民間マンション工事の設定工期や安値受注等の実態と、そこで働く職員の意識を把握するとともに、問題を整理し分析するために行ないました。

●調査期間:2001年12月6日〜2001年12月14日
●調査対象:日建協加盟44組合 
        民間マンション工事現場(首都圏、大阪圏)
        主任・所長クラス(工程、原価管理者)
●配付枚数:304枚(内、調査対象物件該当無し 27枚)●回収枚数:161枚


属  性


@延べ床面積
図2−1 延べ床面積の分布

A階数(地上階)
図2−2 地上階数の分布

B職員の配属人数
図2−3 職員の配属人数

C職員の配属人数あたりの延べ床面積
図2−4 職員の配属人数あたりの延べ床面積
※平均 2,377.2u/人

D職員の配属人数あたりの戸数
図2−5 職員の配属人数あたりの戸数
※平均 21.2戸/人

E造成工事の有無 F工 法
図2−6 造成の有無 図2−7 工 法
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@設定工期について


現在の工事の設定工期について教えてください

設問1 現在の設定工期は適正だと思いますか? その程度を、工期における休日閉所に置き換えてお答えください(月4週としてお考えください)。

―結 果―
@、Aを併せ、土曜閉所はおろか、日曜日まで作業を行なわないと工期が間にあわない現場が48%と約半数となっている。また、Bの『日曜日は休めるが土曜日は全て作業しないと間に合わない』という現場を含めると全体の95%となり、現在の設定工期では土曜閉所がほとんど実施できていないことを示している。

図2-8 適正工期について


(設問2、3は、設問1で@〜Eと答えた方にうかがいます)
設問2 設定工期が厳しいと思われる要因は何だと思いますか。(回答:2つ以内)

―結 果―
『施主の要望で最初から厳しいと知りながら請け負った』と回答した現場が72.7%ともっとも多い。次いで、『契約工期が決まっているにもかかわらず、発注者、設計者の詳細計画や申請等の対応が遅く、実質的な設定工期が短い』『短工期施工を営業上のツールとして会社が受注した』が続いている。その他の意見としては、近隣住民の反対による工期遅延によるものが4件あったほか、赤字受注による協力会社の契約遅延や受注後の準備期間がないことから材料の発注・納期が遅れた等の社内的要因に関する意見も目立った。

図2−9 工期が厳しい要因
(その他意見)



















近隣の反対により協議書の締結がズレ込み、着工が遅れたにもかかわらず、工期がそのままである。(他3件)
不確定要素(解体工事、地中障害物撤去)を含めた契約としたため。(他1件)
赤字受注の為、協力会社の決定が遅く、乗り込みが遅れた。
社内的な理由でスタートが遅れた。いつのまにか終わりが1ヶ月縮んでいた。
解体工事も含んでおり、前の持主の引越しが遅れたため、約2週間着工が遅れた。
最初から休日を考慮した工程でない。現状では、発注者の要望が工期であり、主導権は施工者には無く、その中で、土、日閉所は不可能である。
デベロッパーとゼネコン共に、週休二日制導入以前の工期設定で事業計画をたてている。各階の躯体工程を半月(2フロア/月)で計画しているが、工期に余裕がある場合にも土曜日は作業日とし経費を削減している。
工事契約完了時が工期スタートとなり、元が厳しい上、準備計画期間でさらに工程が厳しくなる。材料の納期も間に合わない。年間を通じた悪天候による作業不能日数は、ほぼカウントされない工期設定となっている。
建物が複雑な事、仕様が細かい事、仕上が多種にわたる等、建物そのもののグレードによる工期不足(標準的な歩掛りでは納まらない)。
無理な工程でも何とかしなければいけないし、何とかしているのが今では普通になっている。
全体工期は十分だが、冬期施工の外装工事の為、土曜は閉所出来ない。
検査関係の日時が必要なため。
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設問3 十分な工期が確保できないことによる施工管理上の問題点があれば教えて下さい。(回答:3つ以内)

―結 果―
『生コンの養生や下地の乾燥期間が取れない、施工が雑になる等、十分な品質が得られない』が72.9%となっており、品質の低下を懸念する回答が多かった。次に、『若手社員を教育、指導する余裕がなく、技術力の低下が懸念される』が57.8%と半数以上の現場で回答しており、会社さらには建設産業の将来を担う若手に対する技術力低下への影響が問題視されている。また、32.3%の現場で『安全管理がおろそかになる』との回答から厳しい工期が事故や災害の発生に影響を及ぼす可能性をあげている。その他の意見としては、残業の増加、休日に帰宅できない等の労働条件の悪化やそれに付随した職員の士気の低下を訴える意見があった。

図2−10 工期が厳しいことによる施工上の問題点
(その他意見)











土休、祭日は休めないが、品質的な問題等は特にない。
経済ペースで工程管理が出来ない為、安い取り決めで下請業者に請負わせても最終的な精算段階で予算枠に足りないケースが多々ある。
予算、工期等厳しく、人間も少ない(いない)条件の中、労働条件が、だんだん悪くなる一方、職員の士気の低下 につながる一方である。
遠距離に単身赴任している既婚者が、余裕を持って帰宅できない。日曜日のみ休日の場合、土曜日の夜帰宅して、日曜日の夜、赴任地へ戻ることになり、体を休めることにならないので、結果として帰宅できない。
工事の段取り等に残業をしないと追いつかなくなる。
時間が短いなかでの各々施工計画決定を常に余儀なくせまられ、計画自体がタイトなものになり、結果、共通の現象として、ゆとりの持ちづらい施工管理となっている。
冬季の施工は、全てにおいて問題である。特に躯体工事は、職人、現場員に多大な負担だと思う。


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