本文へジャンプ
組合員のみなさん、Compass6月号(Vol.772参照)で紹介した建築作業所の労働環境改善にむけた提言書「民間建築工事の『4週8休を含む不稼働日を考慮した工期設定』の実現にむけて」が完成し、日建協では関係機関に対して提言活動を開始しました。
今回は、提言書で示している公共工事と民間建築工事の工期設定の考え方の違いをもとに、どうして4週8休を含む不稼働日を考慮した工期設定(以下、適正工期という)が必要なのか、あらためて考えてみましょう。
国土交通省は公共工事において、建設産業における住宅・社会資本整備の円滑な推進及び建設産業の健全な発展という観点から労働時間短縮にむけた支援措置として「4週8休を含む不稼働日を考慮した工期設定と契約条件への明示」を通達(☆1)しています。 つまり、祝日、土曜、日曜及び降水(降雨・降雪)等による作業ができない日を、契約段階から予め工期内に見込む、というものです。
☆1「平成9年度以降の直轄工事の工期設定及び作業不能日の条件明示について」(平成9年5月21日/建設省技調発第97号)
1.工期設定について
(1)工期設定については、4週8休(完全週休2日制)対応とする。
(2)週所定労働時間40時間制に対応した適正な積算を実施する。
2.作業不能日の条件明示について
降水(降雨・降雪)等による作業不能日数を特記仕様書に条件明示するものとする。

特記仕様書への記載例
工期は、雨天・休日等(138)*日を見込み、契約の翌日から(365)*日間とする。なお、休日等には日曜日・祝日、夏季休暇及び年末年始休暇の他、作業期間内の全土曜日を含んでいる。
注)*日は、具体的な日数を記載すること。
▲このページのトップへ
一方、民間建築工事では、民間契約約款や建設業法に作業不能日(以下、休日条件という)を明示することが義務づけされていないため、ほとんどの契約において休日条件が明示されていません。そのため、日建協の調査(建築工事の作業所アンケート(2007年2月))によると、日建協加盟組合の民間建築工事の平均的な工期は12ヶ月であり、その工事における休日条件は4週4休(日曜日、祝日、お盆休暇、年末年始休暇)が8割を占めています。
つまり、土曜日と降水(降雨・降雪)等による作業ができない日を、契約工期に見込んでいない、ということです。
▲このページのトップへ
では、この考え方の違いが工期にどれだけの影響を与えているのでしょうか。 民間建築工事と公共工事の休日条件を比較したものが表1です。これをみると、公共工事の年間実働日(作業を行う日)が227日であるのに対し、民間工事ではなんと288日にも上ります。これを1ヶ月の平均実働日に換算すると、それぞれ19日と24日になります。
この月平均実働日の違いをもとに工期の比較をしたものが表2です。これより4週4休を休日条件とした民間建築工事の工期設定(12ヶ月)を適正工期に換算すると15.2ヶ月になっています。 つまり、本来見込むべき不稼働日が3.2ヶ月も短縮された短工期設定となっていることがわかります。
▲このページのトップへ
建築外勤者の長時間労働の大きな原因は、過度な短工期設定により、現場が閉所(作業を休止し組合員が出勤しない日)できず、交代でも休日が確保できないことです。日建協の調査(建築工事の作業所アンケート(2007年2月))によると、「短工期が職員の労働環境に与える影響は何か」という設問に対し、6割強(図1)もの人が健康障害を危惧しています。そして、約5割の人が「家族とのコミュニケーションの時間が持てない」と回答しています。
▲このページのトップへ
短工期でも土曜日に交代で休めれば、休息が確保できますが、現実はどうでしょうか。閉所回数と休日出勤時間の関係をみてみます(図2)。閉所回数の少なさに比例して、特に休日出勤時間が増加しています。
このような短工期で休日出勤している現状では、作業所内で交代で休みをとるにも限界があり、企業内の努力だけでは解消が難しい状況であることを示しています。
しかし、この図をよく見てみて下さい。逆に、全作業所が10回閉所したら、黄色で表示している休日出勤時間がなくなり、厚生労働省が示す過重労働の目安45時間/月に近づきます。
▲このページのトップへ
日建協は、休日出勤時間を減少させるためには、土曜日に現場閉所し所員全員で休息をとれる適正工期が必要と考えます。
その理由として、公共工事と民間建築工事とも、密閉された工場ではなく、自然環境の影響をうけながら屋外で作業している同じ建設工事と考えるからです。
そこで日建協では、公共工事の考え方を民間建築工事にも適用し、建設産業全体として取り組む必要があると考え、産業に関る関係者(国土交通省、厚生労働省、発注者、業界団体、企業経営者)に対して、その必要性を訴えています。7月から活動を開始し9月末の段階で、厚生労働省と5回、国土交通省と1回、発注者関係と2回の提言活動を実施しています。
厚生労働省 労働基準局 勤労者生活部への意見発信
国土交通省への意見発信
▲このページのトップへ
まずは、忙しく休めないではなく、休むために職場でどう協力しあえば良いかを個々人が考えてみることから始めましょう。 次に、作業所において工程表を作成する際に、4週8休で工程を組み、どうしてもスケジュールが納まらない場合のみ土曜を作業日に組み入れるという考え方に切り替えてはどうでしょうか。具体的には、1ヶ月の稼働日を24日ではなく、19日にどうしたらできるかを考えてみませんか。
一人ひとり休もうという意識をあきらめることなく持ち続け、組合員のみなさん、加盟組合、日建協が一緒になり産業内外に声を発していきましょう。 そして、「働きがい魅力ある建設産業」 を私たちの手でつくっていきましょう。

提言書の詳細については、こちら(A3/1.8MB)
を参照してください。

Compass Vol.774 PDFはこちら(9.77MB)

●このページのトップへ
◆ホーム◆Compassバックナンバー

   Compass774