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福島:

最近、日建連さんとはいろいろな形で連携する機会が増えています。疲弊した建設産業にとって労使一体で取り組んでいることを、日々頑張っている組合員の方々に発信したいと思い今回の企画に至りました。本日はよろしくお願いします。

福田:

こちらこそ、お願いします。

福島:

今回の衆議院議員選挙において、民主党が「コンクリートから人へ」とうたっていますよね。私個人としては、技術者のはしくれでもあるので、この言葉が気になって仕方がないです。常務理事はどのようにお感じになりますか。

福田:

マニュフェストで公約してしまったから仕方ないのかも知れないが、建設業にしてみればかなりのアゲインストですね。業界をあげてダムやトンネルなど世界に誇れる土木技術や、地震国である日本にとっての免震・耐震技術の重要性も、社会や政府にもっとアピールしなければいけないでしょう。

福島:

確かに、日本の建設産業はアピール度が少ないと思いますが、今回の政府の言い方はあまりにも露骨すぎると思います。せめて「箱モノから人へ」としてもらいたい。

福田:

個人的には、この言葉は一時的な流れであって、長くは続かないと思いますよ。

福島:

それに、新政府の見直しの手法は、インフラ整備というものを平面的に見ずにピンポイントで見て善し悪しを判断しているように思えます。これでは本来の意味でのインフラ整備は出来ないと思います。
そういった政治的な影響もありますが、社会全体が大きく変わろうとしている今、今後の建設産業はどのような方向に向かうべきだと考えていますか?

福田:

非常に難しい問題ですね。国土交通大臣が改修や維持管理に重点を置くべきと言っているので、環境に配慮しながら政府の言う方向に進むのも大切だと思います。
ただ、インフラ整備は重要な課題だし、災害が起きてからでは遅い。必要なインフラ整備については団体をあげて政府と話し合っていく必要があると思っています。

福島:

産業全体として新しい働き方を模索し自助努力する必要があると思います。海外進出の話もあり、もっと欧米の世界標準の働き方も考えて産業で広報していかないといけないと思いますが。

福田:

そうですね。欧米のゼネコンの動きや労働者の働き方を研究し、その結果を広報していかなくてはいけない。国によって施工方法も働き方も違いますからね。

福島:

どこの働き方が一番良いのかということは一概には言えないと思います。どの国も独自のカラーを持っているので、その中でどこの働き方が一番日本にマッチしているか、もしくは混ぜた方がいいのか、と様々な切り口から検討する必要がありますね。また、契約面も含めて考えていかないといけないでしょう。

福田:

政府はゼネコンに海外に出て行けというが、契約関係などをしっかり研究してからではないと、外国勢に押し切られて、また失敗してしまう結果になってしまうでしょう。いろいろと検討すべき課題が多いと思いますね。

福島:

ゼネコンで海外施工の経験があるのは、全体からするとほんの一握りで、ほとんどの人が海外での働き方を知らない状況です。大臣が「ゼネコンは海外に行け」というのを単純かつ急激に受け入れるのは産業としての魅力低下につながってしまうし、職員が自分の今後の働き方を考える上で不安を抱えて働くことになってしまいます。更には、離職までも促進しかねないでしょう。

福田:

今一番心配なのは、日建協がいっている「ワーク・ライフ・バランス」だと思います。残念なことに、建設業に従事している人たちはみんな将来に不安を持ってしまっています。雇用の不安や、家族を養わなきゃという不安もある。従業員にとって、愛情を持って働ける職場があれば、家庭にも愛情が持てると思っています。つまり、従業員を大切にする意識が企業にあれば生産性の向上につながり、企業は成長します。

福島:

かつて建設業は雇用の受け皿でしたが、今では建設業を見限ってこの業界から逃げ出す人が多くなっています。デフレスパイラルのような現在の建設産業の状況をどこかで断ち切りたいですね。
今のように時間外労働に依存したような働き方や企業としての従業員の働かせ方では、決して断ち切れるものではないと思っていますが、今後の建設産業の在り方について、何かお考えはありますか。

福田:

仕事が生き甲斐であった時代が長いことありましたが、今では仕事も家庭もどっちも大事でないといけない。休みにしても、ただ体を休めるのではなく、趣味に没頭したり、遊びに行ったりして活力を蓄えないとだめです。
仕事でも同様で、単に仕事をする事が喜びではなく、何かを成し遂げる事が喜びだと思うし、前提として目標が無ければいけないと思います。それは、会社が経営理念に掲げなければ、従業員も目標が掲げられないので、そうすることが、会社として重要だと思います。

福島:

日建協の統一土曜閉所運動も会社側が理解を示してくれて、一緒に取り組んでくれたことが、現在の好成績に繋がっています。ワーク・ライフ・バランスも同じように会社が経営理念として取り入れ、トップダウンで推進することが重要だと私も思っています。

福田:

ワーク・ライフ・バランスを経営理念として取り入れることは、決して大企業だけが行うことではなくて、言わば少子化社会における企業の社会的責任だと思います。例えば、コミュニケーション不足によって、交渉下手な職員が増えています。これは、職場や家庭での会話が不足している事なので、コミュニケーションマニュアルなどを作っても面白いと思っています。そうすることが、うつ病対策やメンタルヘルスの充実にもつながると思います。

福島:

面白いですね。古い産業だから加盟企業が大きく変わるため手助けを業界団体が行うということですね。日建協でも、ワーク・ライフ・バランスを推進する手段の一つとして女性技術者懇談会を開催して、女性の意識を加盟組合に発信しようと思っています。

福田:

建設産業の現場で働く女性は、大変だと思います。その業界の固定概念も変えないといけないですね。実は個人的にですが「子育てハンドブック」のようなものの作成も考えなくてはいけないと思っています。

福島:

日建連は「建設技能者の人材確保・育成に関する提言」を出されていますが、日建協としてもこの提言にぜひ協力したいと思っています。提言を更に盛り上げるために、どのような協力ができますか?

福田:

こちらとしてもぜひとも協力していただきたいと思っています。例えば、作業所閉所と快適職場に関しては、1月に要請文を加盟企業に発信し、その内容を各社の新年度方針に盛り込んでいただくべく、現在作業を進めているところです。この辺の話は日頃から取り組まれている日建協にご意見・ご協力をいただく必要も出てくるでしょう。
快適職場認定の促進については、日建連として申請を促す現場について何らかの基準が必要であると考えています。また、土曜閉所については、4月に閉所調査等を予定しているので、日建協にご協力いただく場面も出てくると思います。

福島:

どちらも日建協としてお役に立てる課題だと思いますので、ぜひ、実現に向けた協力をしていきたいと思います。それと快適職場の申請にあたり、日建連として何らかの基準をという話ですが、通常の認定基準に加え、例えば労働環境や業務改善アイデアなどを入れてみるというのも面白いと思います。

福田:

本当に建設業は正念場を迎えていますね。

福島:

縮小したとしても、決して無くなるはずのない産業ですが、いろいろな働き方を含めて産業全体に構造を考え直す時期であることは確かですね。

福田:

政権が変わり建設業のあり方を問われています。それは真摯に受け止めて、きちんと努力しなければいけないと思っています。必ず明るい展望は開けていきますよ。日建協の組合員の方々も諦めないで頑張って欲しいと思います。
魅力ある産業に就いた気持ちを忘れずに、一緒に明るくやっていきましょう!

対談のお相手の紹介

社団法人 日本建設業団体連合会(日建連)
常務理事 福田 雄一氏


1973年、大成建設(株)入社。
同社建築営業本部統括営業部長を経て、2009年に日建連専従の常務理事に就任。現在は、主に労働安全衛生・防災を担当して、積極的に建設産業の労働環境向上に取り組まれている。

Compass Vol.784 一括PDF(15.6MB)

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