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深川八幡祭り


日建協産業政策次長  鈴木佐喜夫

夏には海やプール、花火大会、昆虫採集、高校野球、お盆休みの旅行や帰省など楽しみがいっぱいあります。そんな夏は、私の一番好きな季節です。
ところが、私たちにとって、最近のうだるような夏の暑さは宿敵です。日中の気温は35℃を超えることもあり、夜になってもヒートアイランド現象で下がらず、昼夜を問わず蒸し返り、まさに灼熱地獄です。あるテレビ番組で暑さ対策が特集され、窓辺に葉の大きい植物を育てると良いと紹介されていました。葉が天然の日よけとなりその植物のもつ水分が、空気中の熱を冷ますそうです。自然の大切さを痛感します。最近では各地域で暑さを凌ごうと、道路への一斉水撒き大作戦など、昔ながらの工夫を取り入れているところもあります。
もうすぐやってくる夏にむけ、そんな「水」で暑さを吹き飛ばしてくれる「深川八幡祭り」を皆さんに、紹介します。暑くとも涼しく、そして熱い
爽快な夏を、一緒に味わってみませんか。

■ 私と「深川八幡祭り」との出会い

今から10年前、結婚して、江東区にある社宅に住み始めて最初の夏、社宅の先輩から「今年は八幡さまの本祭りだ。祭りは最高だよ。神輿を担いでみたらどうだ。」と誘われて以来、3年に1度開催される本祭りには毎回参加しています。

「深川八幡祭り」は別名「水掛けまつり」とも呼ばれます。担がれる神輿に沿道のいたる所で大量の水が掛けられる様から、その名がつきました。「江戸三大まつり」の1つといわれ、神田明神の神田祭り、赤坂日枝神社の山王祭りと名を連ねています。このお祭りは、江東区門前仲町(東京メトロ東西線・都営地下鉄大江戸線の門前仲町駅)にある「富岡八幡宮(深川八幡宮)」の例大祭で3年に1度開催される「本祭り」では8月15日前後の日曜日に氏子各町内から54基の神輿が各町内を連なって練り歩く連合渡御が行われます。毎回、参加者約2万人と見物人約50万人以上が集まる大きなお祭りです。最近では昨年8月に本祭りが開催されました。

また、本祭りの間に開催される「影祭り」では、富岡八幡宮に保管されている「二の宮神輿」が氏子町内を巡行し、各町が順番に担ぐ「宮本社神輿渡御」や、「子供神輿連合渡御」などが行われます。大人同様、子供たちも楽しみにしています。


待ちに待った子供神輿〈町内神輿〉


■ 深川八幡祭りの歴史

深川八幡祭りの起源は1642年(寛永19年)8月15日、江戸幕府の命により徳川三代将軍家光の長男家綱の世継ぎ祝賀を祝ったのが最初といわれています。360年以上の伝統のあるお祭りです。

1807年(文化4年)、祭り見物人の群集が永代橋につめかけたため、橋が崩れ落ちた事件があったほど賑わったそうです。この事件は当時あまりにも有名で歌舞伎や芝居に織り込まれ、深川八幡祭りの人気が今に伝えられています。

深川八幡祭りの最大の特徴は、神輿が大きいことと、その数が多いことです。土地柄の木場の材木業や、佐賀、福住、新川などの米問屋、倉庫業に働く力自慢の人たちが多いため、威勢のよい担ぎ手が多く、真夏の炎天下の水掛け祭りとして人気があったそうです。この水掛けは、担ぎ手の無事息災を願って水と塩をかけたのが始まりといわれています。


二の宮御本社神輿(1997年)
本祭りの翌年の影祭りから

■ 朝一番の見所

夏の太陽が東の空を染め始める午前5時頃、町会のお仮屋にお揃いの町内半纏姿の人々が集まってきます。
午前6時30分頃には、永代通りの富岡八幡宮前を先頭に、各町会の神輿が連なってやってきます。54基の神輿が揃うと500m以上もの大行列です。

午前7時30分、「ドン!ドン!」と出発を告げる花火の音が鳴り響くといよいよ江東区〜中央区にかけて、54基の神輿が練り歩く約8kmの連合渡御が始まります。ずらりと並んだ神輿は、宮元(富岡一丁目)の神輿を先頭に次々と富岡八幡宮前でお払いを受けて「わっしょい!わっしょい!」の掛け声と共に出発します。

一基一基の神輿は八幡宮に正面をむけ、「さーせ」の掛け声で肘を伸ばし神輿を上に差し上げる“差し上げの技”、「もーめー」の掛け声で神輿を地面すれすれから肘を伸ばして差し上げる“揉み上げの技”、また、揉み上げの技から続く大技、神輿を上へ高く放る“舞い上げの技”などを披露し、次から次へと八幡宮をあとにします。ここは、朝一番で勢い良く繰り出すところでもあり、それぞれの町会神輿の華麗な技を見られます。(午前7時30分から9時30分頃)


朝一番の八幡様の前 “差し上げの技”


■ 担ぎ手の熱気が最高潮に

次の見所は、永代橋です。ここは見物人も多く、担ぎ手の熱気も最高潮に盛り上がり、橋長184mの橋を一気に差しきりで渡る町会もあります。
橋の歩道は立ち止まってみることが出来ないので江東区側の橋詰で見ると良いでしょう。ちょうど橋を渡ったところでトラックからの豪快な水掛けも見られます。(午後12時30分から2時30分頃)


神輿を差し上げたまま、永代橋を渡る

■ 真夏の炎天下に爽快な水しぶき

神輿が通る沿道の民家やマンションの軒先には、大きなポリバケツ、洗面器、水道ホースなどが用意され、神輿にむかって、そこら中から大量の水が浴びせられます。真夏の炎天下で神輿を担いで歩くため、この水が気持ち良く体を冷やしてくれます。

水掛け場所での名物は、新川の消防団による消火栓ホースからの豪快な放水です。激しいスコールの中にいるようなものです。また、トラックの荷台に水を満載し、15人位の水掛け部隊が荷台から神輿めがけて、滝のように水を浴びせる町会もあります。

神輿のなかは前方が真っ白で、「わっしょい」の掛け声、見物の人の歓声、アスファルトを水が叩く音が混ざり、真空のなかをスローモーションで動くような状態です。


激しいスコールを浴びる神輿


■ クライマックスにすべてが感動

連合神輿渡御のクライマックスは、永代橋から門前仲町交差点、富岡八幡宮までの永代通りです。
午後の1時から4時頃、見物人でうめ尽されるなか、各町の神輿の担ぎ方にも力が入ります。

永代通りの直線を、神輿渡御の列がひとつの帯のようになり、ところどころで真夏の空に激しい水しぶきが舞い上がるなか進んでいく光景は壮観で、担ぐ側にとっても、見る側にとっても、魅了される瞬間です。


■ もうひとつの楽しみ

午前中の54基の神輿が永代通りから姿を消した後は、富岡八幡宮や、深川不動成田山の参道に並ぶ露店も、祭りの楽しみのひとつです。
夏のこの季節は、かき氷、ラムネ、金魚すくい、水ふうせん吊りなど子供が喜ぶ出店や、焼きそば、やきとり、たこ焼き、いか焼き、それにお父さんにうれしい冷えた缶ビールなどの出店がたくさん出ています。  


54基の連合神輿の大行列〈2005年〉


次回開催される本祭りは、2008年8月のお盆です。今年は8月13日に影祭りが行われます。ご家族やご友人と一緒に“真夏の水掛けまつり深川”へ、ぜひ足を運んでみてください。神輿連合渡御をみにきてみませんか。
そのときは、服装はTシャツに短パン、ビーチサンダルがおすすめです。そして、練り歩く神輿に思いっきり水を掛け、ご自分も水しぶきを浴びて、「深川八幡祭り」を一緒に楽しんでみませんか。

参考文献
(株)クリオ・プロジェクト下町情報誌 深川別冊号 
(平成17年7月15日発行) (平成14年7月15日発行)
富岡八幡宮しおり
写真提供
(株)クリオ・プロジェクト、 富岡八幡宮  平野二丁目青年会

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