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発注者が受注者に対し、優位的な立場に立つ関係性により本来発注者が行うべき業務を受注者に行わせることを、日建協では「無報酬業務」と名づけています。日建協ではこの無報酬業務を解消すべく、国土交通省が打ち出している施工円滑化にむけた各施策のさらなる活用を進める提言を、地方整備局に対し行っています。
今号では、2011年5月から7月にかけて行った、地方整備局への提言活動の結果を報告します。
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日建協では、国土交通省直轄工事の作業所を対象に、国土交通省の各施策の運用実態を調査しています。各施策の認知度は年々あがってきているものの、活用はまだまだ進んでおらず、無報酬業務を行っていると回答する作業所の数も、同水準で推移しています(図-1)。
活用が進まない要因のひとつとして、現場レベルにおける発注者側担当者と受注者側担当者の間の、各施策に対する「認識のずれ」があげられます。その解消にむけた提案として、施策の勉強会を発注者と受注者が同じ場所、同じ内容で開催することなどを地方整備局に対して訴えました。
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(1)三者会議の更なる活用にむけた提案
三者会議は、その有効性を感じたとの回答が約8割の作業所から寄せられています。しかしながら、図-2に示すように実施状況については、「受注時のみの開催」「開催されていない」などの声があり統一がはかられていないことから、その統一を提案しています。
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・作業所アンケートの「三者会議は開催されたか」の設問で、開催されていない作業所は
無いと認識していた。(九州)
・三者会議に該当する取り組みとして「技術調整会議」を、コンサルタントが出席しない
形態として「工事円滑化会議」を設置している。(北海道)
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(2)設計変更ガイドラインの更なる活用にむけた提案
設計変更業務は、無報酬業務が最も発生しやすい業務です。図-3に示すように設計変更ガイドラインの活用もまだまだ十分ではありません。設計変更ガイドラインに対して、受発注者双方が共通の認識を持つことが必要と考え、同席のもとでガイドラインの記載事項を確認する提案をしています。
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設計変更ガイドラインに関する提案と回答 (2010年度 地方整備局回答一覧詳細)
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1)工事施工開始前に受発注者双方が記載内容を確認するため、三者会議において
設計変更ガイドラインの記載内容を確認する場を設けていただきたい。
2)特記仕様書に設計変更業務分担を明記するとともに、設計変更ガイドラインに
記載された業務分担に該当しない場合には、受発注者で対応を協議するよう
明記していただきたい。
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・一日でも早く、無報酬業務という言葉がなくなるようにしたいと考えている。(九州)
・活用については、受発注者現場担当者間の認識の差によって左右されると思う。
・事務連絡の中で、設計変更ガイドラインよりも詳しく、受注者と発注者の責任区分について
明記し、徹底をはかっている。なお、通達は業界団体へも発信している。(中部)
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(3)書類簡素化要領の更なる活用にむけた提案
工事書類について「多すぎるため、労働条件が悪化している」との回答が、図-4に示すとおり年々減少しています。しかしながらその一方で、工事書類簡素化要領の運用上の問題点として「発注者の担当者によって運用にばらつきがある」との声が多いことから、受発注双方の施工担当者同士での、コミュニケーションの向上が必要と考えます。
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・発注者、受注者、発注者支援業務者を同じ場所で同じ情報を用いて説明会を開催する
予定である。(中部)
・受発注者双方の担当者が、参加する説明会を開催している。(北陸)
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(4)新たな試みの提案 (2010年度 地方整備局回答一覧詳細)
地方整備局に対し、アンケート結果とは直接結びつくものではないものの、作業所における加盟組合員の労働環境の改善につながる提案も行っていますので、いくつかを紹介します。
ひとつは、発注者支援業務に関するガイドラインの策定です。これは、施工担当者と発注者支援業務を行う担当者間のコミュニケーション向上を目的として提案しています。
また、三者会議、設計変更審査会などの地方整備局の取り組みは、私たち施工者の円滑な現場施工業務に結びつくものとの声が作業所アンケートに寄せられています。そこで、これらの取り組みを他の中央官庁や地方自治体などをはじめとする発注機関に水平展開することを提案しています。
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地方整備局も、無報酬業務に対して問題意識を持っており、施策に対する研修・勉強会の開催など、前向きで具体的な取り組みを始めています。まずは、施策を正しく理解し発注者側担当者と共通の認識を持つことが、施策を有効的に活用するためには重要です。
今後も日建協では、無報酬業務の解消にむけ、各地方整備局に働きかけを続けていきます。しかし、無報酬業務の解消は、日建協の活動だけでは実現できません。組合員のみなさんの施策を活用しようという意識・行動も必要です。日建協の活動とみなさんの行動の2つの力を合わせ、はじめて無報酬業務の解消に向けて前進できるのです。
研修・勉強会などに参加して施策の理解を深め、受注者からも積極的に施策を活用し無報酬業務の解消をめざしましょう。
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