今さら聞けない労働時間 本文へジャンプ

労働時間や休日・休暇について、今さら聞けない聞きづらいことを拾ってみました。労働時間短縮を進めていくには、適切な労働時間管理が必要であり、適切な労働時間管理を行うためには、労働時間や休日・休暇について正しく理解することが、とても大切なことになります。

「労働時間」って?
『働く喜びそもそも労働時間というのも、単に働いている時間をいうのではありません。「労働者が使用者の指揮命令下で労働を提供している時間」のことです。』
例えば、自宅に持ち帰って業務をこなす、いわゆる「風呂敷残業」は、時間的にも場所的にも自由な状態にあり、使用者からの拘束を受けている状態とはいえませんので、労働時間とはいえません。また、上司に帰るように命令されたにも関わらず、業務や個人的な勉強をしていても、これは指揮命令下にある状態とはいえず労働時間ではありません。

例えば、このような時間は労働時間です。
■使用者が実施または指示するものであって、その内容が業務と関連性が強く、実質的に出席の強制がある教育、研修に参加する時間
■労働安全衛生法に基づく安全衛生教育を受ける時間
■特定の有害な業務に従事する労働者について行なう
特殊健康診断
例えば、このような時間は労働時間ではありません。
■一般の健康診断に要する時間
■参加や出席が任意であり、労働者の自由な意思に基づき教育・研修に参加する時間


「休日」って?
「休日」とは労働を提供する義務のない日のことです。法律では、毎週少なくとも1日与えなければならないとされています。これが法定休日です。
どうしても業務の都合上やむを得ず休日に出勤しなければならない場合があります。そのときは、「休日労働」として割増賃金を支払うか、もしくは出勤した休日と他の労働日を入れ替える「休日の振替」や「代休」とすることになります。

「休日の振替」と「代休」の違いは?
「休日の振替」も「代休」も後々、通常の労働日に休日を与えることでは同じですが、「休日の振替」は、単に休日と通常の労働日を入れ替えたということで、休日出勤日が通常の労働日となり休日労働として取り扱う必要はなくなります。したがって、割増賃金の支払いは発生しません。ただし、あらかじめ振り替えて休む日を使用者が特定することが必要です。一方、「代休」は、恩恵的に与えられるものとされ、あらかじめ定めていない適当な労働日を休みとして与えるものですから、休日出勤日は休日労働として取り扱い、休日出勤の割増分(法定割増率35%)の支払いが必要になります。

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「休暇」って?
「休暇」とは、そもそも労働義務が発生しない「休日」と違い、労働者からの申し出によって労働義務を免除される日のことをいいます。
「年次有給休暇」「産前産後休暇」「育児・介護休業」などがそうです。これらは法律で定める「法定休暇」と呼ばれますが、使用者が任意に定める「法定外休暇」には、会社によってそれぞれ異なり、さまざまな休暇制度が存在します。作業所の竣工後、次の作業所への異動の際の休暇制度である「作業所異動時休暇」も、建設産業特有の休暇制度として多くの加盟組合で制度化されています。
※2005年度コンパス6月号(Vol.767)「いろいろな休暇を集めました!」参照。

時間外労働」って?
「時間外労働」は、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて、使用者が労働者に労働させることです。
使用者が法定の労働時間を超えて労働させる場合、または法定の休日に労働させる場合、使用者は、事業場の過半数で組織する労働組合(過半数労働組合)、ない場合は労働者の過半数を代表するもの(過半数代表者)と、あらかじめ書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。この協定を通称「36(サブロク)協定」といいますが、この36協定を届け出ない限り、例え1分でも時間外労働はできません。
「36協定」の締結は、事業所単位です。建設業の場合では、作業所も一つの事業場と考えられますので、作業所ごとに36協定を締結し、所轄の労働基準監督所長に届け出る必要があります。
延長時間について一定の限度時間が決められています。労働基準法が制定された当時はこのような基準はありませんでしたが、長時間労働を防止する意味で以下のような限度時間が厚生労働省より告示されています。しかし残念ながら、建設産業は、限度時間の適用を受けない業務とされ、限度時間の適用がなされません。すなわち、時間外労働の上限がない事業とされています。
【延長時間】(一般の労働者の場合)
期 間 限度時間
1週間 15時間
2週間 27時間
4週間 43時間
1ヶ月 45時間
2ヶ月 81時間
3ヶ月 120時間
1年間 360時間

■36協定で定める事項
@時間外労働・休日労働が必要な場合の具体的事由
A業務の種類
B対象となる労働者の数
C1日及び1日を超える一定の期間について延長することができる時間または労働させることができる休日
D有効期間(通常1年)


労働時間・休日・休暇に関する基本事項をいくつか拾い出してみましたが、まだまだ私たちの働くうえでのルールはたくさんあります。冒頭にも記載しましたが、「ルールを正確に知ること」は大切です。働くうえでの最低限のルールを定めた労働基準法、自社の働くルールである就業規則など、今一度、働くルールを再確認してみてはいかがでしょうか。


労働法セミナー《大阪》                               2006.10.23(月)
9月の東京開催に引き続き、会場を大阪に移して労働法セミナーを開催しました。今回のセミナーでは、日建協顧問弁護士である大川弁護士を講師に迎え、労働時間、休日についての基礎知識から労働契約法制、労働時間法制の最新動向までの幅広い内容で講義が行われました。参加者の興味をそそりそうな関係判例や、講師自らが携わった事例の紹介を中心とした講義内容に、講師独特のユーモアあふれる語り口調がエッセンスとなり、労働法についての難解な法解釈も受講者にとって、身近なものとしてイメージできた様です。質疑応答では、さかんな意見交換が行われ、日々の活動の中で感じていた疑問点、問題点についての答えを受講者全員が共有できる場となりました。セミナー後のアンケートでも、よく理解できた点として、半数近くの受講者が「労働時間、休日についての基礎知識」を上げていることから、今回のセミナーは、まさに、“今さら聞けない基礎知識”を再確認する良い機会になったのではないでしょうか。

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