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みなさん、11月は日建協の時短推進強化月間です。新聞やテレビ等で「日本は、経済的には世界でもトップクラスに達しているのに、国民1人ひとりは生活の豊かさを実感していないのが現状です」という意見をよく聞きます。私たちの生活は働くだけの毎日ではなく、ゆっくり上手に休むことによっても、豊かさを実現させなければなりません。
生活の豊かさとは、どのようなことでしょうか。自分や家族が安定した生活を維持できる
「経済的なゆとり」、自分の趣味や余暇などに費やす事ができる「時間的なゆとり」、気持ちのうえでストレスを感じない状態を維持できる「精神的なゆとり」などが考えられます。
私たちは、生活していくためには働かなければなりません。働くために大切なことは、仕事に対して、モチベーションを維持し、自分自身の働く環境を如何に整えていくかではないでしょうか。今回の時短特集では、ともすれば忘れがちな労働時間のルールや、私たち建設産業の労働時間、休日、休暇の現状について、あらためて確認して、私たちの働き方や自分自身の生活を豊かにしていくには、どうしていくことが必要か、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
それではまず、労働時間と休日、休暇の法律における規定について、少し詳しくみてみましょう。
【時間外労働・法定休日労働と割増賃金(率)の一例】
 
【労働時間の内訳】
労働時間とは、労働基準法で『使用者が労働者に労働に従事させる時間』と規定されています。労働基準法第32条では労働時間を法定労働時間といい、休憩時間を除き、1日8時間、1週40時間を超えないことを原則としています。
みなさんの会社の労働時間は、労働基準法の法定労働時間(1日8時間、週40時間以内)に基づいて、所定内労働時間として就業規則などで定められています。

また、同第36条では、『使用者が労働者に法定労働時間を延長して、時間外労働(残業)をさせる場合や会社の定めた休日に就業させる場合には、会社と労働組合あるいは労働者の過半数を代表する者と書面による協定(36協定)を締結し、労働基準監督署に届け出なければならない』と規定しています。

また、同第37条では、労働者に時間外労働をさせた場合、時間外労働(法定休日以外の休日も含む)に対し125%以上、法定休日(1週間に1回)労働に対しては135%以上の割増賃金の支払が義務づけられています。

割増賃金
割増賃金は、時間外労働、法定休日労働、深夜労働の場合に支払われます。
    割増率
時間外労働
(土曜日などの法定休日以外の休日労働を含む)
1.25以上
法定休日労働
(週1回もしくは、4週間に4回)
1.35以上
深夜労働 0.25以上



   割増率
時間外労働が
深夜に及んだ場合
1.5以上
法定休日労働が
深夜に及んだ場合
1.6以上
休憩時間
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えることが義務付けられています。(労働基準法第34条)
「休日」と「休暇」について、普段何気なく使っている言葉ではありますが、労働基準法ではそれぞれを明確に違う意味で使い分けています。
休日とは労働基準法第35条で「使用者は、労働者に対して毎週少なくとも1回、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」と定めており、「労働義務のない日」のことをいっています。また、1週間に1日の休日をとれない場合は4週間に4日以上と定めていますが、就業規則や労使協定などに休日を振り替えることができる旨の規定をすれば、休日と定められた日に働いても、他の日を休日とすることができます(休日の振替)。

〈週休日〉
週休2日制のもとで休日として指定されている日(土・日曜日など)や、会社指定休日(百貨店などにおける定休日)のことです。

〈週休日以外の休日〉
週休日以外の国民の祝日、年末年始休暇、夏季休暇、会社創立記念日、ゴールデンウィーク休暇、社員の誕生日休暇など、会社ごとに設定する休日のことです。
なお、雇用調整や生産調整のための臨時の休暇や年次有給休暇などは、年間休日には含まれていません。
「週休日」及び「週休日以外の休日」の合計日数のことを年間休日総数といいます。
(法定)年次有給休暇の付与日数/年
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ月 16日
5年6ヶ月 18日
6年6ヶ月以上 20日
労働基準法第39条では、「使用者は、その雇入れの日から起算して6ケ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定めており、「労働義務のある日に休むことを休暇」といっています。また、休暇には、法定休暇と任意に与えることのできる休暇があります。

〈法定休暇〉
法定休暇とは、法律に基づいて必ず与えなくてはならない休暇をいい、年次有休休暇とその他の法律(育児・介護休業法など)に基づいて与えなくてはならない休暇があります。
◇年次有給休暇
雇い入れの日から6ケ月間勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対してその後の一年間に10日の年次有給休暇を与えなくてはなりません。また、その後、継続勤務年数に応じて付与日数が加算されます。
会社が任意に設けている休暇の例
・本人が結婚するとき
・本人の子が結婚するとき
・本人の兄弟姉妹が結婚するとき
・妻が出産するとき
・父母、配偶者、子が死亡したとき
・祖父母、配偶者の父母、孫および兄弟姉妹が死亡したとき

◇その他の休暇
産前産後の休業、生理休暇、育児休業、介護休業などがあります。

〈任意に与えることのできる休暇〉
会社が独自に設けることができますが、必ず就業規則に記載しなくてはなりません。また、就業規則の作成義務のない会社においても、その休暇について社員に周知をしなくてはなりません。
それでは建設産業で働く組合員の労働時間と休日、休暇の実態はどのようになっているのでしょうか、毎年11月に日建協加盟組合員の25%にあたる約1万人を対象に調査している『2004年時短アンケート』の結果で、確認してみましょう。
図-1、図-2は、11月の月間残業時間から年間所定外労働時間を推計し、全産業の年間総労働時間と比較したものです。
建設産業の年間総労働時間は、95年以降増え続け、外勤者は2800時間を超えています。また、全産業平均と比較すると、その差は外勤者においては800時間となっています。(内勤者においても、その差は248時間になります)
外勤者の800時間の労働時間は、1日の所定内労働時間を8時間として換算すると100日間労働したこととなります。
このように建設産業の外勤者は他産業の労働者に比べて、如何に長時間労働をしているかがわかります。
図−1 内勤者・年間総労働時間推移
図−2 外勤者・年間総労働時間推移

〈年間総労働時間の算出方法〉
・日建協 (協定上の年間所定内労働時間+(11月所定外労働時間×12))
・全産業平均…連合「労働時間に関する調査(2004年度)」より (常昼勤労働者・加重平均  
※2004年度は調査未実施ため  2003年度数値を用いている)
次に11月の休日取得日数について、図-3をみてみましょう。
2004年11月の休日は土曜、日曜、祝日を合わせて10日間の総休日に対しての取得日数は、内勤全体で9.0日、外勤全体で5.7日となっています。外勤者の休日取得日数の内訳は、土曜日は4日間うちの平均1.5日、祝日は2日間のうち、平均0.6日しか休日を取得できておらず、11月の休日の半分に近い4.3日を休日出勤していることになります。そして、この外勤者の結果は、過去10年間で最も少ない取得日数となっています。
このように、建設産業のほとんどの企業で完全週休2日制が導入されているにもかかわらず、外勤者の多くの組合員が土曜日、祝日に休日出勤していることがわかります。外勤者の長時間労働を改善していくためには、休日出勤を減らしていくことが必要です。
図−3 内外勤と職業別 11月総休日数
次に年次有休休暇の取得状況をみてみましょう。ここでは、2003年12月から2004年11月までの1年間の取得日数を調査しています。図-4をみると、全体の取得日数の平均は2.6日で内勤者が3.9日、外勤者が1.3日となっています。厚生労働省「平成16年就労条件総合調査」の民間企業の平均取得日数8.5日に比べても、建設産業の有給休暇取得日数が少ないことがわかります。また、図-5からは、外勤者の78.2%が「取得日数0日」となっており、多くの外勤者が有給休暇を1日も取得できていないのが現状です。
図−4 内外勤別・年次有給休暇取得日数推移
図−5 内外勤別・年次有給休暇取得日数割合
以上、建設産業の労働時間、休日、休暇について現状をみてきましたが、どの調査結果においても、労働環境が著しく厳しいことがわかります。
このように建設産業の外勤者の多くの組合員は、自分では何とか改善したいと思っていても、作業所の限られた工程のなかで、「残業時間を減らすことや休日や、休暇をとることなど無理だよ」とあきらめているのではないでしょうか。
長時間労働が改善されれば、体も休まり、普段の生活においても、「時間的なゆとり」ができます。家族とふれあう時間、友人と交流する時間、趣味を楽しむ時間などが増え、「精神的なゆとり」を持つことができます。生活に時間的なゆとりや、精神的なゆとりがあれば、今日の出来事の反省点や、明日の予定について、考えることができるのです。建設工事の現場でもそうですが、物事をうまく運ぶには、今までの反省とこれからの段取りが重要です。物事がスムーズにいけば、自然と心も体も安定していきます。
生活の豊かさを実現するためには、「経済的なゆとり」は当然必要ですが、心と体の健康を確保することも必要ではないでしょうか。景気は回復しつつあるといわれていますが、一方で、以前と比べ、私たち1人ひとりの労働時間や仕事量は増加しており、働く環境は厳しい状況が続いています。しかし、何もせずにあきらめていては、何も変わりません。自分自身のおかれた労働環境について、考えてみてください。働くことや生活していくうえで生活のゆとりを得るためには、長時間労働に対して、いつか誰かが変えてくれるのを待つのではなく、自分たちで「残業を減らそう」、「休日や祝日は休むんだ」という意識を持ち、時短推進活動に取り組むことが一番大切なことです。
日建協と加盟組合では、建設産業で働く私たちの、心と体の健康確保にむけ、所定外労働時間の削減のために「新中期時短方針2004」を策定し、時短推進活動を進めています。この方針では、労使が労働時間の現状を把握し、共通の認識を持ち、長時間労働を改善していく取り組みを展開しています。皆さんの所属する組合では土曜閉所運動、作業所異動時休暇制度、有給取得促進制度、ノー残業DAYなど長時間労働の改善にむけて、いろいろな時短推進活動に取り組んでいます。ぜひ、自ら積極的に時短推進活動に取り組んでみて下さい。
日建協加盟組合員一人ひとりの時短意識を高め、力を結集していけば、少しずつかも知れませんが、必ずよい方向へ改善していくはずです。ゆとりある生活を実現していくには、私たち自らが考え、行動していくことではないでしょうか。
時短にむけての第一歩です。
2006年6月10日(土)は統一土曜閉所運動に参加しましょう。
優秀賞 優秀賞 あなたが変われば職場も変わる。 休む勇気を! 統一土曜閉所。
フジタ職員組合 新   篤
佳 作 一息つくのもプロの技
シミズユニオン 桂 真嗣
佳 作 こころ、からだ、家族のため 計画的に土曜閉所
戸田建設職員組合 明河 恭一
佳 作 休める工夫をひねり出す、みんなで取り組む土曜閉所
フジタ職員組合 角谷 和人

11月の時短ポスターのキャッチフレーズに多数のご応募ありがとうございました。
今回は212点の応募のなかから、日建協本部、そして加盟組合委員長・書記長の投票によって、優秀賞に、新 篤さん(フジタ職組)の作品が選ばれました。また、佳作に3点が選ばれました。
なお、優秀賞に選ばれたフジタ職員組合の新 篤さんのキャッチフレーズは2005年11月時短推進強化月間ポスターとなって、全国の約8000作業所に掲示されました。
建設産業の労働条件向上のために、労働時間の実態の正確なデータが必要です。
2005年11月日建協時短アンケート調査の協力をお願いします。
今年度も日建協では11月時短アンケートを実施します。建設産業に働くホワイトカラー層に対し、これだけ幅広くかつ定期的・継続的に調査しているものは他に例がなく、本調査は、建設産業に働く組合員の労働時間の実態を表す、唯一最大の資料になります。
このアンケートは厚生労働省、国土交通省、業界団体、加盟組合企業経営者にむけて、私たち建設産業の労働時間の現状を認識してもらうための重要なデータとなります。また、日建協加盟組合の時短推進活動を進めていくうえでの貴重なデータともなります。
ぜひ、私たちの労働条件向上のためにご協力をお願いします。
Compass Vol.764 一括PDFはこちら(10.7MB)

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