時短特集:ようこそタイムゾーンへ

よく「時短」という言葉を使いますが、いったい「時短」とはなにか、そしてそもそも「時間」とはなんなのでしょうか?
私たちが普段使用している時短という言葉は「労働時間の短縮」であり、そのためにさまざまな取り組みを行っています。人によって「求め、欲する時間」の内容や量は異なると思いますが、皆さんは自分のプライベートの時間をお持ちですか?  そのような「時間」に対する強い思いが「ある」のと「ない」のとでは、時短に対する意識にも大きな違いがあると思います。
「時間」そのものについて、未来・過去・現在に触れながら、さまざまな視点から探っていきましょう。

3D画面のテレビでは、市民ランナーでありながら日本新記録を打ち出した○○建設のAさんの記者会見が行われていた。土日、祝祭日の作業が行われなくなって早くも7年が経っていた。Aさん以外にも社会人野球から計7名がプロへ転向するなど、スポーツで目ざましい成果をあげた建設業界。週2日の休日の練習に加えてノー残業日の水曜日、大会前になると平日も仕事を終えてから猛練習を行ったようだ。
個人の努力もさることながら、「会社の後押しと仲間の理解があったからこそ」とAさんがインタビューで語ったように、ワーク・ライフ・バランスを現実のものとしてバックアップしてきた会社の存在は、やはり大きい。次の目標について「チームで出場する駅伝大会で優勝をめざします」と、自信ありげに語っていた。

私は未来での滞在時間を終え、興奮覚めやらぬまま現代へ戻されたのである・・・。

 

過去・・・多くの詩人たちが「時間」について考え、さまざまな「名言」(詩)を残し、現在も語り伝えられています。

『未来はすでに始まっている。』 ― ロベルト・ユンク
『古き良き時代。全ての時代は古くなると良くなるもの。』 ― バイロン
『その日その日が一年中の最善の日である。』 ― ラルフ・ワルド・エマーソン
『君、時というものは、 それぞれの人間によって、 それぞれの速さで走るものなのだよ。』 ― ウィリアム・シェイクスピア

「時間」とは止まることなく常に流れていて、「過去」「現在」「未来」の3つの視点で捉えることができます。
上記のロベルト・ユンクの名言を読んであらためて考えると、「現在」というのは、すぐに「過去」となり、「未来」は遥か先から現在に繋がっています。私たちが「建設産業の明るい未来」をめざすのであれば、早く行動しないと近い未来はすぐに訪れてしまいます。また、未来に終わりはないため、継続して行動して行く必要がありますね。

バイロンの言葉も納得できます。「過ぎてしまえば、みな美しい」という歌もありましたが、どんなに辛い出来事があっても、どんなに苦しい時代でも、未来にそれを乗り越えた自分が存在し振り返ることができれば、きっと良い思い出に変わるでしょう。ラルフ・ワルド・エマーソンのように、「毎日が最善の日」と思って1日1日を大切に過ごし、明るい未来が待っていることを信じてがんばりましょう。

ウィリアム・シェイクスピアは時間の速さは人によって感じ方が違うといっています。では、実際に時間の単位や計り方などはいつ頃確立されたのでしょう・・・。

タイムスリップを体験する方法
今回は特別に、皆さんにタイムスリップを体験する方法をお教えしましょう。
タイムスリップするためには、ものすごい集中力が必要となるため、ざわざわしていない静かな寝室で行います。
成功率には個人差があります。
(※ 安全が確保できない場所で行うと、現在に戻れない恐れがあり危険です)

≪未来へ行く方法≫
まず自分が行ってみたい「未来」を思い描きます。(実在する未来へ行くわけなので、あまり現実離れしていては、そこへ行くことはできません)
次に、なぜ「その未来」がその状態で存在しているのか、そうなっているのかについてしっかり理論付けし、理解して下さい。一番大切なのは「絶対にこうなっているはずだ」と自信がもてることです。(自分が一生懸命取り組んでいる出来事があれば、その成果が表れる「未来」を思い描くと、より効果的です)
次にゆっくり目を閉じて、そのリアルな光景を繰り返し思い描きながら、「その場所へ行きたい」と強く念じて下さい。運が良ければ未来にタイムスリップできます。

≪過去へ行く方法≫
人間の脳には、過去のデータがたくさん蓄積されています。音声データや映像データ、その時の感情や気持ちなど・・・。その中で最も楽しかった思い出に関する情報を、できるだけ多く集めて下さい。(実際の出来事をより忠実に再現できたらOKです)
あとは未来へ行く方法と同様に、その光景を繰り返し回想しながら「その場所へ行きたい」と強く念じるのです・・・。

エジプトのオベリスク

時間の起源

時間という概念は、紀元前3500年頃からあり、最初に時間を計る方法を思いついたのは古代エジプト人で、巨大なオベリスクの影を日時計に見立てたことが起源であるとされています。1日を24時間としたのもエジプト人で、現在使われている六十進法の時間単位は紀元前約2000年にシュメールで考えられたとされています。その後、水があふれる仕組みを利用した水時計や砂時計、また、中国・日本・イギリス・イラクではロウソク時計を使って時間を計っていたそうです。

※ オベリスクとは、古代エジプト期に神殿などに立てられた記念碑(モニュメント)の一種
※ シュメールとは、メソポタミア(現在のイラク・クウェート)の南部地域
(参考文献:ノイゲバウアー,1984,古代の精密科学,恒星社厚生閣 他)

 

長い歴史を経て、そして さまざまな進化を遂げて「時間」は「短縮」されてきました。例えば・・・

【情報取得・伝達時間】
インターネットや光ファイバーなど、通信技術の向上により、情報入手や情報伝達にかかる時間が大幅に短縮されました。
TV電話を利用したTV会議、郵送からメールによるデータ送信 など・・・


【移動時間】
東京から大阪まで移動する時、大昔は徒歩で移動していました。その後、馬などの動物を利用するようになり、自動車や電車が普及し、今では新幹線や飛行機を利用することによって、数時間で移動することが可能となりました。また、将来的にリニア新幹線が開通すると、さらに移動時間が早くなります。(搭乗手続き等を考慮すると、飛行機より便利かもしれませんね)


【建造物をつくる時間】
建設技術の向上などにより、ダム、地下鉄、超高層ビル、国際空港、など大型建造物を完成させるまでの時間も早くなりました。もし今、ピラミッドをつくろうと思えば、当時よりも短い時間で完成させることが可能でしょう。

上記に記載した以外にも、多くの分野において技術が向上し、その発明や継続的な研究の成果により、費やす時間が減少した例はまだまだたくさんあります。

 

皆さんもよくご存知のとおり、小学校の算数の授業で習う公式です。これを応用して距離(道のり)を速度で割ると、出発してから到着するまでの時間をもとめることができます。

( → 時間=距離÷速度 )

この公式を応用して、次のように考えられないかな? (※ 作業量を仮に「ワーク」という単位で表現)

仮定が正しければ、1日の作業量を減らす(ムダな書類をなくすなど)、作業速度を上げる(職員の増員、チームワークで作業効率を上げるなど)と、1日の労働時間を減らすことができますよね。

例)取り組みが成功し、工期延長で1日の作業量が90ワークに!
1人増員(応援)となり、担当業務の一部を任せて作業速度が1.5倍に!

人数が増えれば1人あたりの作業量も減少し、仕事の種類が減れば、1つの仕事に集中できて作業速度もあがりますよね。また、打合せの時間や電話対応の時間を短縮できれば、さらに1日の労働時間が短縮されますね。

このように、1日の作業量を減らす方法や作業速度を上げる方法を公式にあてはめたり、もう少し深く応用したりして、職場の皆さんでぜひ考えてみて下さい!

 

ところで、私たちにあたえられている時間ってどれくらいあるのでしょう?

医療技術の進歩や食事環境の向上により、人が生きる時間(寿命)は昔と比べて格段に長くなりました。厚生労働省の統計調査によると、日本の平均寿命は、昭和40年に、男性が約68歳、女性が約73歳であったのに対し、平成24年には、男性が約80歳、女性が約86歳と大幅に長くなっています(左下のグラフ:厚生労働省統計調査資料より)。
つまり、48年前には今より12歳以上も平均寿命が短かかったのです。

また、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツなどの国も平均寿命は右肩上がりとなっていて、特に日本の平均寿命は世界的にみてもトップクラスです。

しかし、いくら平均寿命が長くなったといっても、無限に生きられるわけではありません。人の命には限りがあり、限りがあるからこそ、その一生を精一杯生きようと努力するのですよね。人生は一度きりです。悔いのないように、精一杯生きましょう!

 

限りある時間の中で、私たちの1日の過ごし方はどうなっているのでしょう。

2012年 日建協時短アンケートの概要から「平均的な一日の過ごし方」(上のグラフ)を見てみましょう。表の赤い点線で囲ってある部分を見ると、外勤の帰宅後の自由な時間はわずか2時間30分という結果となっています。また、所定外労働時間が100時間以上の場合は1時間54分と、さらに自由な時間は減っています。

過重労働が続き、睡眠時間やストレスを解消する時間が失われ続けると、先ほどご紹介した「私たちが生きられる時間」は大幅に短くなってしまうかもしれません。
自由な時間なら、休みの日にまとめて確保することができそうですが・・・休日は休めているのでしょうか。

下のグラフは、休日取得状況についてのアンケート結果です。日曜日は全職種でほぼ休めているものの、土曜・祝祭日では外勤者の場合、暦上の日数の半分以下しか休めていません。これでは自由な時間を確保できません・・・。

私たちの心と体の健康を維持するために、またワーク・ライフ・バランスを実現するために、少しずつでも労働時間を短縮し、「自由な時間」を確保したいですね。
「週休2日? そんなの、もう当たり前だよ」という時代が来ることを信じて、一丸となって取り組んで行きましょう!

 

皆さん、いかがでしたか? 「時間」って奥が深いですね。「時短」はこの奥深い「時間」を短縮するわけですから、簡単なことではないですよね。でも、あきらめないで下さい。昔は日曜日もあたり前に作業していたのが、先輩方の粘り強い、継続的な取り組みによって、現在は休めるようになりました。

時間は買えない、戻せない、全ての人に平等に与えられた貴重な財産です。時間の使い方次第で未来が変わります。ストレス発散をする時間、休養する時間、親孝行や家族と過ごす時間など、時間は誰にとっても大切です。

日建協では「ワーク」の魅力向上とともに、みなさんの「ライフ」が少しでも充実し魅力的なものになるよう、今後も時短活動に取り組んで行きます。皆さんも継続して時短に取り組んで下さい。

最後に、未来へのタイムスリップに成功した人は、その未来を信じて努力を継続して下さい。あなたが見た未来は、きっと現実となり、やがて美しい過去へと変わって行くはずです・・・。

日建協が発行している機関誌「Compass」では、これまで「時短特集」と題して、みなさんが興味をもってもらえるようなテーマについて掲載してきました。
このサイト内の時短特集の直リンクは下記のとおりですので、ぜひご覧ください。
また、「主な活動→時短・WLB」もどうぞ!

2012年11月号  睡眠について
2011年11月号  The Time Management  知って充実!仕事術!
2010年11月号  タイムマネジメントから考える時短ノススメ
2009年11月号  土休を考えよう
2008年11月号  ワークライフバランスについて
2007年11月号  悪循環を打ち破れ
2006年11月号  時短≒休日取得