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1年間で皆さんは、何日、年次有給休暇(以下、有給休暇)を取得していますか?

日建協加盟組合員の有給休暇の取得日数は、他産業に比べて極端に少なくなっています。(図1)
なぜ、私たちは有給休暇を取得しない(できない)のでしょう?
どうやら、私たちの多くは、有給休暇を取得することにためらいを感じているようです。あなたはどうですか?やはりためらいを感じますか?(図2)
ためらいを感じる点を調査すると「みんなに迷惑がかかるから」が、第1の理由として挙げられています。(図3)

有給休暇制度は、労働者の疲労回復、健康維持・増進の他、自己啓発、地域貢献、育児、介護など仕事以外の生活を充実したものにするために設けられている制度です。また、休暇を取得することで、労働者の心身がリフレッシュしモチベーションの向上につながったり、休暇の中で得られる経験が創造的な仕事での高いパフォーマンスを生み出すなど個人の能力を高めるためにも重要な制度となっています。

さらに、有給休暇を取得しやすい環境を作っていく中で、職場のコミュニケーションが活性化し、協力し合う企業風土が醸成されます。また、一時的にでも担当者がかわることで普段担当していない仕事を経験させたり、業務内容を他の従業員がチェックする機会となります。
昨年からのインフルエンザの流行で、病欠された方がいる職場も多いと思いますが、このような場合でも普段から休みやすい環境が整備されていれば、業務に大きな支障はうまれないのではないでしょうか。

このように、休暇を活かす企業風土があれば、有給休暇制度というものはみんなに迷惑がかかるどころか、労使ともにメリットのある制度なのです。
各職場においての有給休暇のメリットについてご理解いただいたところで、次は、もっと大きな視点で、有給休暇の取得推進が社会全体に及ぼす影響について紹介していきます。

2009年9月25日、観光地域経営フォーラム(代表幹事:麻生渡福岡県知事)は、未取得有給休暇完全取得の経済効果に関する試算結果を発表し、有給休暇取得推進を提言しています。

これによると、日本の労働者が未取得の有給休暇を完全取得することによって、約15兆6,300億円の経済波及効果が得られるとともに、約187.5万人の雇用が創出されるとのことです。
さらに詳しく建設産業への影響を知るため、観光地域経営フォーラム事務局に取材したところ、この有給休暇取得による建設産業への経済波及は約3,830億円と試算されるとのことでした。

提言の中には、こんなことが書いてあります。
『日本人の中には「休暇」という言葉に対してマイナスの印象を持つ人がいる。しかし、休むことは暇をつくることではないし、怠けることでもない。労働から解放されて休息を得る、その上で人間として様々な「活動」を行うことである。(中略)つまり休暇を活かす「休活」は、個々人の創造力や可能性を高め、経済・地域・企業を活性化させる大きな力をもっている。「休活」は、活力ある国民、活力ある日本をつくる。(中略)わが国経済にとって、休暇改革は最後に残された切り札である。』


どうです皆さん、皆さんが休むことで、日本経済が良くなり、建設産業も恩恵が得られるんですって。なんか、魔法みたいな話、信じられますか?

実は、同様の手法で経済を回復させた事例があります。
1936年、フランスのレオン内閣は、大恐慌後の長引く不況に対して「もっと働くこと」ではなく、「もっと休むこと」で立ち向かう政策をとり、全労働者に年2週間の有給休暇を保証するマティニョン法(通称バカンス法)を制定しました。その結果、フランスではサービス産業が大きく成長し、内需主導型で経済の回復がはかられました。

余談ですが、有名な自転車レース「ツール・ド・フランス」が世界屈指のスポーツ競技大会として発展した一因は、このバカンス法によって創出された余暇の楽しみのひとつとして人気を博するようになったからだそうです。

もうひとつ、行政として休暇取得促進を図ることで、日本社会と経済の発展を促すという、休活施策を実施している観光庁の事例を紹介します。この施策は、政府が12月に閣議決定した「新成長戦略〜輝きのある日本〜」でも、重要政策としてあげられているものです。

観光庁の施策は、観光により内需拡大を図るとともに、休暇取得促進により企業業績を向上させ、日本社会と経済の発展を促すというものです。
休暇取得と企業業績の向上との関係について観光庁担当者は、「社員に休暇を積極的に取らせれば、社員の能力向上、モチベーション向上となる。また、業務の効率化や、企業の元気につながる。結果として企業業績は上がっていく。」とおっしゃっていました。そして、実際に休暇の取得促進で業績を向上させた事例を集め、事例集『経営によく効く「休暇」』を作ったとのことでした。

また、「これからは、ワーク・ライフ・バランスの観点からも休暇取得促進に取り組まなければならない。休暇取得促進により、日本社会全体の発展もはかられる」と言われていました。
この事例集は観光庁HPからダウンロードできますので、是非参考にして下さい。

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Compass Vol.785 一括PDF(13.8MB)

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