賃金交渉を行う上で、まず、「賃金」とはなにか? 賃金水準を決定するものはなにか? について考えてみましょう。
●賃金のもつ3つの性格 (1)生計費としての性格(労働力の再生産費用)
賃金は、労働者たるわたしたちにとって、唯一の生活の糧です。わたしたちが生活していくうえで、必要なお金がなければ、労働力は再生産されません。
(2)コストとしての性格(企業の生産活動の費用)
企業は、資本と労働を投下して生産活動を行うことで新しい価値「付加価値」を生み出します。経営者にとって、賃金とは、この労働にかかるコスト(人件費)の一部となります。
※人件費には、賃金の他、社会保険料などの法定福利費や福利厚生費、募集採用・教育訓練費などがかかります。
また、生み出された付加価値は、資本と労働の双方に還元され、拡大された資本と労働が再び生産に投下されてより大きな付加価値を生み出していくことになります。労働によりどの程度の付加価値が生み出されたかを見る指標として付加価値生産性(生産性)があります。
付加価値生産性(生産性) =付加価値/従業員数
(3)労働対価としての性格(労働市場における需給調整)
一般的にものの価値は市場での需要と供給のバランスによって決定されます。経済学的に言えば、労働力も労働市場における需要と供給のバランスによって決定されるべきものとなりますが、賃金のもつ生計費としての性格から、労働力は単なる商品とは異なり、いったん到達した賃金水準を簡単に下げることはできません。
そこで、労働市場においては、供給側の「生計費」と需要側の「生産性」の間で調整が必要となります。この調整において、労使関係(労使交渉)が強い影響力をもつものとなりなります。
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