CompassVol.782で、公共工事を対象とした提言活動「公共工事における無報酬業務を解消するために」に関する記事を掲載しました。記事では、提言活動のこれまでの経過を振り返るとともに、国土交通省の取り組みなどを紹介しました。そして、2009年4月に国土交通省が出した「設計変更ガイドラインと工事一時中止ガイドラインの順守を特記仕様書に記載する」ことに注目し、無報酬業務解消のチャンスが訪れているとお伝えしました。
日建協では、この動きをうけて2009年11月、国土交通省直轄工事に従事する組合員のみなさんを対象(回答:187件)に、作業所アンケートを実施しました。
アンケートでは、無報酬業務の実態や、設計変更ガイドライン、ワンデーレスポンスなど無報酬業務の解消に繋がると考えられる、国土交通省の取り組んでいる施策の活用状況などを調査しています。
ここではアンケートの結果から見えてきた無報酬業務の現状や、国土交通省の施策が作業所で活用されているか、また、無報酬業務解消にむけた次の一手を紹介します。
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ワンデーレスポンス、設計照査ガイドラインなど、現場運営の円滑化を目指し国土交通省が取り組んでいる施策の認知度を調査したところ、2007年度、2008年度の調査時と比較し大幅に上昇していることがわかりました。(図1)
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アンケートでは「無報酬業務を行ったことがあるか、またそれが労働負担に繋がっているか」を調査しています。
その結果、約6割の作業所で無報酬業務を行ったことがあり、労働負担に繋がっていると回答しています(図2)。
この値は2007年度、2008年度に行った調査から比較して大きな変化はなく、依然として無報酬業務が行われている現状が浮かび上がっています。
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残念ながら、施策を知るだけでは無報酬業務の解消に結びつかないことが示された結果と言えるでしょう。
無報酬業務の発生しやすい設計変更業務では「設計変更ガイドラインを活用できていない」とする回答が4割を超えており(図3)、適正な運用に至っていないことが裏付けられる結果が出ています。
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では、施策がなぜ活用されていないか?を作業所アンケートの結果から探ってみましょう。
まず、設計変更業務の円滑化を目指した設計変更ガイドラインですが、約6割の作業所で、「特記仕様書に記載されておらず、発注者からも指導などはなかった」と回答されています。(図4)
本来は特記仕様書に記載されることで徹底が図れるはずであった設計変更ガイドラインですが、実施されていないために受発注者双方での認識、活用に至っていない、ということがうかがえる結果となっています。
また、ワンデーレスポンスについても、導入によって発注者の対応が「以前と変わらない」とする割合が約4割となっています(図5)。ワンデーレスポンスの導入から時間が経過していることなどもあり、形骸化が起こっていることが危惧されます。
ワンデーレスポンスの本来の主旨である、「迅速な回答によって受発注者間のコミュニケーションに繋げる」という意識が受発注者ともに薄れてしまっていることがうかがえる結果であり、改善が必要です。
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日建協では、より施策を活用するために、地方整備局に対する提言活動を行っています。地方整備局に対する改善提案としては、設計変更ガイドラインの受発注者間での徹底や、ワンデーレスポンスに対する意識付けを目的とした提案を策定しました。その提案の内容をご紹介します。
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国土交通省の施策活用のため、工事に関する相談窓口を各地方整備局に設置すべきである。また、窓口に寄せられた質問と回答は、ホームページにQ&A集を掲載するなど広く公開し、受注者側に周知すべきである。
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ワンデーレスポンス活用のため、工事打ち合わせ簿に発議日とともに回答希望日を記載するようにすべきである。
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ワンデーレスポンスへの意識を高めるため、対象工事であることを特記仕様書に明記すべきである。
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設計変更ガイドライン活用のため、設計変更ガイドラインの指導などを受注者に実施すべきである。
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設計変更ガイドライン記載事項の徹底や受発注者間の責任区分を確認するため、受発注者双方が集まる三者会議などでガイドラインについて勉強会などを開催すべきである。
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このように、アンケートから得た改善提案をもとに今、各地方整備局への提言活動を行っています。
日建協は皆さんからいただいた声を力にかえ、無報酬業務解消にむけて取り組んでいきます。
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地方整備局への提言活動の様子
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そして最後に、無報酬業務解消のためには私たち受注者も自らの意識を変えていくことが重要です。
まずは、どこまでが受注者の責任区分なのかを正確に知ることが必要です。その上で、受注者の責任範囲を超える業務を依頼された場合には、発注者とよくコミュニケーションを取ることが大切です。
発注者も受発注者間に存在する片務性を問題視しており、無報酬業務解消は実現困難な問題ではなくなりつつあります。あとは私たち受注者が、国交省の施策をうまく活用して声を上げていくことが無報酬業務解消にむけた大きなキーポイントになるのではないでしょうか。
無報酬業務解消にむけて、最後のワンピースを握っているのは、わたしたちです。
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