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最終回(連載3回目)となる今回は、「公共工事品確法(以下、品確法と呼ぶ)」の概要及び今後のあり方について小澤一雅東京大学教授にお話を伺いました。
小澤教授は、2005年3月に成立した品確法の施行をうけて、国土交通省が立ち上げた「公共工事における総合評価方式活用検討委員会」の委員長として「公共工事における総合評価方式活用ガイドライン」をまとめられました。 ⇒小澤教授のプロフィール |
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公共工事品確法@・・・背景と概念/公共工事品確法A・・・具体的事例と影響 |
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小澤教授(左)と宮野日建協議長(右) |
日建協 品確法において、発注者は「発注関係事務を適切に実施し、必要な職員を配置すること」とうたっていますが、公務員数が縮減しているとの声もあり、問題は発生しませんか。
小澤教授 達成したい目標がある場合、これを実行するにあたって障害があったとしても、何か方法を考えないとだめではないでしょうか。例えば、書類が増えるからこの目標は達成できませんでした、ということで果たしていいのでしょうか。本当に、品確法を達成したいと思うなら、書類や仕事が増えようが、目標達成のために何か方法を考えなければならないと思います。「品確法の理念が受け入れられない、そんなことをやるのはナンセンスだ。」と言うなら理解できます。しかし、「この理念は賛成だが、それを実行すると不具合が生じる。だから、この法律は悪い法律だ。この法律に沿って実行するのはやめましょう。」と言うのは本末転倒のような気がします。全ての発注者がこれをどこまできちんと真摯に受け止め、実行する気があるかが問われているのだと思います。
品確法では、「実行が困難な発注者の支援も考えましょう」としています。
日建協 技術力を重視することにより、工事の受注が大手ゼネコンに集中することはないですか。
小澤教授 結果的に技術力がある会社が選ばれることについては、問題はないと思います。競争社会の中では、受注できる会社とそうでない会社が出るのは仕方がないことです。
一方で、技術者個人の問題は別に議論できるのではないでしょうか。良い技術者であれば、企業が存続できなくても次の職場があり、技術者個人が活躍できる方策は、企業の淘汰の論理とは別に考え得ると思っています。今後は海外のように、技術者の流動性を上げる方法を考えて良いのではないでしょうか。今回の総合評価の中では、企業の施工実績・成績を評価する部分と、そこに配置する技術者を評価する部分があります。今後、良い人を雇えば仕事が取れる社会に変わってくれば、個人の資格・経験が適正に評価される社会になることをポジティブに考える人も増えてくるのではないでしょうか。
日建協 品確法における、発注者に対しての制度設計、枠組みはでき上がったのでしょうか。
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小澤教授 |
小澤教授 品確法に対する制度設計、枠組みは、各発注者がそれぞれ決めるものです。総合評価方式のガイドラインでは、あくまで、一例として示しているだけで「実際の評価方法や配点方法に関しては、各地方整備局(国交省)及び各自治体の状況に応じて自由に決めて下さい」としています。極端に言うと、工事ごとに発注者が、きちんと一つずつ考えてくださいとしています。ただ、何も示さないと分からないので、ガイドラインには評価方法や配点方法の例を示しています。大量に社会資本を整備しなければならない時代は、標準化してマニュアルに従い、みんなが同じ様に行うことでメリットが大きかったと思います。しかし、これから先、社会資本が必ずしも増えないという状況の中では、一つずつの工事を目の前にして、この工事をどういう評価項目にしたらいいのかを発注者それぞれが考えることが本来の姿だと思います。
日建協 発注者をサポートする体制はいつまでに固まってくるのでしょうか。
小澤教授 時期については、良くわかりませんが、各地域ブロックで体制整備を考えているようです。関東地方に関して言えば、関東地方整備局の主導で、県や市町村をサポートする仕組みを考えているようです。 |
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日建協 技術力を評価する際の加算点についてどうお考えでしょうか。
小澤教授 いままで総合評価方式を実施したことがない発注者は、従来、価格のみで判断していた入札に、技術力の評価というものが加わることに対し不安があると思います。技術評価をどれくらい入れたらいいのかわからないので、最初は技術に関する点数が少ない所から始まるのが普通ではないでしょうか。実際にやってみて、いろいろと試行する中で、それぞれちょうどいい所(加算点と価格のバランス)を見つけてもらうことが大事だと思います。工事の特性を見極め、応札する企業がどういうところかを睨みながら、どういう配点、どういう項目にして、どういう加算点と価格のバランスにしてやるのが一番いいかを発注者は考える必要があります。今年度試行した結果をうけ、総合評価方式に関する検討委員会では来年度も継続して議論し、不具合があれば直す、また、いい事例があれば取り入れる、ということになっています。
日建協 評価の部分で「優・良・可」とありますが、簡易的である、といった指摘はないのでしょうか。
小澤教授 総合評価方式は契約の相手を決める入札の方式です。誰を契約の相手にするかを合理的に決められる方式であれば良く、評価の仕方はそれぞれの自治体が考えるべきものでしょう。そういう意味では、複雑でなく、わかりやすく、シンプルな方が良いと思います。 |
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日建協の宮野議長 |
日建協 新聞記事等を見ても、品確法の施行以降、逆転(価格が高い企業が落札)する実例がほとんどないようですが、今後はどのように進んでいくとお考えでしょうか。
小澤教授 結果を見て、本当に品質・技術力の評価が反映された結果になっているのかを、発注者は分析することが重要でしょう。入札へフィードバッグして、もっと加算点を上げたほうがいいと言うのであれば上げるし、十分だということであればそのままとなる。つまり、入札結果をフィードバッグし試行錯誤をして、常に見直すことが必要だと思います。
日建協 今後の「品確法」のあるべき姿とはどのようなものでしょうか。
小澤教授 あるべき姿という確立されたものがあるわけではありません。現場にいる担当者がどれだけ意識を持って目の前にある仕事を変えていき、実際の取り組みにどれだけ反映させることができるかにかかっていると思います。 |
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日建協 加盟組合員41,000人にむけてメッセージをお願いいたします。
小澤教授 技術者なり技術力を持ったところが報われる社会にするため、普段から技術力を高める努力をすることが重要だと思います。 |
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小澤教授とのインタビューで、品確法は、価格競争ではなく技術の競争であること、つまり、企業の「技術力」が発揮できる土台(制度)ができたことが確認できました。
また、品確法について、私たち受発注側にむけたメッセージもいただきました。 まずは、発注者が理念にむかってそれを実行し、受注者はそれを果たしていくよう努力しなければならないのではないでしょうか。
品確法は、今後も少しずつ見直されて行く中で、組合員のみなさんの業務に深く係わっていくでしょう。日建協では、今後、組合員みなさんの職場で起きている事例も取り上げ、品確法の調査・研究に取り組んで行きます。
最後に、この紙面をお借りして、今回の取材にご協力していただいた、小澤教授に感謝申し上げます。 |
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