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日建協では9月から10月にかけて、各加盟組合の企業を訪問し、日建協活動に対するご理解と私たちの抱える労働環境の問題点についての意見交換を行っています。今号では前号で載せきれなかった時短推進活動に対する会社側からの意見に加え、日建協の提言活動や産業の魅力化について会社側からいただいた意見をご報告します。

 

「日建協では受発注者間の契約のなかで責任区分が明確化されていない業務を受注者側で行うことが長時間労働の一因であると考えています。そこで、長時間労働の解消策のひとつとして国土交通省が打ち出している契約内容の明確化にむけた施策の活用を掲げています。」

「国交省工事については、入札前の施工条件に関する質疑回答が以前より詳細になっている。そういう点で明確化は進んでいる。しかし、用地未買収、埋設物調査の不徹底等の部分が解決できてないため、工事が進まないというケースも多い。」

「全面的に賛成とは言えない。設計変更を認めてもらうためには必要資料をこちらでまとめる必要もあるのではないか?また、現実的な問題として設計変更時の図面の直しや測量図などは発注者側に対し技術的なサポートもしなければならない。全部任せてしまうと工期的にも間に合わなくなる。」

「以前役所との設計変更協議に国交省のガイドラインを提示してうまくいったことがあった。」

施策広報用のリーフレット(※)についていかがでしょうか?日建協では職制を通じて施策を浸透させていくことが大切であると考え、そのツールとして作成しています。」(※施策広報用のリーフレットについてはCompass vol.779をご参照ください)

「分かりやすいリーフレットだ。特に施策を知らない職員への広報としては有効だと思う。ぜひ活用したい。」

「現場の職員は対応すべき業務がどこまでか分からずに、依然として従来どおりの請け負け的な発想で業務を行っている傾向にある。ぜひ活用したい。」

「受発注者間の片務性について会社としてはどう考えますか。」

「商慣習として片務性の歴史があった。またそれを業界が甘んじて受けていた。発注者側の意識が変わるには時間がかかるだろう。」

「施工条件については『協議する』や『検討する』は認めないようにして文書として残す。」

「国交省の施策を武器として仕事を進めていくことが必要だ。設計変更も勝ち取り易くなる。「契約内容の明確化」を主張しながら設計変更をとることが重要だ。」

「現在、国交省では短工期をはじめ、発注者の不適正行為を防止するガイドラインを作成・運用しようとする動きがあります。」

「国交省がガイドラインにおいて標準的な工期を示すことが望まれる。受注者側としても、品質に悪影響を及ぼすような短工期は怖い。」

「お願いベースのガイドラインでは効果が薄いのではないか。罰則規定などを盛り込んだ法制化が実現すればいちばん良い。」

「受発注者を含めた産業全体の適正工期に対する意識の高揚にはつながると思う。」

「適正工期実現のためには企業経営者側の意識を高めることも必要です。社員の休日の確保のためにも、過度な短工期受注を減少させるよう、ご協力をお願いします。」

「現在の短工期はマンパワーではすでに限界に近い。しかしこの問題は競争原理主義がその根本にあるため、抜け駆けする会社がでてくるだろう。1社だけでは取り組みにくい。」

「この取り組みは業界としての連携が大切である。実現には時間がかかるが言い続けることが必要だ。日建協には引き続きの活動をお願いしたい。」

「日建協では、ゼネコンの仕事内容を誤解したまま就職を敬遠している学生に対して実際の私たちの仕事内容を伝える出前講座を開催しています。」

「業界としても取り組まなければいけない問題である。土木工学科でもゼネコンが何を行っているのか分からないという学生がいる。」

「大学側が生徒確保のため、施工管理ではなくデザインなどを優先して教えている傾向もある。」

「インターンシップを採り入れて、学生に実際の現場を見てもらうようにしているが、日建協の出前講座も非常に良い取り組みだと思う。」

「出前講座後に受講した学生からアンケートを集めていますが、長時間労働や休暇が少ないなど労働環境に不安を感じて、入職を躊躇する学生も多くいます。」

「最近では若年層の離職の問題も危惧している。労働環境は離職動機のひとつと思われるのでぜひ参考としたい。」

「若い人が入ってこなければ産業は活性化しない。学生のやりがいに答えるためにも、我々が魅力を上げていかないといけない。賃金と休日はやはり大切である。」

  日建協秋季会社訪問

最後に締め切りの都合上、前号で紹介しきれなかった時短への取り組み事例を紹介します。

・閉所率が低迷していたこともあり、力を入れようと各支店長に対して指示した。さらに昨年から会社と組合で9月にも独自の閉所日を設け、労使協働で取り組んでいる。
 
・具体的な休みとして、従前からの第2土曜の全休に加え、GW、夏季休暇と冬季休暇の9連休を促進するために計画有休を制度化した。若手は有休が10日しかないので不足分を付与する予定である。
 
・当社では、毎月、安全衛生協議委員会で長時間勤務者は報告を上げるようにしている。同じ者が続いて報告される場合は、支店長・部長から改善通達を出している。
 
・繁忙期間になる着工時と竣工時に現場支援をできる部隊を置いている。
 
・今年度より作業所長も異動時休暇の対象となるよう制度を拡大した。


今回の会社訪問を通じ強く感じられたことは、私たちの労働環境について、会社側も「こうしたい」「こうありたい」という改善に向けた意欲がこれまで以上に高まっている点です。これはワーク・ライフ・バランスをはじめとして現在の社会全体意識の流れが、労働環境についてあらためて考え直す方向に向かいつつあることの現われであると思います。こうしたことから今回の会社訪問でも、私たち日建協の活動内容に対し多くの会社から賛同の意見を得ると同時に、労働環境の改善に向けた方向性を同一にした非常に有意義な意見交換を行うことができました。日建協ではこの気運の高まりを損ねることなく、今後も会社側との直接対話の機会を積極的に設け、私たちの労働環境の改善に活かしていきます。

  

日建協秋季会社訪問

Compass Vol.780 一括PDF(15.6MB)
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