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〜提言「公共工事における無報酬業務を解消するために」活動報告〜

無報酬業務とはどんな業務?
 公共工事を施工するにあたって、発注者から「工事請負契約にない業務」を依頼されたことはありませんか? これまでの日建協アンケートによると、例えば、こんな声があがっています。
設計図面と現地との整合性がとれないため、図面の修正を依頼される。
設計変更にともなう工法検討や設計図面の作成、構造計算などを無償で依頼される。
本来、発注者が行わなければならない関係機関との協議・折衝業務を依頼される。
発注者内部の報告書や資料の作成を依頼される。
発注者の会計検査への対応のために、提出項目以外の書類や資料の作成を依頼される。
等々・・・
このように、本来、公共工事標準請負契約約款で発注者が行うべきとされている業務や、契約上の責任区分がはっきり明示されていないような業務を、受注者(施工者)である私たちが引き受けてしまっている現状があります。
日建協では、このような対価をともなわない契約外業務を「無報酬業務」と呼んでいます。無報酬業務は、受注者が本来なすべき業務以外の負荷がかかるものであり、私たちの長時間労働を助長する大きな要因となっています。また、不透明な契約関係として社会からの不信感の温床になっているとも言えます。
日建協の組合員を対象とする時短アンケートによると、「公共工事に無報酬業務は存在する」と回答した人は全体の72%にもおよび、そのうちの約80%が「無報酬業務に負担を感じている」との結果が出ています。

無報酬業務はなぜ発生するの?
無報酬業務が発生する原因のひとつに、契約内容のあいまいさがあります。契約図書において、その内容が明確に示されていないことがあげられます。また、工事請負契約約款に責任区分が明記されているにもかかわらず、受発注者双方にその認識が薄くなってしまっていることも考えられます。
もうひとつの原因として、意識上の問題があげられます。契約上の甲・乙との関係のなかに「発注者」の優位性を考慮してしまう片務的意識が、商習慣として身についてしまっており、受注者側の正当な主張を押し通せない現実があります。


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国土交通省の対策
日建協では、このような無報酬業務を解消していくために、これまで、発注者側労働組合との意見交換や、国土交通省地方整備局などの発注者への提言活動を行ってきました。その結果、各地方整備局においても日建協が主張する「無報酬業務」の存在を認識していることが明らかになりました。また、発注者の対応の遅れが、個々の現場の労働条件や利益、品質、工程管理等に多大な影響を及ぼすことについても問題視していました。国土交通省では、これらの問題の解消にむけて、主に契約の明確化を目的とした別表のような各種対策を取り始めています。
国土交通省の発注工事に携わるみなさんは、これらの対策をどのくらい知っているでしょうか? また、十分に活用できているでしょうか?


活用するのは私たち
日建協では、これらの各種対策がうまく運用されれば、無報酬業務は大幅に削減されていくものと考えています。そのためには、まず私たちが対策の存在を知り、活用する努力を行っていくことが必要です。その上で、もしこれらの対策が活用できないものであるならば、その原因を探り、解消していく活動にシフトしていく必要があるでしょう。
まずは、普段あたりまえのように行ってきた業務をもう一度見直してみましょう。そして、無報酬業務の存在が明らかになれば、会社や上司と協議しながら、これら対策の活用について考えてみて下さい。「無報酬業務」を解消するのは提言書ではなく、現場最前線における私たち一人ひとりの行動にかかっています。
日建協では、今後、国土交通省の発注工事に携わる組合員を対象に各種対策に関するアンケート調査を行い、運用上の問題点を明らかにした上で、国土交通省に再度提言活動を行っていく予定です。ご協力をお願いします。


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国土交通省の対策 活用のポイント
土木工事条件の明示





制約を受ける工事に関する施工条件を設計図書に明示
明示されていない施工条件、明示事項が不明確な施工条件については、契約書の関連条項に基づき甲・乙協議
現場説明時の質問回答のうち、施工条件に関するものは、質問回答書によって文書化
工事規模・内容に応じて適切に対応
(仮設については施工者の創意工夫を損なわないこと)






現場説明時の「質問事項」検討時にチェックシートを使用して質問書を作成
現場条件の確認時(現場調査・測量時のチェックリスト)の手引き
契約締結後の、契約書第18条「条件変更」の確認資料
施工途中における施工条件変更に係わる変更や新規条件の検討時の手引き
(参考)■北陸地方整備局:技術情報 http://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/jouken/index.html
     ■土工協ホームページ:協会ニュース http://www.dokokyo.or.jp/dkknews/2002/02index1.htm
土木工事設計図書の照査ガイドライン





設計図書の照査に係わる規定について
(工事請負契約書・土木工事共通仕様書の解釈)
工事請負者が実施する「設計図書の照査」の項目及び内容
設計図書の訂正又は変更に要する期間の通知
(原則14日以内)
「設計図書の照査」範囲を超える場合の取扱いについて
(発注者負担)
・チェックリストを活用した設計図書の照査
 の実施と発注者との協議
(参考)■北海道開発局:ダウンロード情報 http://www.hkd.mlit.go.jp/download/downlord.html
     ■中部地方整備局:建設技術 http://www.cbr.mlit.go.jp/architecture/kensetsugijutsu/index.htm
     ■北陸地方整備局:技術情報 http://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/jouken/index.html
工事請負契約における設計変更ガイドライン
・ 設計変更が不可能な具体的なケースの明示
・ 設計変更が可能な具体的なケースの明示
(土木工事条件明示・土木工事設計図書の照査の内容含む)
・ 設計変更の具体的な手続きフロー
・ 工事中止の場合の手続きフロー
・ 指定・任意の正しい運用についての明示
・設計変更手続きフローに則った設計変更
 の実施(書面主義の徹底)
・設計変更に伴う注意事項の周知・徹底
・工事中止の場合の手続きの周知・徹底
(参考)■関東地方整備局:技術情報 http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/tech/index1.htm
三者(発注者・設計者・請負者)会議




設計思想の確実な伝達、設計・施工条件や施工上の留意点等の協議
請負者による設計図書の照査及び現地調査が終了した時点で実施
請負者からの発議によって実施


設計変更等の協議の機会として、三者会議の開催を申し入れる
三者会議を実施することによる責任区分の明確化と設計変更の適正な実施
ワンデーレスポンス
発注者は受注者から質問・指示依頼があった場合、原則として「その日のうち(1日で対応=ワンデーレスポンス)」に解決する。また、その日のうちに解決できない場合でも、回答日を予告する。
受注者は速やかな判断が可能となるよう、できるだけ材料をそろえ、発注者と受注者が協働して工事を円滑に進める(ワンデーレスポンス)


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