2010年の賃金交渉をとりまく情勢は、昨年までとは様変わりしています。
労働者の代表である連合は、2009春闘において統一ベア要求を掲げ、労働分配率の向上、賃上げによる内需拡大を訴えてきましたが、今年は、統一ベア要求を見送り、定昇の死守に軸足を移す姿勢を明確にしています。定昇について連合は、「定昇がないと働く者の将来不安を払拭できない。定昇凍結は個人消費の落ち込み、デフレ加速の要因にもなる」と強調しています。
これに対し、経営者団体の代表である経団連は、「企業の存続と発展、従業員の雇用安定が最重要課題」と位置づけ、その上で、「経営の実態を踏まえて着地点を探す必要がある」と訴え、一部企業が定昇の凍結・延期に踏み込む可能性があることを示唆しています。
このように、2010春闘では、定昇をめぐって厳しい交渉が行われることとなります。
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このように全産業的には定昇をめぐっての交渉が予想されていますが、私たち日建協の賃金交渉はどうあるべきでしょうか。
建設各社の第3四半期決算をみると、多くの会社の受注が大幅に減少し、景気低迷が建設投資を縮小している現実がみられます。また、政府の平成22年度予算案において公共事業関係費が18.3%と大幅な削減となるなど、先行きも厳しいものとなっています。これらを考えると、やはり私たちも定昇維持を主眼とした賃金要求でしか組み立てられないのでしょうか。
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日建協では、1月22日にみなさんの組合の代表が集まる機関決定会議を開催し、今年の賃金交渉の方針である2010年賃金交渉基本構想を決議しました。
基本構想では要求基準について、「『建設産業で働く私たちのあるべき賃金水準』を目指し、計画的に取り組むことで加盟組合及び日建協全体の賃金水準向上につながるものと考える。日建協の考える、建設業で働く私たちのあるべき賃金水準とは『日建協個別賃金水準』であり、その実現に向け加盟組合と日建協が一体となって目標に向かい計画的に取り組む必要がある。」とし、以下の要求基準を示しました。
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全加盟組合は、連帯して日建協個別賃金の水準の実現にむけて、
賃金水準の向上に全力で取り組むものとする。
1.月例賃金について
・全加盟組合は、定昇確保(賃金カーブの維持)に取り組む。
・加盟組合は、ベースアップへも計画的に取り組む。
2.一時金について
・加盟組合は、生活給として納得が得られる水準への引き上げに取り組む。
3.初任給について
・加盟組合は、優秀な人材確保のため、他産業に見劣りしない水準として、
学卒年齢22歳総合職において21万円以上の実現にむけて取り組む。
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月例賃金でベースアップに取り組むのは、組合員の生活が理論生計費に比べかなり低い水準で均衡していることが推察でき、生活に必要な賃金水準に達していないということが挙げられます。ただ、一足飛びに理論生計費を目指すのは、今の厳しい社会情勢を考えると難しいのかもしれませんが、複数年かけて段階的にでもあるべき賃金を目指し取り組みを継続していくことが重要だからです。
一時金について、生活給として納得が得られる水準とは、年収ベースで考えて日々安定した生活を維持していくための水準を示しています。つまり、私たちにとって一時金は月例賃金では賄えていない生活費を補うための生活一時金であるからです。
初任給21万以上を目指していくのは、優秀な人材の確保のためであり、他産業に見劣りしない水準だからです。2008年の日本経団連の新規学卒者決定初任給調査では、大卒技術系で209,752円であり、建設技術者集団である私たちにとって21万というのは他産業に見劣りしない水準だといえます。
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私たちの理論生計費とは、『日建協個別賃金水準』であり、私たちが望む生活をするのに生計費としていくらの費用が必要かを算出し、年齢ごとの必要な賃金を示したものです。生計費の中には、結婚や育児、住宅取得、車の購入などといった年を重ねるにつれて増加する支出があります。また、老後のための貯蓄なども忘れてはなりません。ライフステージにもとづく支出額の算出(図-6)には、諸官庁の統計データや民間調査機関のデータ、そして「日建協家計調査」などを活用して作成しています。
また、各加盟組合が段階的に取り組めるように「先行、標準、必要」の3つのラインで示しています。先行ラインは理想的な生活レベルを可能にする水準、標準ラインは平均的な生活レベルを可能とする水準、必要ラインは必要なレベルを確保する水準として示しています。各加盟組合では、生計費を根拠とした賃金水準の資料として、多くの組合が賃金交渉に活用しています。
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(図-7を拡大する)
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それでは、他産業と比べて建設業の賃金水準はどの程度なのでしょうか。
日建協と他産業の昨年度の年収の比較(図-7)を見てみると定例月収は他産業と比較して大きく変わることはありませんが、年間一時金に関しては、大きな乖離があります。日建協個別賃金のラインから考えても、必要な生活を保障するレベル(実態生計費)に何とか届いている水準で、これ以上他産業との格差を広げないためにも理論生計費としての標準、先行ラインを目指していく必要があります。
このように、年収ベースで考えると、この格差を少しでも改善し望ましい一定レベルの理論生計費を目指すため、また、他産業に見劣りしない賃金水準を確保することが必要です。そして、モチベーションを維持向上させるためにも、労働力に対する正当な対価を要求していくことで、魅力ある建設産業につながっていきます。
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理論生計費としての賃金を目指していくために、2010年度の賃金交渉にむけて『勝ち取ろう!明日への活力と家族の笑顔』をスローガンに掲げ、取り組むこととしました。
今回のスローガンには、自分の仕事に対する報酬に満足し、仕事や生活に活力を得るとともに、家族が安心して暮らせる賃金水準を実現したいという思いが込められています。
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賃金交渉は、私たちの思いを伝える大切な取り組みです。一人ひとりが「賃金」の持つ意味を真剣に考えてみましょう。組合員一人ひとりの思いと、加盟組合執行部の「組合員の生活を守る」という熱い使命感と、さらには加盟組合全体が連帯して取り組むことで、日建協の加盟組合員みんなの将来を見据えた賃金(生計費)へと繋がる大きな力になるはずです。一致団結してこの2010年賃金交渉に取り組みましょう。
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