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「毎日家に帰る時間が遅い」とか、「休みの日にも仕事をしている」といった忙しい日々を送っているなか、みなさんは家族とのコミュニケーションや気分転換に何をすることが多いですか?
人が生活していくのに、昔から「衣・食・住が基本」、と言われています。住の部分は私たちが直接その建設にかかわっている部分ともいえます。今日は残り2つのうち、「食を構築する」話ということで、料理をこの誌面で行ってみましょう。
ちなみに、私は普段ほとんど料理をしない人間です。読者の中には趣味が料理の方や、素晴らしい腕前の方もいらっしゃるかもしれません。そういうみなさんは優しい目を持って読んでください。 |
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料理といえばみなさんはどんな料理を思い出しますか?
日本のお正月といえばいろいろないわれを持つ料理が並ぶおせち料理、世界三大料理といえば中華料理・フランス料理・トルコ料理、・・・と、まさに食文化という言葉にふさわしく、世界各地の文化の数だけ料理の種類があるのではないでしょうか。今回、私は韓国料理にチャレンジすることにしました。
4年前のワールドカップ日韓共催、あるいは、「冬のソナタ」ブームなど、20世紀には『近くて遠い国』と呼ばれた隣国との交流は、ここ数年、文化面を中心に盛んになっています。東京・新宿には、韓国関係の物販店や飲食店が数多く並ぶエリアがありますが、今回の料理の準備のために私が土曜日の夕方に行ったときも、市場やタレントショップはたくさんの人で大賑わいでした。
私自身もサッカー観戦などで何度かソウルを訪れる機会がありました。市内を流れる漢江に沿って高層マンションが林立する大都会でありながら、その一方で、食品や衣料品などを扱う東大門市場では、雑然としながらも活気のある様子であったことが印象に残っています。ハングルが読めないので、現地では看板やメニューを見ても理解できなかったのはとても残念でしたが。 |
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ところで、韓国料理といえば、まず頭に浮かぶのはキムチではないでしょうか。たっぷり入った唐辛子による真っ赤な色がイメージさせるとおりの辛い料理。キムチに限らず、チゲ(鍋物)やトッポッキ(韓国風の餅)など、唐辛子とその辛さこそが韓国料理の定番と思っている方も多いと思います。
しかし、韓国料理では昔から唐辛子をふんだんに使っていたわけではないことをご存知でしょうか。唐辛子は、16世紀後半、豊臣秀吉の朝鮮出兵が行われた前後に、朝鮮半島に伝来し、本格的に食事に用いられるようになったのは18世紀になってからのこと、と文献には記録されているそうです。
数年前に韓国で大ヒットし、その後、台湾や香港でも大ブームとなり、最近は日本でも放送している「大長吟」(日本でのタイトル「宮廷女官チャングムの誓い」)というドラマがあります。15世紀という男尊女卑が強かった時代に、男性しかなったことのない朝鮮国王の主治医を女性ながら勤めた、という記録が残されている一人の女性をヒロインとした時代劇です。ドラマでは、主人公は医術の道を歩む前に料理の修業をしていた、という設定になっています。そのため、宮廷での料理のシーンが多く登場するのですが、唐辛子を使った料理が全くと言っていいほど出てきません。
例えば、その当時は白菜(スンチェ)が野菜でなく薬草として扱われていたのですが、それを使ったキムチが出てきた時も、今のような唐辛子色ではなく、水キムチという、一見すると野菜スープのような料理でした。時代考証としてそういう背景があったということを最近知りました。 |
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キムチやカルビは確かに韓国料理の定番。でも、その次に外せないのがプルコギ! 韓国料理の中でも辛くない食べ物の代表選手です。定番韓国料理のひとつ、チヂミは、平たくいえば韓国版お好み焼き。日本でも韓国家庭料理店、焼き肉店、あるいはお祭りの屋台などでもよく見かけますし、普通のスーパーで「チヂミの素」が売られていたりしますので、ご存知の人も多いでしょう。それでは「プルコギ」と「チヂミ」について少しだけ紹介します。
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プルコギ |
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そもそもプルコギとは?
中国は遙か昔の紀元3世紀の晋の時代、重要なお客が来たときにもてなしていたのが串に刺した味付け肉(メクチョッ)。そのメクチョッが高句麗(コグリョ・紀元前1世紀〜紀元7世紀)に渡り、たっぷりの胡椒とニンニクに加えて高句麗の人々が開発した独自の醤(ジャン)で味付けされた高句麗式メクチョッとなりました。その高句麗時代の肉料理が、肉に味をつけてから調理するという点で現代のプルコギの元祖だそうです。
山型の鍋で焼いたアツアツを、皿に盛らずにそのまま食べるのが流儀です。本来の韓国風焼き肉はこれのことを指すとも言われ、肉にたれを付けて網焼きで焼くスタイルは、Japanese-Korean BBQとも呼ばれるややこしい食べ物だとか。韓国では鍋に残った漬けダレをご飯にかけて食べることもあるそうです。
焼肉というと「カルビ、ロース・・・」というイメージもあるかと思いますが、栄養のバランスを考えると、野菜と一緒に焼いて食べるプルコギが私のお勧めです。
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チヂミ |
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チヂミとパジョン
「チヂミ」は、ソウルではどちらかというと「ブチンゲ」という名前で親しまれていて、海鮮類やお肉・野菜などと小麦粉をいっしょにし、鉄板を使って油で焼き上げる、まさに日本のお好み焼きに似たお料理のことをいいます。日本ではよく、「チヂミ」と「パジョン」が混同されますが、ニラを主に使用したチヂミとは違い、パジョンはネギを主に使用したものを言います。他にも緑豆をひいて生地にして焼き上げる「ピンデトッ」、法事のときに供える「チョン(魚や肉・野菜を卵や小麦粉をまぶして焼き上げるも)」も「チヂミ」の仲間です。ソースたっぷりの日本のお好み焼きも美味ですが、あっさりしたチヂミもおいしいと思います。 |
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今回の食卓には、この二品と一緒に、新宿の市場で買ってきたキムチとお酒、そして炊きたてのご飯が並びました。お酒はマッコルリという、白色をした少し甘い韓国のお酒を買ってきました。マッコルリとは「荒っぽくこした」という意味からきた言葉だそうで、米に小麦を混ぜて発酵させるとできる、澄んだ部分と濁った部分を取り分けしていないお酒です。アルコール度数はそれほど高くないようです。朝鮮半島では昔からこのような酒が一般家庭で広く自家製造されていたそうで、その点も日本のどぶろくと似ています。「東アジア稲作文化圏の国」という共通項を感じました。では実践! |
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漬けダレを作る
牛肉400gに対して、次の分量で漬けダレを作ります。
水・400ml、醤油・50ml、酒(赤ワイン)・75ml、ごま油・大さじ1、砂糖・大さじ3、リンゴジュース・50ml
これにすりおろしたニンニクを加えます。
ジュースが加糖の場合などは砂糖の量を調整した方がよいかもしれません。ただ、「少し甘くした漬けダレの方がおいしい」と思います。 |
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肉と玉ねぎを漬け込む玉ねぎは薄切りにします。今回、料理初心者である私は、「安全のため」包丁を使わずにスライサーで涙を流しながら薄切りにしました。
玉ねぎと肉を漬けダレに入れ、揉みこみます。
キノコとニラはお好みで漬け込んでもかまいません。(今回は漬け込みませんでした。)
少なくとも30分、できれば2時間くらい寝かせておきます。
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焼く準備をする
今回は韓国に遊びに行った友人からプレゼントされたプルコギ用の鍋を使ってみましたが、ホットプレートを使っても作ることができます。 |
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さあ調理!
漬けこんだ肉と野菜、それに、キノコとニラを加えて焼きます。
漬けダレも一緒にダイナミックに!
プルコギ鍋の場合、高くなっている鍋の中央部分で焼くようなイメージです。
春雨も入れてください。 |
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出来上がり
肉に火が通ればOKです。
お好みでコチュジャン(唐辛子味噌)をつけるとおいしく食べられます。
サンチュやレタスで肉と野菜を巻いて食べるのも良いと思います。 |
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ジャガイモとニラの準備ジャガイモをおろし器ですりおろします。
ニラは3等分の大きさに切ります。 |
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「チヂミのタネ」作りすりおろしたジャガイモに小麦粉を加え、よく混ぜあわします。
塩とうま味調味料を加え、味を調えます。 |
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さあ調理!フライパンにごま油を敷いて熱します。
熱したら「チヂミのタネ」を流し込み、表面にニラを載せます。
色よくこんがりと焼けたら裏返し、両面とも火が良く通るまで焼きます。
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出来上がり焼き上がったらお好みの大きさに切ってください。切り方は放射状ではなく、四角に切るのが韓国風です。
酢醤油にごま油を少々加え、それをつけて食べるのがお勧めです。
お好みでコチュジャンもご一緒に。
では、いただきます !!
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「食を構築する」料理の話ということでここまで書いてきましたが、本当に構築しているのは「家族のコミュニケーション」なのかもしれません。人間が食べ物を料理して食べるのは、きっと「生き物として生きていくためだけに食べている」のではないからでしょうから。
料理を作って家族で食卓を囲んで食事をしながら会話をする、こういう機会が少しでも増えるようにしていければ、と思いませんか?
例えば、韓国料理の次の日は、「寒くなってきたから、今日は寄せ鍋をみんなでつつこうよ」という風に…。
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参考資料日本放送出版協会 韓国ドラマガイド 「宮廷女官チャングムの誓い」
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